ジャンプ×ノベル JUMP j BOOKS

Webノベル JUMP j BOOKSの小説を無料公開!!

Webノベル Webノベル一覧

12/22

#1#2#3#4#5#6#7#8#9#10#11#12

  

■ #8 ■


「ねえ佐江島さん、聞きました?」

「……聞いてない」

 由井の配属以来もはや日課と化した会話のイントロに、ほとんど無意識のまま返事をしながら、佐江島は夢の世界から帰還した。

「今度、死ぬらしいですよ」

「ほー」

 いっこうに進まない書類仕事を相手どり、睡魔との戦いに苦戦していた佐江島である。由井の振りをもっけの幸いとばかり頭を上げ、両手をあげて大きくアクビをした。

「で、どこの政治家秘書だ?」

「ダークカラードですよ」

「今度はどういう『シナリオ』だ?」

「察しが良くなってきましたね」

 佐江島の向かいの席に座っている由井は、キャリア出身だけあって書類仕事を得意としている。本人に言わせれば、「書類仕事“も”得意としている」

 佐江島とは対極的に、紙の書類は既に片づけ終え、今はノートパソコンに向かってカタカタと軽快にキーボードを打ちこんでいた。

「おい、で、どうなんだ」

「今日は食いつきがいいんですね」

「暇なんだよ」

 机上に山積みにされた書類の束がそこには存在しないかのごとく、佐江島は堂々と言い切った。佐江島をにらみつける刑事部長をチラリと確認し、由井は声のボリュームを下げる。

「三代目のライトニングセーラーとブレザーシャドウがついにダークカラードにやられましてね。そこに颯爽と登場するのが――」

「警察か」

「違うって分かって言ってますよね? 四代目のライトニングセーラーとブレザーシャドウです」

「ふん、古くせえ展開だ」

「そうですか?」

「今までのヒーローをこてんぱんにやっつける強敵が出て来る。ピンチ! どうなる!? ってところで、そいつを簡単にあしらうニューヒーロー登場。ガキども大熱狂、って寸法よ」

「佐江島さんも、熱狂してきた子供なわけですね」

「……別に、そういうわけじゃねえよ」

 佐江島はほったらかしにしていた机上の書類を急に手に取ると、いかにも熱心げにふむふむと読み始めた。が、すぐに放り出す。

「ガキはいいよな。正義の味方はカッコイイと単純に憧れてりゃいいからよ。実際の警察なんてものは書類整理に追われる公務員で、人気のヒロインは作り物だ」

 そう言って伸びをする佐江島に、ノートパソコンに目を落としたまま由井が応える。

「いいじゃないですか。社会というものを成り立たせているのは結局、そういう共同幻想に過ぎないんです」

「それで?」

「言ってみただけです」

12/22

新刊情報 発売スケジュール

読者アンケート

今後の予定

WebノベルWebノベル一覧

このページのトップへ
このページのトップへ
JUMP j BOOKS 20周年
JUMP j BOOKS 20周年 JUMP j BOOKSについて
©SHUEISHA Inc. All Rights Reserved.