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■ #3 ■


 地に足がついていないような心地で午後の時間を過ごし、本日最後の授業も終了。

 恐れと喜びと怖さと嬉しさと何かよくわからないものがとにかくいろいろないまぜになった、複雑に浮かれた歩調で教室を出て生徒会室に向かうマヨを、呼び止めた教師が居た。

「神無原」

「あ、早百合<さゆり>先生!」

 保険医を務める教師。フルネームで、國枝<くにえだ>・ジュリエッタ・早百合<さゆり>。

 金色にうねる髪は後頭部なかほどで一つにまとめられ、白衣に白いストッキングに白いハイヒール。単純に『白衣の天使』と呼ばれるのを阻むような、端正な顔立ちを覆う奇抜なフレームの眼鏡。モンゴロイドの血など一滴も流れていそうもない彼女だが、一応、半分は日本人らしい。

 この学園において、マヨにとっては数少ない、心許せる教師だ。緊張していた顔を弛緩させるマヨに対し、早百合は常にない固い表情のまま、話しかけた。

「日永に呼ばれたんだって?」

「え? は、はい! そうなんです」

「用件は何だった?」

「これから、聞きにいくんです」

「ああ、そうか」

 聖母とはかくやという外見でありながら、少しぶっきらぼうに話すのが國枝の特徴だ。彼女もまた、このアルテミス学院の卒業生らしいのだが、話し方だけ聞く分には、賭場にいる鉄火肌の姉御といった印象。以前マヨが早百合にそう言ったら、「在学中は誰よりもお嬢様っぽかったんだけどねえ」と、いたずらっぽく笑っていた。

 しかし今日の國枝は、いつもの余裕をどこか欠いた様子で、マヨの答えに対し、わずかに眉をひそめ、マヨの周辺の空間に視線を彷徨わせた後、問いを重ねる。

「橘は一緒じゃないのか?」

「……一人で、来て欲しいと言われたので」

 次々浴びせかけられる質問に、マヨは、なんだか少し、イヤな感じがした。

 いつもと違う様子の國枝に対する、不安。

 いや、不安、というより、不快感、というものに、それは近いかもしれない。

「良かったら、私も一緒に行っていいか?」

「えっ?」

「いや、その。私も、少し生徒会室に用事があってね」

「一人で来て、と言われたので」

「でも」

「大丈夫ですから!」

 いつもの國枝らしからぬ、執拗な親切の押し売りに、マヨは思わず強い拒否の感情を見せた。そして、直後にそれを取りつくろうように、「心配してくれなくても、別に、本当に、大丈夫ですから」

 そう言って、慌ててその場から駆け出した。

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