ジャンプ×小説 JUMP j BOOKS

WebノベルWeb Novel


暗殺教室 殺たん センター試験から私大・国立まで! 問題集の時間

暗殺教室 殺たん センター試験から私大・国立まで! 問題集の時間

原作:松井優征 小説:久麻當郎 英語監修:阿部幸大(東京大学 大学院)
大ヒットの『暗殺教室』英語参考書シリーズ第4弾は問題集編!! 実際に書き込んで使いやすいサイズで登場!! E組生徒たちの詳しい・楽しい・分かりやすい解説で、大学受験にまで役立つ一冊。 松井優征先生完全監修の書き下ろし小説は、高校3年生となった元E組の面々を描く、『暗殺教室』本編の後日談! 松井優征先生の描き下ろしイラスト&マンガも収録、特別付録「赤ころシート」も入った充実の内容です!!

1 入試の時間

「大雪のため、各地の交通機関に遅れが出ています。本日予定されていた国公立大学の試験は、開始時間を遅らせて……」
 テレビのニュースが大雪の模様を告げていた。渚は自宅で昼ご飯を食べながらそのニュースを心配そうに見つめた。
 今日は、E組の仲間達が大学受験に挑む日だ。すでに高校の系列である蛍雪大学への内部進学が決まっている渚は、仲間達の奮闘を祈った。
 ――みんな時間通りに試験会場にいけたかな。
 そんなことを考えている時、スマホがLINEの着信を告げた。

(カルマ)いま、ヒマっしょ?

 渚は思わずテレビを二度見した。今、カルマは東杏大学の受験の真っ最中のはずだ。すぐに返事をした。

(渚)今日、試験だよね?
(カルマ)もちろん。いま昼休み
(カルマ)三時に終わるからこのあと会おうよ
 カルマからの誘いに、渚は苦笑いした。
(渚)余裕だね
(カルマ)まあねー、で、四時にいつものファミレスでいい?
(渚)大雪だよね?
(カルマ)こっちは大雪なのに試験受けてるんだっての
(カルマ)渚も部屋でぬくぬくしてないで出てきなよ

 結局渚は押し切られて、新雪を踏みわけながらカルマとの待ち合わせ場所に向かった。駅からの道の途中で、小学生が雪合戦をしていた。流れ弾に当たらないよう気をつけながら、足元の悪い道を歩いていつものファミレスに先に入った。体が冷え切ってしまって、暖かい室内に入ったのに体の芯は冷たいままだ。体を震わせながら待っていると、約束の時間ちょうどにカルマがやってきた。
「よー」
 周囲の客の注目を浴びるくらい、背が高い。中学時代から10センチ近く身長が伸び、185センチになった。
 ――すごく不公平だ……。
 未だに160センチに届かない渚は、成長期がこれから来ると信じている。……永久に来ないと悟るのは数年後の話だ。
カルマは、嫉妬と羨望の眼差しで見つめる渚を見てニヤッと笑った。
「どうしたの渚? 俺の顔の位置、高すぎて見えない?」
「……うるさいなぁ」
 渚は今年に入ってからカルマの受験を気にして会わないようにしていた。受験を間近に控えたカルマから遊びの誘いがあると渚の方がヒヤヒヤしてしまった。
「今日の試験どうだったの?」
「別にどうってことないよ。想定内の問題が出ただけから」
 ハードな試験を終えたばかりのカルマは、疲れた表情も見せず、いつもの涼しい顔をしていた。
「試験はどうでもいいんだよ。呼び出したのは相談があってさ。E組全員で卒業旅行、行こうよ」
「…卒業旅行!?」 
「俺ら、これから大学生になったり実家の仕事継いだりするから、一緒に遊びに行くチャンスなんて滅多になくなるじゃん。三月中旬ならみんな余裕あるんじゃね?」
「……三月中旬って、まだ入試終わってないよね。もし前期試験で落ちたら……」
「大丈夫だって。俺らE組だから」
 カルマはニヤッと笑った。
「竹林は高校受験の失敗を繰り返さないように実力に見合った私立大学に絞ったし、磯貝はさっき試験会場ですれ違ったけど、問題なさそう。寺坂ですら滑り止めに受かったから生意気にも大学生だ。聞いてる限り、みんな大体なんとかなるよ」
「そっかぁ……あっ」
 渚はそこでふと思い出した。
「茅野は行けないよ。そのころ、海外ロケだって言ってた」
「マジで!?そっか残念…茅野ちゃんは売れっ子女優だもんなー」
「『ゴールドシティ』っていうアドベンチャーアクション映画って言ってたよ」
 カルマは驚いて椅子から半分立ち上がった。
「え、うそ、それって、『ソニックニンジャ』の監督の映画じゃん」
「そうなの?」
「そうだよ! すっげーうらやましいじゃん。もう国際派女優になってるんだな。茅野ちゃんすげーな」
 『ソニックニンジャ』は、E組にいた時、殺せんせーにハワイまで連れていってもらって、カルマと三人で観た。渚にとっても思い出深い映画だ。監督が好きだと言ってた割には「ベタだよね」と冷めた感想を漏らしたカルマと、そのベタなストーリーに号泣していた殺せんせーのギャップを思い出して、懐かしい気分になった。
「茅野ちゃんとマメに連絡取ってるんだ?」
「うん、メッセージやり取りしてるだけだけど。向こうは忙しくなる一方だし、僕らの遊びで貴重な時間を奪うわけにはいかないよ」
 そう言って笑う渚に、カルマは呆れた。
「渚は遠慮しすぎ。俺らにとっては『磨瀬榛名』じゃなくて、同じE組だった茅野ちゃんなんだから。時にはダメ元で強引に誘ってみるのも、親愛なる仲間ってもんじゃね?」
「そうかもしれないけど……」
「でも、海外ロケ中じゃ卒業旅行に誘うのは無理か。ロケってどこに行くか聞いてる?」
「うん、東南アジアのプノン国。世界遺産の寺院群でロケだって」 
 カルマがポンと手を打った。何かたくらみを思いついた顔だ。
「卒業旅行の行き先、決まったわ。プノン国の世界遺産観に行こう」
「えっ!?」
「ちょうどいいじゃん。卒業旅行、海外もアリだと思ってたからさ、茅野ちゃんのところに行っちゃおうよ」
「そんな、無茶だよ。僕達が行ったら迷惑になるし」
「別に撮影邪魔しにいくわけじゃないからいいじゃん。たまたま一緒になっただけだよ。たまたま」
 カルマは悪魔っぽい笑いを浮かべた。こうなったらもう止められない。
「決まりだね」
 カルマはさっそくスマホを取り出してE組の仲間にメッセージを送った。すると、返事が次々と来た。

(倉橋)卒業旅行、行こいこ〜
(矢田)E組卒業してからなかなか全員で集まれなかったし、うれしいよー
(岡島)南国いいねえ! 大雪忘れられるわ
(村松)忙しくなる前に、どこか行きてぇと思ってたんだよなぁ
(吉田)行こうぜ卒業旅行! 
(イトナ)寺坂が滑り止め合格したから他はみんな大丈夫だろ。行こう
(寺坂)いちいち俺を底辺にすんな!

「ほら、みんな行きたがってる。決定だね」
 カルマはスマホの画面を渚に見せた。旅行の計画がE組の間であっという間に盛り上がっているのを渚も認めるしかなかった。
「しょうがないなあ、もう」
 そこに新たなメッセージが入った。それを見るなり、カルマは舌打ちした。
(磯貝)卒業旅行、すごく行きたいな。でも、まだ入試の結果もわからないし、どうしよう

「磯貝のやつ、なに弱気になってんだろ…あいつの実力ならぜったい受かってんのに」
「うーん…多分だけど…磯貝君は旅行代のことも気にしてるんじゃないかな」
「あーそっか、相変わらず貧乏だもんな…賞金も俺たちと同じ額しか受け取ろうとしなかったし」
 カルマのスマホが振動した。中村からのメッセージだ。

(中村)格安航空券と宿の手配はまかせて! 海外の知り合いに取ってもらうから安く済むよ
(中村)ギリギリまでキャンセルOKだから、国公立受験組も申し込んじゃって大丈夫だよん

 事情を察した中村からの絶妙なアシストだ。
「さすが、中村は仕事早いなぁ。これで磯貝も来れるよ。渚も文句ないっしょ?」
 渚は浮かない顔で答えた。
「……僕が茅野のスケジュール言っちゃったからみんなで押しかけることになって、責任感じるよ」
「そこ心配無用。茅野ちゃんのスケジュールは、今本人から直接もらったから」
「え!?」
 カルマは茅野からの返事を渚に見せた。

(茅野)その頃、撮影で日本にいないんだ。ゴメン。
(茅野)一緒に旅行行きたかった! 残念だよー
(カルマ)『ゴールドシティ』だよね? 製作発表のニュースこないだ見たよ。すっかり国際派女優だね。
(茅野)そんなそんな、とんでもない。
(カルマ)ロケ地、東南アジアだってね。どこでロケするんだっけ?
(茅野)プノン国の世界遺産に行くんだよ
(カルマ)その寺、うちの親も行ってたけど水にあたって大変だった。くれぐれも気をつけてね~
(茅野)うん、ありがとう。みんなによろしくね!

「ほら、これで茅野ちゃんから直接ロケ地と時期確認したよ。渚がバラしたとか関係なくなったし、心置きなく旅行楽しもうよ」
 カルマはニヤニヤしながら立ち上がった。
 計画を立ててから三十分足らずで話をまとめたカルマの手腕に、渚は舌を巻いた。 
「気を遣ってくれてありがたいけど、大人数で押しかけちゃってほんとに茅野喜んでくれるかなあ……」
「もちろんだって。じゃあさ、茅野ちゃんに撮影スケジュールと宿泊先聞いといて」
「そんなの無理だって!」
「あはは、だよねー。俺だってそこまでずうずうしくは聞けないわ~。みんなで押しかけること、茅野ちゃんにはサプライズにするから黙っといてよ」
 悪魔的な笑いを残して、カルマは店を出ていった。
 ――相変わらずだなあ、カルマ。でも、ほんとに茅野に悪影響にならないかな……。
 渚は不安を抱えたまま、ファミレスにしばらく居続けた。

 

トップへ
トップへ