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怪談彼女 短編② 友達の要らない彼女と脱出仲間の彼 

怪談彼女 短編② 友達の要らない彼女と脱出仲間の彼 

小説:永遠月心悟 キャラクター原案:ミウラタダヒロ 漫画:りぽでぃ
あらすじ
怪談彼女の最新5巻が8月4日に発売!! 個性ありすぎヒロインたちの日常を永遠月先生が書き下ろし&4コマ漫画でお送りします!  今回は、一見無口なクールヒロインのこんな一面が……!!

友達の要らない彼女と脱出仲間の彼  ―――いつか小百合に、復讐させてやる。 
 師匠はそう言った。家族を殺され、すべてを失った五歳の私にそう約束してくれた。 
 そのために私は訓練に耐えた。 
 師匠が教えてくれるからつらい稽古という感じはしなかったけれど、気がついたら意識を失って倒れていたというぐらい肉体的にハードなものもあったし、他の弟子たちはほとんど大人だったけれども弱音を吐いてリタイアしてもいた。 
 元々精神的には、我慢強いタイプだったのかもしれない。 
 そう師匠に誉めてもらえたときは、すごく嬉しかった。お前は強いと認められているような気がして、ますます訓練に熱中した。来たるべきときのことを思って修業を重ね、倫理観さえなければ人の首ぐらいワイヤー一本で切り飛ばせる技術を得た私は、いつしか中学校一年生になっていた。 
 ――友達、できるといいな。 
 師匠はそう言って祝福してくれた。けれど私は、素直にうなずかなかった。 
 友達なんて要らない。私にはただ。 
 復讐する相手がいれば、それでいいのだから。 
 

 
「……ごめん、閉じこめられたみたい」 
「……死ね」 
 いや本当にごめん、と深く頭を下げて謝ってくる幸薄そうな顔つきの少年は、クラスメイトの斉藤槍牙だ。プールの授業が終わった後だったので、私と同じで髪の毛だけがぐしゃぐしゃに濡れている。半袖のワイシャツから伸びる腕は、まだ日焼けしてはいない。 
 元より悪感情が強いので悪態もついたが、実際は私のミスも含んでこの状況だ。私のこめかみから汗が垂れた。焦りによる冷や汗だけではない。 
 単純に、暑い。 
 私たちがいるのは鷹夏中学校プール脇にある体育倉庫だ。白線引きや、袋に入った石灰(最近は貝殻の砕いたものだったか?)、運動会でしか見ない綱引き用の巨大な綱や大玉、パイロン、ハードル、バトン、マット、一輪車、その他もろもろの用具が押しこめられて雑然としており、ついでに空気が砂っぽい。マットや綱がグラウンドの砂を含んだままここへ返されたため、空気がよどんだのだろう。 
 私は平気だが、気管支の弱い人にはつらいのではないか。そう思えてくる。 
 まあ酸素欠乏という状況にはならないだろうが、しかし。 
 一時間もここにいると、脱水症状を起こして熱中症ぐらいにはなるかもしれない。そう危惧するほどには、この空間は蒸していた。 
 七月のはじめ、真夏日になると予報されていた昼下がり。 
 私は、己の仇敵とともにこの体育倉庫へと閉じこめられたのだった。 
 

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