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■ #11 ■


 ――停止。再起動。します。

 再停止。

 再起動。

 起動できません。

 再停止。

 再停止。再起動。再起動。再起動。規定再起動回数を超過しました。これより緊急時自己防衛プログラムを起動します。自己防衛プログラム起動後は、二十四時間の間外部入力を受けつけなくなりますが、よろしいですか。Y/N。入力がない場合、プログラムは五秒後に自動的に開始します。四、三、二、一、


「あ、あああああああああああっあああああああっあああああああああっああいいいいっとおおおおおおおおおおおおっっ」


「せせっっせせせせせせせせせせせせせせせせせせせせせせいいいいいっぎいいいいいいいいいいっついいいいいいィィィィィィィィ!」


 大音量のスピーカーから、コントロールを失って流れ出るヒロイン二人の絶叫は、哀れな獣たちの断末魔を容易に掻き消した。

 惨劇は、遥か昔に閉園したその遊園地の、『にこにこセンター広場』で行われていて。

 佐江島をはじめとした警察官も。

 兼森が意気揚々と引き連れてきたテレビスタッフも。

 元は何かの施設だったらしい瓦礫の陰で。

 暴風雨に怯える羽虫のように身をひそめて。

 それを、見ていることしかできない。

 佐江島の大嫌いな、だがやらねばならない、ヒロインアピールのための警察出動。打ち捨てられた見晴らしのいい廃遊園地で、警察を翻弄する爆弾使いのテロリストを、次々に逮捕する、という筋立てだ。古い遊具が爆破される中を颯爽と駆け抜けるヒロインの姿は、さぞや高い視聴率を獲得するだろう。

 計算に入れていなかったのは、廃遊園地の売店まわりを住処としていたらしい、野犬たちの存在だ。下見の時には隠れていたのかもしれない。放送前の起爆テストによる爆発音に驚いたのか、低い唸り声と共に牙をむき出しにして現れた、首輪をしていない獣の群れ。彼らに動揺した四代目ライトニングセーラーとブレザーシャドウは、どうにか制御下においていた強化制服の、たがを外した。

 人のコントロールから外れた強化制服のオートパイロットシステムは、過稼働と停止、再起動を繰り返した後、規定の再起動回数制限超過により緊急時用の自己防衛プログラムを発動させる。

 彼女たちを守るためだけに存在する、過剰で、身勝手な、自己防衛プログラム。

 動く物全てに対して動かなくなるまで攻撃を仕掛け。

 目に映る物全てを破壊する。

 彼女達にはそんなつもりは無かったのだろう。それを発注した大人にも。

 幾多の野犬の、返り血で染まった彼女たちの姿を見て、ようやく気づく。

 それは、彼女たちを、停止不可能な、一対の凶悪な兵器に変貌させるプログラムだったのだ、と。

 しかし、世の中というのがいつだってそうであるように――

 ――気がついた時には、もう、手遅れだ。

 飼い主を失った犬たちが、自らのナワバリを主張したばかりに生きる権利すら奪われていくのを。佐江島たちはただ、恐怖と共に見ていることしかできなかった。

「や、やっぱりまだ、不十分だったんだ」

 兼森が、震えた声で言った。

 それを耳にとめた佐江島は、兼森の胸ぐらを掴む。

「どういうことだ? 暴走するのが、分かってたのか?」

「だ、だって。同じ最新型を既にダークカラードは着こなしているんだから、もう大丈夫だろうって……どうしても着たいって…………だから、僕はここには来たくなかったのに! お父様に見せるための写真を撮れときたもんだ! これだからわがままなお嬢様の面倒を見るのはイヤだったんだ! なのに!」

「てめえの愚痴はどうでもいい! 暴走するような危険なしろものを、分かっていて小娘たちに着せたのかって訊いてんだ!!」

「そそそそそ、そんなこと言ったって……無理をしなけりゃ……事件さえ起こらなければ、問題はなかったんだ!」

 兼森が絶叫する。佐江島が怒鳴り飛ばす。

「なんのためのヒロインなんだよ、馬鹿野郎!」

「佐江島さん、こっちに来ます!」

 由井の叫び声に佐江島が目をやると、哀れな獣達を屠る作業を終えたライトニングセーラーが、こちらへ向かって歩いて来ていた。その後ろから、ブレザーシャドウ。

「ひ、ひいいいいいい!」

 パニックになった兼森が、ライトニングセーラー達とは逆方向へ走り出す。

「チッ……」

 佐江島は、仕方なく懐から拳銃を取り出した。

「画面に迫力が出るから」

と言われて渋々携えて来たものだが、まさか、こんな形で役に立つとは。

 パン!

 佐江島が銃を構え終えるよりも早く、乾いた発砲音が空気中に響く。

 撃ったのは、由井だ。

 ライトニングセーラーは、ただ煩わしげに右手を払っただけで、無傷。

「おい、まだ撃つな! まずは威嚇を……」

「今の見たでしょう! 威嚇なんてきく相手じゃないんですよ!」

 そのまま由井は二発、三発と発砲する。が、ライトニングセーラーは、小バエを追うよりも容易に、それを払いのけた。一方、ブレザーシャドウはその場に立ち止まり、右腕を構える。それに気づいた佐江島が、由井の体を地面に引き倒す。

 ――――ッバヅッ――――

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