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怪談彼女 短編① 天才の彼女と赤点の彼 

怪談彼女 短編① 天才の彼女と赤点の彼 

小説:永遠月心悟 キャラクター原案:ミウラタダヒロ  漫画:りぽでぃ
あらすじ
怪談彼女の最新5巻が8月4日に発売!! それを記念して、ヤンデレヒロインのはっちゃけた日常を永遠月先生が書き下ろし&4コマ漫画でお届け!!  学校のテストも、黒川の手にかかればおとなしく過ぎるわけがない……!!

秀才の彼女と赤点の彼

 国語、一四点。
 英語、一〇点。
 数学、〇点。
 社会、九点。
 理科、六点。
 私の愛する夫――斉藤槍牙くんの中学一年生、一学期中間テストの点数である。
 なお、百点満点の試験での点数だ。二〇点満点のテストとかではない。
「見事に全教科赤点だ。というわけで明日から毎日、放課後に追試をおこなう。明日は国語、明後日は数学、土曜日には社会と理科をやって、週明けに英語。いいな? 斉藤」
 テストも無事返却されて、私たちは放課後の職員室へと呼びだされていた。担任教師の布川丈一は腕を組み、むつかしい顔をして私たちをにらむ。いえ、確かに私が槍牙くんにしっかりと抱きついているので視線の向きは難しいけれど、私――黒川夢乃をにらんでいるようだった。なにか文句でもあるのだろうかと尋ねると、大仰なため息で返される。
「斉藤が何故こんな点数を取ってしまったのか、理解できていないのか? 黒川」
「馬鹿なことを言わないでちょうだい。理由ぐらいわかるわよ」
 ね、槍牙くん、と声をかけると槍牙くんはうんざりといった表情を浮かべた。とりあえず離れろ、と照れ隠しのようなことを言う。本心ではそう思っていないのだろうから、私はむしろぎゅっと抱きつく力を強めた。あきらめたようなため息が槍牙くんの口からこぼれる。もったいない。私の口の中に吐きだしてくれたらいいのに。
 布川丈一教諭が、おい黒川、と私をいさめた。
「理由がわかっているのなら何故そんな態度なんだ?」
「だって槍牙くんがテストの点をこうした理由は愛のためだもの」
「違ェよ」
 槍牙くんがうなるような低い声で否定した。照れなくていいのに。見ると布川丈一教諭も怪訝そうな顔だった。なに、理解できていないの?
「なんでこの点数がお前への愛のためなんだ?」
「語呂合わせをすればわかるわよ」
 国語、英語、数学、社会、理科の順番に数字を並べればいい。
 一四一〇〇九六。最初の「一」は算用数字のほうがわかりやすいわね。すなわちアルファベットの「I」と同じ形で、「あい」と読む。
「『一(あい)四(し)一〇(て)〇(る) 九六(くろ)』。この最後の「くろ」は黒川夢乃、つまり私のことよ」
「そんなわけあるか!」
 槍牙くんが羞恥に耐えきれなかったのか叫ぶ。もう、恥ずかしがり屋ね。職員室には授業が終わった教師たちがたくさんいたので、視線を浴びてしまう。
「だって私への愛の告白以外に読めないわよ? まともに成立してかつ槍牙くんの考えに合っている文章はそれぐらいだもの」
「どこが考えに合ってんだ!」
 なおも声を荒らげる槍牙くんは冷静さを欠いているように見えるが、たぶん私と仲がいいのを周囲の教師陣に見せつけたいのだろう。その気持ちはわかるので止めない。
 布川丈一が頭をかきながらうんざりといった口ぶりで言った。
「斉藤がこんな点数を取ったのは、お前が授業妨害をしているからじゃないのか?」
「私が? いつ? していないわよね?」
 槍牙くんのほほを指先でくすぐりながら尋ねると、青い顔で槍牙くんは答える。
「いつも膝の上に乗っているだろ。授業中。あれすっごい邪魔。先生の話も聞けないし。ノートも教科書もお前が片づけちまうし」
「ええ、そうよ。だって槍牙くんの耳に私以外の人間の声なんて入れたくないし、教科書やノートで遊びはじめたら私といちゃいちゃしてくれないじゃない」
「どのみち、いちゃつかねえよ……」
 とにかく、と布川丈一教諭がぼやく。
「普段の授業態度がこうして結果になったんだ。お前へのメッセージなわけ、ないだろ。だいたいそんな風に狙って点数を取ることなんてできないだろうが」
「できるわよ。答案用紙に書かれていなくても、点数配分ぐらい推理できるわ」
「……百歩譲ってそれができても、問題の答えがわからなきゃ無理なんだ」
「わかるわよ、あれぐらいの難易度なら。引っかけも見え見えだし」
「それはお前だからだ――学年一位」
 槍牙くんと同じクラスなので当たり前だが、私も同じ試験を受けている。満点だった。わからない問題などないし気をつけていればケアレスミスもない。満点以外を取るほうが難しい。さすが私の槍牙くんである。わざと減点して愛のメッセージを忍ばせるとは。
 槍牙くんがまるで「お前はいいよな、お前は」とでも言いたげな視線を送ってくる。自分だけが私への愛を点数で表したことでご立腹なのだろう。私もやっておけばよかった。次回はそうしなければ。

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