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■ #1 ■

 きらびやかなネオンに彩られた深夜の繁華街は、不吉な色に染まっている。建築基準法を無視した小汚い建物がひしめく一角に、所狭しと集まった白黒の車。その頭部の赤い光が回転するたび、制服の男たちの深刻な横顔が浮かび上がった。

 興味本位のテレビカメラが彼らにさらなる接写を試みたその時、居並ぶ警官の中から、煙草を咥えたトレンチコートの男が割って出る。その男の眉間に浮き上がった皺をも映す高精度レンズに、剣呑な表情が大写しになったと思った次の瞬間、ぶ厚い手のひらが画面を覆った。

「刑事さん、これじゃ映せないじゃないですか」

 番組リポーターと思しき声が抗議する。

「映すな」

「報道の自由を侵害するんですか?」

「事件現場に野次馬がいるのは迷惑なんだよ」

 レンズを覆う手のひらの影。その向こうから聞こえる不機嫌そうな刑事の声。

「撮影許可はとっていますよ。ホラ、これが許可証」

 抗議している側の声が変わる。リポーターでは埒があかないと、もっと上の人間が出てきたのだろうか。しかし、それはむしろ逆効果だったようだ。いささか横柄な物言いに、苛立ちを増した刑事の声が応じる。

「現場の指揮権は俺にある。安全なところで紙切れ一枚にハンコ押して、カメラ越しに見物しているだけの奴らの許可なんぞ」

 おそらくは非キャリアの現場叩き上げ組なのだろう。中年刑事の口から、自分の所属組織に対する不穏な発言が出そうになったのを、リポーターがそうとは気づかず遮った。

「あっ! あそこ!」

「おい!」

「カメラ回して!」

 リポーターの言葉を待つまでもなく、刑事の手のひらばかりを映していたカメラが一転、ネオンの残像を引きながら空を彷徨い、事件現場であるビルの屋上を映し出したところで静止した。

『来ました! 出ました!』

 ぼやけたカメラのピントが合わせられた、その先。

 そこには、二つの影がある。

 カメラに遅れること数秒――ようやく屋上に到着したスポットライトの光が、摩天楼を背に立つ人影の正体を浮かび上がらせた。

 光の真正面に立つその一人は、白い。大きな金のリボンがついた丈の短いセーラー。その胸元には、正義を示すアルテミスをかたどったアルテミス学院の校章<エンブレム>が、誇らしく輝く。

 その影に隠れるようにして立つもう一人は、黒い。細長い銀のリボンを引き立てるピークドラベルのブレザー。その胸元には、貞節を示すアルテミスをかたどったアルテミス学院の校章が、静かに控える。

 凶行に震えていた夜の街に、うら若き二人の少女の声が凛々と響いた。

「陽光の申し子、ライトニングセーラー!」

「月影の使者、ブレザーシャドウ!」

「愛と正義の名の下に、悪を断つ!」

『でっ、出ましたあああああっ! ライトニングセーラーにブレザーシャドウ! 歴代ヒロインの中でも、屈指の名コンビ! 今日も息の合った登場です!』

 カメラの外から、歓声が聞こえる。直後に先ほどの中年刑事の怒号。どうやら、歓声をあげたのは、厳格であるべき警官たちだったようだ。

「今日もファンがいっぱいよ。嬉しいわね、シャドウ?」

「おしゃべりしている暇はないわよ、ライトニング」

 指向性マイクが、二人のヒロインたちの会話を拾い上げ、カメラの向こうへ届けた。いつも明るくお人好しなライトニングセーラーと、クールで何を考えているのか分からないブレザーシャドウ。歴史あるヒロインネームの三代目であり、視聴者投票ではダントツの一・二位を独占する、人気コンビである。

 二人の出現を待っていたかのように、その背後から爆音が鳴り響き、巨大なヘリが空中に舞い上がった。

『しまった! 犯人たちは、ヘリで逃走する模様です! 果たして人質は無事なのでしょうか……』

「きゃーっ! やだ、何、この風!」

 ヘリのプロペラによる爆風でめくれるスカートを思わず押さえるライトニングセーラーとは対照的に、ブレザーシャドウはその黒髪とスカートをされるがままになびかせている。仮にスカートがめくれても、下にスパッツをはいているのだから問題はない。そもそも、そのスカート自体が、ちょっとやそっとでは完全にはめくれ上がらないように設計されている。しかし一応は、一部男性視聴者の期待に応えて、カメラは彼女らの足下から太ももにかけてを舐めるように映し上げた。

「無駄口をたたいている暇はないようね」

「そ、そうよね。スカートがめくれても、大丈夫!」

 カメラの動きまでは知らないブレザーシャドウとライトニングセーラーが、お互いを見て頷く。刹那、瞬きするその間に、彼女たちの姿がその場から消失する。ヒロインを捜して彷徨うカメラは、既に上空高く舞い上がったヘリの腹をとらえたところで止まった。そこにはヘリの下部両側にあるランディングギアにつかまってぶら下がる、ライトニングセーラーとブレザーシャドウの姿がある。

『出たあ! ブレザーシャドウの瞬間移動! 一方ライトニングは、稲妻のごとき大ジャンプ! さすがはトップヒロインの二人です! おっと! 犯人が、何かを取り出しました……機関銃! 機関銃です! ライトニングセーラーにブレザーシャドウ、大ピ――――ンチ!』


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