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怪談彼女 短編① 天才の彼女と赤点の彼  2 / 9

小説:永遠月心悟 キャラクター原案:ミウラタダヒロ  漫画:りぽでぃ

 とはいえ、私とて槍牙くんが赤点を取ったことの緊急性はわかっているつもりだ。大丈夫、きちんと愛のメッセージは伝わった。追試では普通に満点を取ればいいわ。授業を聞いていないのは私も同じ、槍牙くんも満点が取れるわよ。楽勝ね。
「ところで黒川。お前は確かに満点だった。だがテストも斉藤の膝の上で受けたな?」
「ええ、夫婦なのだから一つの机を共有するのは当然だもの」
「テストで一つの机を共有するのはカンニングだ」
「夫婦仲の前には不正行為など些末な問題よ。取るに足らないわ」
「こっちが取るに足るんだよ!」
 ついに布川丈一まで怒鳴りだした。そんなに変なことを言ったかしら。だって槍牙くんと一ミリだって離れていたくないのに、それを試験時間の五十分も強制されたら頭がおかしくなって試験どころじゃなくなるのに。
 ふー、ふー、と息を整えた布川丈一教諭は言った。
「同じ問題を出す。学年一位の成績なんだから勉強を見てやれ。それで斉藤に及第点の六十点を取らせ、赤点を回避させろ。それがお前へのペナルティだ」
 あら? それってつまり――
 槍牙くんの顔を至近距離からまじまじと見つめる。しばらくじとっとした目で私を見てから、槍牙くんは深い深いため息をついて小さい声で言った。
「……頼んだ、黒川。赤点は回避したい」
「ええ、勿論よ」
 つまり今日は堂々と、誰にもはばかることなく。

「女教師と学生ごっこができる、というわけね」
「……いや、ごっこ遊びじゃ困るんだ。ていうか、同じ内容のテストをやるんだから、答えだけ教えてくれ。あとは家で教科書とつきあわせて勉強するから」
「ダメよ。せっかくここまでしつらえたのだから。授業として学ばなくちゃ」
 槍牙くんを連れて家に帰るやいなや、私はすぐ和室の客間にフローリングカーペットを敷いて洋間風にし、槍牙くんに使ってもらうために小さめのダイニングテーブルと椅子を一脚持ちこんだ。黒板はなかったのでホワイトボードで代用し、教卓も丈夫につくられた木の箱を縦にひっくり返して、バランスを取るため中に重しを入れたものを用意する。
 壁だけはどうしても和風づくりになったが、即席で教室のできあがりだ。
「で、お前その格好はなに?」
 試験勉強の名目で私とごっこ遊びに付きあってくれる槍牙くんは、ひどく気だるげな顔つきで私を指さした。ええ、気になるでしょう。それを見越して着替えてきたのだ。
 普段はゴシックロリータの格好をしている私だったが、今日は女教師として槍牙くんにあんなことやこんなことを教えるために、それなりの衣装が必要だった。灰色のタイトスーツに白いブラウス、黒い無地のストッキング。素っ気ないスニーカーは白くまばゆく新品で、目には赤いフレームの伊達眼鏡をかけていた。髪からリボンも外し、ストレートに下ろしている。手には当然、教鞭も持っていた。

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