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愛は歴史を救う 〜傲慢平安貴族美少女を身も心も更生させつつ、ドS金髪吸血お姉さんに調教されよ! 編〜

愛は歴史を救う 〜傲慢平安貴族美少女を身も心も更生させつつ、ドS金髪吸血お姉さんに調教されよ! 編〜

小説:田中 創  イラスト:TCB
あらすじ
刻は2021年。原因不明の超歴史改変事象“大時震”により、宇宙の危機に瀕した地球を守るため、今日も今日とて働く凡人・御戸ミツキ。彼の所属する、対“大時震”組織“THR”の仲間である、偉人美少女のフランス皇帝・ナポレオンことナポ子や、三国無双の猛将・呂布らと共に、今回は平安時代と中世ヨーロッパへ赴くことに。そこで出会ったのは、豪奢な毎日を日々ぐ~たら過ごすロリ美少女・藤原道長と、血を吸う噂のあるとんでもないドSの金髪お姉さんであった。今回も不肖・御戸ミツキが、美少女になっちゃった偉人(♀)の悩みと身も心も溶かしちゃう!! 今巻は更生&調教(される側)!! あとナポレオン&アリストテレス&呂布&エジソンたち、THRヒロインたちとのハーレムもあるよ!!

 レクリエーションルームの天井を見上げながら、ナポが感慨深くつぶやいた。

「もう三か月にもなるのね……」

 頭の左右で可愛かわいらしく結った髪はくり色、くりんとした丸い目は今日もどこかアホっぽい。二角帽にマントがトレードマークのこの女の子は、近代ヨーロッパ最大最強の皇帝、ナポレオン・ボナパルトだ。

 僕たちこうじきよく歴史管理課──通称THR(Timeport-bureau Historical Retention division)のお仕事は、彼女のような歴史上の偉人エージェントと協力しながら、しんによる歴史のゆがみを修正し、宇宙崩壊の危機を回避することである。

 ナポ子がTHRの仲間になって三か月。そのドジっぷりと無駄な突撃根性でTHRの足をひっぱり続けてきた彼女も、ようやく若葉マークを卒業する時期だ。

 僕は手にしたコーヒーカップをテーブルに置き、「そうだね」とうなずいた。

「ナポ子ももう、十分エージェントとして経験積んでるんだから、任務中迷子になったり、要救助者の偉人さんたちを困らせたりはしないでね」

 そんな僕の皮肉に、ナポ子が「え」と首をかしげた。

「エージェントとしての経験? なんでおまえ、急にそんな話をしてるのよ」

「それはだって、今ナポ子が『もう三か月にもなる』って言うから」

「何言ってんの? 三か月って、この子、、、の話よ」

「この子?」何を言っているのだろう。僕は首をひねる。

 ナポ子は自分のおなかに優しく手を当てながら、

「お腹のこの子……。ええとつまり、ナポレオン二世になるのかしら?」

「は? 二世って?」

「わたし、妊娠三か月目なんだって」

「妊娠!?」

 びっくりぎようてん。思わず椅子から立ち上がってしまう。

 僕の聞き違いじゃないよね? ナポ子さん今、とんでもないこと言ったよね?

「まあねえ。わたしもそのうち全世界を支配する皇帝になるわけだし、ゆくゆくは世継ぎを育てなきゃとは思ってたんだけどね。でもまさか、こんなに早く出来ちゃったとは」

「で、出来ちゃったって、冗談とかでなく?」

「当たり前じゃない。わたしの辞書に冗談という文字はないわ」

 さらりと告げた彼女のこわいろには、うそを言っている雰囲気はない。そもそもナポ子は他人をだませるような器用な子じゃないのだ。信じざるを得ないだろう。

 言われてみれば、その肌色率高めなミニスカ制服から露出したお腹は、以前よりも少し大きくなっているようにも見える。あのお腹の中には、新しい生命が宿っているというのか……。

「つ、つかぬことをおたずねするけれども、その子の父親は……?」

 ナポ子の人差し指が、ずいっと僕──ミツキに突きつけられた。

「おまえに決まってるでしょ。わたしのパートナーはミツキだけよ」

 それはそれでうれしい言葉ではあるのだが、今は戸惑いの方が大きかった。

「いやいやまさか、あのナポレオンがご懐妊だなんて……」

「というか、出来ない方が不思議よ。初対面のぶきどうくつのときからして、あんだけ遠慮なく中に出されたわけだし。そのあともミツキ、毎晩のようにしょっちゅう求めてくるし」

「求めてくるって……それはむしろナポ子の方からじゃ」

「まあわたし、インペリアル超絶美少女だからね。ミツキがわたしの魅力に屈しちゃっても、それはしょうがないことだけどね」

 聞いちゃいなかった。

 ともあれ任務の合間を縫って、僕たちがそこそこおうを重ねているのは事実なのだ。オメデタ展開の可能性もなくもない……のかもしれない。

 これはあれか。いわゆる、責任を取らねばならない流れなのか。

「どうしよう。フレドリカさんになんて言い訳すれば……。あと半年ちょっとてば、僕パパになっちゃうってことだよね……」

 そのときふと、後ろから声をかけられる。

「いいえ御戸さん。もうあなた、今月中にはパパですよ」

 それは今やよく聞き慣れた、無感情な声色だった。

 振り向くとそこには、小柄な銀髪娘の姿がある。ものげな表情に、細くてきやしやな手足。落ち着いた色のケープをまとったその容姿は、いつ見てもアンティーク人形のようだ。

 その、不自然に大きく膨らんだお腹を除けばだが──。

「ア、アリス!? なにそのお腹!?」

「なにって……見ればわかるでしょう。私も妊娠してるんです。十か月めですよ」

「臨月ううううううっ!?」

 アリスの制服の腹部を押し上げるようにして、お腹がこんもり膨らんでしまっている。

 間違いない。やはりアリスまで妊娠しているようだ。正直、開いた口がふさがらなかった。

「なんてことだ……まさかアリスまで」

 ナポ子もアリスのお腹を見つめながら、「ふわぁ」と目を見開いていた。

「気づかないうちに、だいぶ大きくなったわね」

「ええ。しくじりました」アリスが、ちっと舌打ちをする。「まさか御戸さんごときにはらまされることになるとは不覚の極みです。今ならりようじよく系エロゲーのヒロインの気持ちがわかりますよ。『くっ、殺せ!!』って感じです」

「僕の扱いオーク並み!?」

「ですがまあ……哲学者としては、生命誕生のプロセスをじつせん出来るというのも貴重な経験ですかね。父親がどうしようもないくず野郎という点を除けば、子育てもまあ楽しみです」

 アリスの正体は、ギリシャの哲学者「万学の祖」アリストテレスだ。

「真理の探究」の名目で、これまで彼女とも少なからず身体からだを重ねてしまっている。だけどまさか、こんなミニサイズな女の子までマタニティにしてしまうとは……。僕ってもしかして、自分で思っているよりもどうしようもないヤツだったのか?

 しばし頭を抱えていると、レクリエーションルームの扉が開く音がした。

「お、どうしたんだ隊長さん。青い顔して」

 部屋に入ってきたのは、黒髪ツインテールのスタイルの良い少女だ。スリット入りのセクシーな特注制服を着こなす彼女は、古代中国の武将、りよほうせんである。

 その武力にしろバストサイズにしろ、いろいろと規格外な女だと思っているのだが、今日はさらにもう一か所、規格外な部分があった。

 そう──。アリスと同様に、バッチリと膨らんだそのお腹である。

「あの奉先、まさかとは思うけど、キミまで子供が出来たとか言わないよね?」

「そんな不安そうな顔すんなって」お腹をでながら、奉先が白い歯を見せた。「大丈夫だよ。あたし、頑張って隊長さんの子供を産むから」

「や、やっぱり僕の子供……」

「ああ。あたしと隊長さんの子なら、きっと強い子に育つだろうな。三国統一どころか、全宇宙統一すら容易たやすいくらいの」

「どんな魔人をばくたんさせる気なのよ、奉先」ナポ子が肩をすくめた。

「まあ奉先さんの子供なら、銀河統一も目指せるでしょうが」

 アリスの冗談に、奉先もナポ子もほおを緩めている。

 笑えないのは僕だけだった。なにこの状況。プロローグからいきなり三児のパパになることを義務付けられちゃうなんて、想像だにしていなかった超展開だ。

「おかしい……。昨日までこの子ら、妊娠のそぶりすら見せていなかったはずなのに……」

 と、耳に「おぎゃああ」という泣き声が聞こえてきたのはそのときだった。

「よしよし。いい子でちゅねー」

 奉先に続いてレクリエーションルームに入ってきたのは、作業着姿の赤毛の女の子だ。彼女が胸に抱いているのは、同じく赤毛の小さな赤ん坊……。生後一か月くらいだろうか。いつくしむように赤ん坊をあやしている。

 アメリカの「発明王」トーマス・アルバ・エジソンことアルちゃんは、すっかりママの風格を漂わせてしまっていたのである。

 ああ……この流れはもう、父親が誰かなんて問うまでもないんだろうな。もはやツッコむ気すら起こらない。

「ほらミッシェル、泣きんでくださいねー。パパですよー。パパのところに来ましたよー」

「ミッシェルっていうんだ、その子……」

「はい。ボクとたいちょーの愛の結晶です」アルちゃんが顔を赤らめた。「可愛いですよね。たいちょーに似て、ボクのおっぱいがとっても好きなんですよ」

「隊長さんはおっぱい星人だからな」奉先が苦笑する。

 そりゃあまあおっぱいは確かに好きだけども、だからって赤ちゃんと一緒にされるのはどうなのか。

 なんだか、ナポ子とアリスの視線が痛かった。

「ていうかええと、これはなに? どういう状況? 僕、いつの間にかTHRの部下全員との間に子供を作っちゃってたってこと?」

「今さら何を言ってんのよ」ナポ子がむっと頬を膨らませる。「そんなの周知の事実じゃない。フレドリカを怒らせたのもそのせいだし」

「え? フレドリカさんを怒らせた?」

 敬愛すべきTHR課長、たかみねフレドリカさん。非常に聡明で美しいお姉さんであり、ゆくゆくは僕の恋人になるはずの人物である(願望)。

 そもそも僕は、彼女のために過酷な任務に耐えていると言っても過言ではないのだ。そのフレドリカさんを怒らせたとあっては一大事である。早急な事実確認が必要だろう。

 僕が動揺しているのを見てとったのか、アリスがニヤニヤと口元をゆがめている。

「怒ったというか……あれはもう完全にブチ切れてましたね。激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームでしたね」

「そうだなあ。あのフレドリカねえさんが、まさか航時局を出ていくとは思ってなかったもんなあ」

 奉先の言葉に、僕は耳を疑った。

「ちょ、ちょっと待って!? フレドリカさんが出ていったって、何? どういうこと?」

「も、もしかして……たいちょー、ショックのあまり記憶がなくなっちゃったんですか」

 アルちゃんがげんな表情を浮かべたが、やはり心当たりはなかった。

「いえあの、ちょうど一か月くらい前ですかね。課長さん、『ミツキくんは女の子にだらしがなさすぎる!! もう面倒なんて見てあげない!!』って……それだけ言って出ていっちゃったんですよ」

「そ、そんなことがあったの」

「それ以降、課長さんとは音信不通なんです……今はどこでどうしているのやら」

 神妙な表情を浮かべるアルちゃんとは対照的に、奉先の表情は明るい。

「あの美人なフレドリカ姐さんのことだ。今ごろイケメン彼氏でも捕まえて幸せになってんじゃねーの」

 そんな無根拠な発言を、アリスも「そうですね」としゆこうする。

「彼女にも十分幸せになる権利はあります。長年、廃棄物にも等しい屑野郎の面倒を見させられてきたわけですしね。御戸さんとかいう」

「はいはい屑野郎ですいませんでしたねえ!!」

 いや、アリスの暴言にツッコミを入れている場合ではないのだ。

 フレドリカさんが出ていったとなれば大事件である。一刻も早く追いかける必要があった。

「こうしちゃいられない!!」

 僕は慌てて戸口へと向かおうとしたのだが、

「どこ行くのよ」ナポ子の手が、むんず、と僕の制服のすそをつかんだ。「フレドリカを追っかける気? わたしたちを置いて?」

 僕は「うっ」と言葉に詰まる。

 そうだ。彼女たちには子供が出来てしまったのだ。それを放ってフレドリカさんを追いかけるというのは、それこそ屑野郎の所業ではないか──。

「孕ませた責任取って、ちゃんと面倒見てください」アリスが微笑ほほえむ。

「ああ。出来れば隊長さんには近くにいてほしいな」奉先もそう言う。

「もうこの際、二人目三人目も作っちゃいましょう」と、アルちゃん。

 四人の偉人少女たちに詰め寄られ、僕は頭を抱えるしかなかった。

 これはおかしい。決定的に何かがおかしい。あの愛情あふれるフレドリカさんが、僕にあいを尽かしてしまうなんて不条理そのものではないか。

「ほら。いい加減観念するの。おまえの相手はフレドリカじゃなくて、わたしたちよ」

 ナポ子が、僕をぎゅっと抱きしめてくる。

 ふわりと漂うせつけんの香り。彼女の柔らかな感触は心地いいものだったけれども、さすがにここまで体を押しつけるように抱きつかれると息苦しさを覚える。しかしなぜか僕はそれを振り払うことが出来なかった。身動きができなくなってしまったのだ。たとえるなら、そう……これはもうかなしばりだ。

「うっ……ちょっと……離れて」

「離れないわよ。責任を取ってもらうまでは」

 ナポ子の両腕が、万力のごとく僕を締めつけた。なんだこれは。どういうことなんだ。

 両足が泥沼にはまったかのようにズブズブと床に沈んでいく。心臓がものすごい速さで脈動し、全身から嫌な汗が吹き出していた。

 悪夢だ。これはしようしんしようめいの悪夢だ。ああもう、夢なら早くめて──!!

 そう思った瞬間、僕は「はっ」とまぶたを開けた。

 窓から差しこむ朝日に、白い壁。壁に掛かった航時局制服。写真立てに飾ったフレドリカさんのポートレイト。どうやらここは、僕の個室らしい。ベッドで横になっていたようだ。

「まさかの夢オチ……。でも、この重さは何……?」

 身体がまったく動かない。なぜか夢の中の金縛りがいまだ続いているかのようだ。非常に息苦しく、なんだかすごく暑苦しいのだ。

 ふと、自分の身体に目線を向けてみると、

「あ、やっと起きたわね」

 ナポ子がいた。僕のお腹の上に乗っている。息苦しさの原因はこれか。

「な……なにしてんのキミ? 重いんだけど」

「その言い方はないわよね」ナポ子がむっと頬を膨らませた。「もうすぐミーティングが始まるっていうのに、ミツキ起きてこないんだもの。だから起こしに来てあげたっていうのに」

「そうですよ御戸さん。こっちは朝から気分最悪なんです。あなたの気持ち悪い寝言をえんえん聞かされた私たちの身にもなってください」

 アリスもいた。なぜか僕の左腕にくっつくようにして添い寝している。

「寝言って?」

「なんか隊長さん、妊娠がどーのこーの呟いてたな。あたしらを孕ませたとかなんとか……。どんだけわいな夢みてんだよ」

 奉先だ。ベッド脇の床に両膝をつき、僕をのぞきこんでいる。そのボリューム満点のバストを僕の右腕の上に乗せているのは、わざとなのだろうか。

「もしかしてたいちょー、いろいろまってるんですか? ボクでよければその、性欲の処理をいたしますのでー……」

 ナポ子の背後から、アルちゃんの声が聞こえてきた。何をしているのかと思いきや、の上から僕の大事な部分をこすっているようではないか。

「タンマタンマ!! 大丈夫だから!! 僕もう起きるから!!」

 部下たちを身体から引き離し、ようやく僕は上体を起こす。なるほど、金縛りの原因は彼女たちか。四方からこれだけ密着されていれば、悪夢を見てもおかしくはないだろう。

「それで、今日のミーティングの内容ってなんだっけ」

 僕の質問に、アリスがこたえる。

「寝ぼけるのもいい加減にしてくださいよ。昨夜、また時震が観測されたんじゃありませんか」

「ああ、そうだった。新しい任務だっけ」

 頬を両手でたたいて、気持ちを切り替える。

 任務を成功させれば、フレドリカさんも僕をめてくれるはず。さっきの光景を正夢にしないためにも、誠心誠意努力しなければ。

 枕元のタキオンウォッチを手に取り、それを左手首に装着する。

 さてさて、今回はどんな時震トラブルが僕たちを待っているのやら。

1008/10/12 平安京 土御門殿 寝室

 平安時代の京都といえば、何を想像するだろう。

 荘園? 摂関政治? 国風文化? びようどういんほうおうどう? 

 僕が想像していたのは、貴族がのんびりと暮らしているイメージだった。かぶったオジサンたちがのんまりなんてしながら、ゆうゆうてきに暮らしているような時代。とってもピースフルな世の中だ。

 今回僕たちTHR(こうじきよく歴史管理課)が任務のために訪れたのは、まさにその平安時代のど真ん中。十一世紀初頭の京都だ。ふじわら氏が政治の実権を握る、華やかな平安京である。

 戦争も混乱もない平和な世界なら、きっと今回の任務は楽にこなせるだろう──。僕はてっきりそんな風に思っていたんだけれども。

「ふぅん……やぁん♡」

 眼前の少女が、った吐息をらした。

 彼女はこのしん殿でんづくりの大邸宅──土御門殿のあるじだ。多数の平屋棟と優雅な庭園からなるこの巨大な殿てんには、常時何十人もの使用人たちが雇われているらしい。

 要するに彼女は、ゆいしよ正しい家系に生まれた、高貴なお貴族様というわけだ。

「あかんよぉミツキくん。んっ……そんなとこっ……」

「あの、変な声出さないでくれる?」僕は声をひそめ、彼女にそう告げる。

 いくらここが付きの寝室とはいえ、甘ったるい声を上げられてしまうのは非常にマズイ。お屋敷のひとたちにあらぬ誤解をされてしまいそうだからだ。うちのお嬢様に手を出す不届き者めー、とかそんな風に。

「せやかてなあ」少女は柔和な目を細めた。「変な声が出ちゃうんは、ミツキくんのせいなんよ? 急におっぱい触ったりするから」

「え、あ、そうだったの」

 気づけば確かに僕の手のひらは、彼女の着物の胸元に添えられてしまっていた。もちろんではない。ちょっとしたアクシデントだ。

 僕は慌てて手を離し、「ごめん」と頭を下げる。「その、じゆうにひとえだっけ? 和服の着替えを手伝うなんて初めてだからさ。勝手がよくわからなくって」

「ええよええよ。ミツキくんも男の子やもんな。偶然を装って女の子のおっぱい触りたくなる気持ちもわかる」

 そういうわけじゃないんだけど──と言いかけて、僕は言葉をみこんだ。

 僕の脱がせ方がまずかったせいか、彼女の着物は胸元を大きくはだけた格好になってしまっていた。そこからのぞく慎ましやかな膨らみは、確かに魅力的ではあるのだ。ぷるぷるですべすべしていて、僕の視線をきつけてやまない。

 だって、ねえ? しょせん僕も、日々性欲を持て余す十九歳男子なのだ。女の子のお着替えの手伝いなんて、平静を保ったまま出来るものじゃない。

「ねえねえ」とろけたような口調で、少女が続ける。「やっぱり男の子って、初対面の女の子の裸でも興奮するもんなん? おっぱいに吸いつきたいとか思うもんなん?」

「い、一般的にはそう、だね。たぶん」

「ミツキくん的には?」

「いや、その、僕は紳士だから、そこまでは思わないけど」

 はいうそです。実はすごく興奮してます。まさに吸いつきたいと思ってしまっています……!! 

 だいたい、こんなに可愛かわいい女の子の着替えをぢかで見ておいて、興奮しないという方がむしろおかしいのだ。ジェントルメン的な仮面を維持するのも楽じゃない。

 くっ、しずまれ、我が下半身っ……!!

 胸元から必死に目線をらそうとする僕を見つめながら、少女は「あはは」とほおを緩めた。

「めっちゃ動揺しとるなあ、ミツキくん」

「ど、動揺なんてしてないよ? 冷静だよ? 動かざること山のごとしだよ」

「確かに、かんは山みたいになってるなあ」

 少女にズボンの上からJr.ジユニアでつけられ、僕は「はうっ」と声を上げてしまった。

「ななな、何するの!?」

「男のひとのって、こないに大きくなるんやね。みち姫びっくりやわ」

 少女──みち姫ちゃんがくつたくなく笑う。

 そう。彼女はお姫様だった。汚れを知らぬはずの、平安時代のやんごとなきお姫様だ。

 そんなお姫様が、着物をはだけてマイサンを撫でている……。外はまだ日も高い時間帯だというのに。

 今回の任務は、最初からフルスロットルのようだ。これは大変にまずい状況である。

「どうせならウチのおっぱい、もっと触ってみる? ミツキくんなら別にええよ?」

「い、いやいや。そういうのはダメでしょ!!」

 その手を引きがすと、みち姫ちゃんは「ダメなん?」と首をかしげる。

「ダメだって!! 僕はキミを助けるためにここに来たんだから!!」

「ああ、なんやさっきそんなこと言うとったね。てぃー・えいち・あーる、やったっけ?」

「そう。THR」僕は努めてな顔でうなずいた。「任務中に要救助者の女の子相手に鼻の下を伸ばしているようじゃ、THRの隊長失格なんだから」

 いったいどの口が言うのかと文句をつけられそうな台詞せりふだが、これでも僕──ミツキは大いに反省中なのである。

 僕がこれまで、任務中どれだけ女の子に鼻の下を伸ばしてきたかは、前回の活動記録(『愛は歴史を救う~わたしの辞書に不可能という文字はないのよ編~』)をご覧いただければおわかりになると思う。正直、隊長失格のそしりを受けても仕方ないかもしれない。

 こんなていたらくでは、いつフレドリカさんに見放されてしまってもおかしくないのだ。今後はれ場なしで〝しん〟トラブル解決を図っていこう──。今回の僕はそう固く決意して、この時代にやってきたというわけなのだが。

 みち姫ちゃんのうるんだ目が、僕を見上げた。

「プレイボーイにほんろうされる貴族のお姫様……。実はウチ、そういうのにあこがれてるんよ。その手のトレンディな恋愛小説を毎晩読んでたら、見事に感化されてしまってなあ」

 いくらお貴族様とはいえ、みち姫ちゃんも年頃の女の子だ。恋愛ものに興味があるというのも、さほどおかしいことではないだろう。

「でもトレンディな恋愛小説って、この時代にそんなのあるの?」

げんじものがたりっていうんだけど、ミツキくん知らへん?」

 僕は「ああ」と頷いた。

「源氏物語って、あの古典のやつだよね」

「古典?」みち姫ちゃんが首を傾げる。

 彼女の反応で、言い間違いに気づかされてしまった。そういえばここは千年前の世界だ。源氏物語って、ちょうどこの時代の作品なんだっけ。

「ごめんごめん。僕の時代だと古典になってるからさ」

「そうなん? 有名になってるん?」

「うん。確か世界最古の長編小説ってことで、世界中のひとが知ってる作品だと思うよ」

「やっぱりなあ」みち姫ちゃんがほがらかに笑う。「主人公のさんな境遇は女のウチでも共感できるくらいやし、悲恋の描き方は抜群にいし、平安京で一番のラブストーリーだとは思っとったけどなあ……。そうかあ。未来の世界ではそんなに有名な作品になってるんやなあ」

 よほど源氏物語が好きなのだろうか。彼女はまるで、自分が賞賛されているかのような喜びを見せていた。素直な子なんだなあ、と僕も微笑ほほえましい気分になる。

「そもそもウチ、結構な箱入りやからね。同年代の男の子と遊んだこともなくてなあ……。あの手の恋愛小説を読んでると、ついつい胸キュンしてしまうんよ」

「胸キュンですか」

「源氏物語って、ちょっとエッチな場面を想像させるシーンもあるやん。ああいうのにも憧れてしまって」

 みち姫ちゃんが、ぽっと頬を朱に染める。

「だからこう、な。寝床で小説読みながら、毎晩ひとりでもんもんと自分を慰めてたりしてな……。暗い女やろ?」

「暗いどころか、相当あけっぴろげな女の子だと思うんだけど」

 普通の女の子は、初対面の男に自分の性体験を語ったりしない。

 このみち姫ちゃんという女の子、経験値が低すぎて、男性に対する警戒心がゼロなのだろうか。困ったものである。

「でもこうやってミツキくんが来てくれたから、存分に体験出来るな。さあ、遠慮なくみしだいてくれて構へんよ」

「いやあのね……」僕はため息をつく。

 せっかく真面目に任務に励む決意をしてきたというのに、これですよ。しよぱなからこの状況ですよ。ほぼ初対面の女の子と、おっぱいを揉むだの揉まないだののやり取りをしちゃってるわけですよ。

 ああ、人生ってままならない……!!

「とにかく、僕が手伝うのは着替えだけだから」

 僕は鉄の意思のもと、みち姫ちゃんを突き放すことにした。

 彼女はしばらく不服そうに唇を突き出していたが、すぐに「まあエロスはいつでも出来るしなあ」と表情を明るくする。細かいことはあまり悩まない性格のようだ。

「それにしても、タイミングよくミツキくんが来てくれて、本当に助かったわ」

「出会って二秒で着替えの手伝いを命じてきたもんね……。そんな偉人、みち姫ちゃんが初めてだよ」

 みち姫ちゃんが照れくさそうに「いやあ」と頬をかく。決してめてはいないはずなのだが。

むらさきも最近は休みがちでなあ。ひとりじゃ服も脱げんところだったんよ」

 この十二単という着物は、布の枚数が多くて構造は複雑だし、すそが長くて結構な重量がある。確かに、着替えるのは手間がかかりそうだった。

「この時代のお姫様って、着替えも他人の手が必要なんだね」

「ウチに関して言えば、着替えだけやないけどね」みち姫ちゃんが続ける。「ウチな、基本は他人任せにする主義なんよ。掃除もすいも洗濯も、ぜーんぶ誰かにやってもらうことにしてる。もちろん殿てんじようびととしての仕事もな」

「殿上人としての仕事って?」

「ええと、みかどと会議をしたり、儀式を執り行ったり、地方の行政官を任免したり、租税を管理したりとか……そういう、もろもろの政治的な業務のことやな」

 彼女の仕事は、朝廷でまつりごとを行うこと。何を隠そう、みち姫ちゃんは、この時代では著名な政治家だったりするのだ。

「……まあ、全部他人任せやから、詳しくはわからんけどなー」

 にへら、と笑うそのユルユルな表情は、まったく政治家には見えないけれども。

「政治家なのに仕事を他人任せって……。それでいいの?」

「ええんよ。会議に出るのも、書類に目を通すのも、みんな代理の者にやらせてる。そもそもウチに文句言える人間なんて京にはおらんしな。何も問題ないやろ」

「問題ないのかなあ、それ」

「実際のところウチの仕事は、食って寝て小説を読むことだけやね」

 このお姫様、どや顔でそんなことをのたまった。どうしようもないダメ人間発言である。

「ずいぶんといいご身分だね、みち姫ちゃんは」

「そりゃあそうや。だってウチ、ふじわらのみちながやもん。超金持ちなんやもん」

 僕が頷くと、みち姫ちゃん──藤原道長はにっこりと微笑ほほえんだ。

 藤原道長。平安時代の京都で栄華を極めた、日本史上屈指のお貴族様である。せつしようやらだいじようだいじんといった高い地位をほしいままにした、いわばエリート中のエリートだ。平安時代最大のセレブと言っても過言ではないだろう。

 しかしそんなお貴族様ですら、時震の影響から逃れることは出来なかったらしい。例によって、こうしてまたみようれいの女の子に変わってしまったのだ。

「日本史の教科書にも載ってる藤原道長が、こんな可愛いお姫様になっちゃっているとはね」

「可愛いって……あはは。ミツキくんは上手やなあ。そんな褒めんといてよ」

 みち姫ちゃんが、ぱたぱたと手を振る。

 れいに切りそろえられた前髪に、おっとりした優しげな目元。潤う唇はほんのり桜色だ。貴族のご令嬢だけあって、蝶よ花よと大切に育てられてきたのだろう。みずみずしい素肌は実にきめ細やかで、長い黒髪もよく手入れされている。

 頭にしたはすの髪飾りも華やかで美しく、身に着けている着物もごうしやの一言。彼女はまさに、古式ゆかしい「お姫様」といった外見の女の子なのである。

 これで性格さえもう少し真面目だったら何の問題もなかったろうに──と思ってしまう。

「ところで」みち姫ちゃんが口を開いた。「さっき言うとったよね。ミツキくんは、はるばる未来の世界から、ウチを助けるために来てくれはったって。あれってどういう意味なん?」

「ああ、それは……」

 みち姫ちゃんに、THRの仕事を詳しく説明することにした。

 時震という現象によって歴史がねじ曲がり、宇宙が消滅の危機にひんしていること。

 今回の事象変異の中心が、他でもないみち姫ちゃんであること。

 事象変異を修正するためには、みち姫ちゃんがおちいっているとある状況、、、、、を改善する必要があること──。

 ただ、こんせつていねいに説明しても、彼女は「ううーん?」と首を傾げるばかりだった。

 そもそも相手は千年も前の時代の女の子なのだ。こんなSFめいた話を信じろという方が無理なのかもしれない。

「ようわからんけども、ともかく」みち姫ちゃんがぽん、と手をたたく。「助けに来てくれはったってことは、要するに、しばらくウチの世話役になってくれるってことやろ?」

「え? 世話役?」

「ウチは大歓迎やで。世話役はいくらおっても困ることはないしなあ」

 とりあえず僕は「まあそういうことで」と頷いておくことにした。

 任務の達成のためには、どのみち彼女の近くにいる必要があるのだ。お世話係という立場ならばいろいろと都合がいいだろう。

 みち姫ちゃんはにこにこと笑いながら、

「それじゃあ主としての命令や。とりあえずミツキくん。ウチのおっぱい触ってみようか」

「話そこに戻るの!?」

「いわゆる『身分違いの恋愛』って話やね。源氏物語でいえば、ひかるげんじあかおんかたみたいな……。ウチ、一生に一度はああいう経験がしてみたくてなあ」

 言いつつ彼女は、僕にしなだれかかってくる。ひじのあたりにほのかな膨らみを感じ、股間のミツキJr.はまたしてもムクムクと大きくなってしまう。

「貴族とめし使つかいの一夜のあやまち……。ええやん。いけるやん。これは源氏物語を超える名作になる気がするなあ」

「現実とフィクションを混同しちゃダメ!!」

 首を振る僕には構わず、彼女は僕の手をその胸元へと導いてしまう。

 ふにょん、という感触。手のひらに収まるくらいのサイズとはいえ、みち姫ちゃんのおっぱいはふんわり柔らかい。僕の鉄の意思は早くも砕け散りそうになっていた。

「恋愛ゴッコみたいなもんやと思って。ほら、好きなだけ触っていいんよ」

「こ、これは恋愛ゴッコどころじゃないよみち姫ちゃん!? もはやその先の行為だよ!!」

「まあまあええやん。恋愛にはいろんな形があるって紫も言っとったし──」

 みち姫ちゃんがJr.に手を触れようとしたそのせつ

「ちょっと、さっきからなにやってんのよ!! おまえたちっ!!」

 御簾の向こうから、かんだかい声が響いてきた。

 ぜんとしているうちに御簾が強引に開かれ、見知った顔の少女が現れる。

「ちょっとミツキ!! その女の寝室に行ったまま、なかなか帰ってこないと思ったら……!! なんでちちり合いを始めてるのよ!? バカじゃないの!?」

 偉そうなマントに、偉そうな二角帽。ミニスカ軍服風にアレンジされた航時局制服の女の子が、眉をり上げて僕をにらみつけていたのである。

「いや違うんだよナポ。これは着替えを手伝っているだけで……」

「どういう手伝い方すれば、おっぱいわしづかみすることになるのよ!!」

「なんや、うるさいなあ」みち姫ちゃんが眉をひそめた。「ウチとミツキくんの秘め事、邪魔しないでくれん? アホ子はお呼びじゃないんや」

「なによアホ子って!? 馬鹿にしてんの!?」

 二角帽の少女がさらにを強めてしまったので、僕は間に入ることにした。

「あのね、みち姫ちゃん。この子はアホ子じゃなくてナポ子だから……」

「アホ子でもナポ子でもないわよ!! わたしはナポレオン・ボナパルト!! 近代ヨーロッパ最大最強の皇帝なのよ!! 全時空で最も偉いのよ!!」

 ナポレオン・ボナパルト──通称ナポ子。ドジで泣き虫でいろいろポンコツなフランス皇帝へいである。全時空で最も偉いとか自称しちゃうあたり、とにかくプライドだけは死ぬほど高い。

 彼女がTHRのエージェントになって早三か月。同僚として一緒に活動するようになっても、その上から目線の物言いは相変わらずだった。

「そもそもね!!」ナポ子がみち姫ちゃんを睨みつける。「ミツキはこのわたしのパートナーなの!! 田舎いなか貴族ふぜいが、勝手に手を出すんじゃない!!」

「なんなんアホ子。顔真っ赤にして。ミツキくん取られたのそんなに悔しいん?」

「く、悔しいとかそういうんじゃないわっ!!」

 ナポ子が思いきり頬を膨らませていた。あれは心底悔しいときの顔である。

 それを見上げるみち姫ちゃんの表情は、実に楽しげだった。

「過度なジェラシーはみっともないで。光源氏だって、『しつはほどよく焼くのがいい』って言っとるし」

「だ、だからジェラシーとか、そういうんじゃないって言ってるでしょう!!」

「やったら、ミツキくんが誰と乳繰り合おうと関係ないやろ。そもそもアホ子とミツキくんはただの同僚で、別に恋人同士ってわけでもないんやし」

「ぐっ……」ナポ子がみする。「ミ、ミツキが好きなのはわたしのおっぱいだから!! これは世界の常識だから!! ナポレオン法典にも書いてあるし!!」

「あからさまな嘘言っちゃダメでしょ!?」思わずツッコんでしまった。

 ナポ子は眉を吊り上げ、依然としてみち姫ちゃんを睨みつけている。

「そ、そもそもおまえごとき貧乳、わたしの敵ですらないわ」

「貧乳……? それアホ子が言うん?」

 みち姫ちゃんが首を傾げていたが、僕も同感だった。みち姫ちゃんのおっぱいも割と小ぶりな方だが、どちらかといえばナポ子の方がやや小さいような……。

 ナポ子が「ともかく!!」と強引に話を変える。

「みち姫。わたしたちは、おまえの腐った根性を叩き直すためにやってきたのよ!!」

「腐った根性?」

 不思議そうな表情のみち姫ちゃんに、ナポ子が指を突きつける。

「藤原道長……おまえ、ちょっとは名の知れた政治家なんでしょ? なのに、仕事は人任せだわ、毎日遊びほうけているわ。お、おまけに、わたしのパートナーを誘惑するわ……!! そういうねじ曲がったしようねを、わたしたちが修正してやるって言ってるの!!」

「むむう。ひどい言われようやなあ」みち姫ちゃんが肩をすくめた。

 しかしまあ、ナポ子の言うことは事実なのだ。時震の影響なのか、藤原道長は「金と権力を持て余すぐうたら人間」になってしまったらしい。本来の歴史で行っていたはずの施策も行わず、毎日豪遊しているのだそうだ。それこそ、平安京の財政が傾いてしまうほどに。

 そう。今回のTHRの目標は、「みち姫ちゃんの生活態度を更生させ、まともな政治家に仕立て上げること」なのである。

 タキオンメーターの歴史変異率も現時点で四十パーセントを越えている。これは結構なレベルだった。早いところみち姫ちゃんの性根を叩き直さないと、宇宙がドカンと爆発してしまいかねないのだ。 

「ていうかミツキ。おまえまでその女を甘やかしちゃダメでしょ」

 ナポ子の怒りのほこさきが、僕の方へ向けられた。

「このダメ女を更生させるのがわたしたちの仕事なんだから。そもそも着替えなんか手伝うべきじゃないのよ」

「いやでも、十二単の着替えはひとりじゃ無理だと思うけど」

「おまえはいつも甘いのよ。モンブランにハチミツとカラメルソースとガムシロップをたっぷりかけたくらい甘い」

「胸やけしそうなたとえ……」

「要するにわたしが言いたいのは、相手が女の子だからって甘やかしてばかりいたんじゃ、いつまでっても任務が終わらないってことよ」

 む、と僕は言葉に詰まる。

 ナポ子の言うことも一理ある。箱入りで育ったダメな子を更生させるには、ときには厳しく接することも必要なのだ。

「でもそういうナポ子自身、十八世紀のアルプスじゃ、フランス軍のみなさんに相当甘やかされてたような気がするけども」

 そうつぶやく僕を、ナポ子が「黙れ」といつしゆうする。この皇帝陛下、都合の悪いことには耳を貸さない主義なのだ。

「とにかくみち姫、このナポレオン・ボナパルトが、優秀な政治家のなんたるかをおまえに叩きこんでやるわ!! 光栄に思うことね!!」

「いらんお世話やなあ」みち姫ちゃんが鼻で笑う。「そんなことより、ウチはミツキくんとの秘め事の続きを楽しみたいわ。ねえ、ミツキくんもそう思わん?」

「え、いや。さすがにそれは」

「ええやん。お互い仕事のことなんて忘れて、楽しも?」

 反論しようと開きかけた僕の口を、それより早く、みち姫ちゃんの唇がふさいでしまった。

「ちゅ……んちゅううっ……」

「あああああ!! ちょ、ちょっと、なにやってんのよバカ姫えええええええっ!!」

 寝室内に、ナポ子の絶叫がこだました。

 みち姫ちゃんの柔らかい舌先をこうこう内に感じながら、僕は思う。

 ああ、今度の任務もやっぱりひとすじなわではいかなそうだなあ──と。

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