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ブラッククローバー 暴牛の書 三章 君の夢が叶うのは

原作: 田畠 裕基 小説: ジョニー 音田

 おうかいへいかいには、魔法学校という教育機関が点在している。

 おも魔導書グリモワールさずかる前の少年少女を対象としてもんを開き、魔法に関するもろもろを知識・技術として提供する場所だ。

 とはいえ、すべての学校が平等な教育環境というわけではない。王貴界の学校などは設備も講師陣も充実しているが、街から離れれば離れるほど、そのどちらも手薄になっていく。

 無慈悲なようだが、魔法がすべてのこの世界において、それは当然のせつだ。

 必要があるところには多くを用意し、そうでないところには相応のものを用意する。きわめて合理的に環境整備されていた。

 

「──えー、ほ、本日の授業を始める前に、皆さんに伝えておくことがあります」

 平界の最北端に位置する町・リャッケ。

 そこから少しでも緯度を北にずらせば、そこはもうけいがいかいという、平界と恵外界の境界線にあるような町だったが、しかしそこにも魔法学校はある。

 先述の『合理的な環境整備』に当てはめれば、最底辺の環境にある魔法学校なのだが……。

「……その、現職のほうだんの方が、特別講師として見えています」

!!

 朝のホームルームにて。担任教師の若い男性・ハリスからいきなり渡されたろうほうに、教室の生徒たちはザワついた。

 この最果ての魔法学校において、外部から講師が来るということ自体、相当まれなことだった。ましてその講師が魔法騎士団──あの英雄軍の一員だというのだ。

 魔法騎士団とは、ほうてい直属のどう軍団のことで、クローバー王国の自治機関であり、防衛のかなめであり、全国民から敬意とせんぼうを向けられるえいけつごうけつの集団。

 自分たちには、決して届かないような高みにいる人たち。

「え、もしかしてさ、『こんじきけ』団の、ウィリアム・ヴァンジャンス団長とか来ちゃうんじゃね!?

「いやいや、さすがにそんなすごい人が、こんなとこまで来ないでしょ

「でもエルデ君がそう言うなら、そんなこともある気がしてきた

 クラスのガキ大将的な存在──エルデと、その取り巻きのふたりが声をあげたのをきっかけに、教室中に同じような話題が広がっていった。

「『ぎんよくおおわし』団の、ノゼル様とかだったらどうしよう!?

「知ってる めっちゃかっこいいっていううわさだよね

「どーせ来てもらうなら、オレは『あお』団のシャーロット団長のほうがいいなっ

「いやいや やっぱり『れんおう』団のフエゴレオン団長でしょ

 へきに住んでいるとはいえ、有名どころの魔法騎士団の情報などは入ってくる。十二~十三歳の多感な年ごろの生徒たちは『憧れのあの人』の名前を言いあって、教室中が大騒ぎとなった。

「……それでは、お入りください」

 そんなどよめきの中、ハリスは少し大きめの声で教室の外へ呼びかける。どうしてそんなことになったか。そして、どうしてハリスはどこか歯切れが悪いのか。そんな疑問はひとまず放り投げて、入り口へと期待のこもった視線が集まって──。

 ドガァッ!!

 木製の扉をやぶる勢いで入室してきたのは、銀と黒が入り混じった髪をオールバックにまとめた青年だった。

「おうっ

 彼は大きく肩を揺らしながら黒板の前を歩き、いかついサングラスをきらりと輝かせ、バシンッ と、教壇に手をつくと、

「特別講師のマグナ・スウィングだ 今日きよう一日みっちりしごいてやっから、よろしくっ!!

『…………………………』

(……なんかヤベエの来たっ!!

 一瞬の硬直をおいてから、生徒一同はもれなくそんなことを思った。

 魔法騎士団が来る、と、ハリスは確かにそう言った。

 しかし現在、一同の目の前にいるのは、

「ぅおおおおおいっ!! シカトぶっこいてんじゃねえよゴラァァッ!?

 ヤンキーなのだ。しかも、ちょっと古いタイプなのだ。いったいなにが起こって………?

「──マグナ。いきなりでけえ声出すんじゃねえ。お前はいつもやりすぎなんだよ」

 一同が強めの混乱を共有していると、入り口の向こうからそんな声が聞こえてきた。

「っつーかお前がそんな態度だと、オレまでヤバい人に見えちまうだろうが」 

「うぃすざっすっ しゃあっせんしゃっした!!

 マグナの深いおに迎えられながら、身をかがめて教室に入ってきた人物に、再び一同の表情が固まる。

 その男は、なんかもう、いろいろがヤバそうだった。

 百八十センチを超えているだろう身体からだは、ガチガチの筋肉でおおわれていて、首回りもありえないほど太い。その上にどっかりと乗っているのは、殺人兵器みたいな造りの顔だ。

 青年のほうがヤンキーなら、彼はそれらをべる裏社会の首領ドン──そんな雰囲気を持った大男の登場に、生徒全員はただ黙り、冷や汗をかきながら自分のひざを見ていた。

「ったく。少しは人の迷惑考えろよな。言っとくけどオレ、乙女おとめ座だからね?」

 彼は他人の迷惑などかえりみないようでタバコに火をつけ、乙女だったら泣いて逃げ出すような威圧感を放ちながら、教壇に立った。

 ……僻地に住んでいるとはいえ、有名どころの魔法騎士団の情報などは入ってくる。主には先ほど皆が挙げたような、輝かしい記録レコードを持った騎士団の噂だが、もちろん、悪い噂も入ってくる。

 その悪い噂の大半は、とある魔法騎士団が起こしたものであるという。

 その魔法騎士団の名前は……。

「えー、こんにちは、『くろぼうぎゆう団長のヤミ・スケヒロです」

 ──この日を境として。

 生徒らの魔法騎士団にいだくイメージは、一変することとなる。

 

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