小説テーマ部門 金賞

  • コロナ・サムズアップP.N. 森本市夫
    あらすじ 「わたし、泣きたいの」。幼なじみの内田コロナの突然の宣言に、小林ショウタは泣かせるプランを考案するも不発。ショウタはコロナの宣言に、彼女の過去が関係していると考える。そんな中、ショウタはコロナにハメられ学園祭の実行委員に就任するが…。
    講評 軽妙な会話の掛け合いを通してキャラクターを描けていて、読者を物語に引き込む力があった。キャラクターのバックボーンもきちんと作品の肉付けに役立てており、伏線の張り方や、全体の構成など、短編ながら飽きさせない工夫が散りばめられているのも好印象。

小説フリー部門 銀賞

  • breakroid!P.N. 羊山十一郎 あらすじ 疫病神と呼ばれるアイドルマネージャー・熊谷遼平は、開発中の少女型ロボット三体と出会う。それぞれ鈴夜、姫乃、桜と名付けられたロボットたちと同居生活を送りながら、熊谷は彼女達をアイドルユニット『ブレイクロイド』としてプロデュースすることに……。 講評 アイドルとロボットというトリッキーな組み合わせのアイデアに、細かな描写や小さなエピソードの積み上げで説得力を持たせつつ、この企画でしか作れないドラマを盛り上げることに成功していた。キャラの立ったヒロインたちが可愛く、主人公も好感度が高かった。

小説フリー部門 銅賞

  • 声優学校の覇王P.N. 水島崚 あらすじ 高校2年生の松原秀丞は、中学時代のクラスメイト・六ツ瀬円に懇願されて、声優学校の生徒たちの前で、人気ライトノベル作家・武羅怒ィメアリーのふりをすることに。その翌日から秀丞は、仕事を得たい声優の卵たちによる、猛烈なアタックを四六時中受けることになり……。 講評 手を変え品を変え主人公を篭絡しようとするヒロインたちの策謀がコミカルであり、主人公の置かれた状況の羨ましさもあって、読者を楽しませようとするサービス精神に溢れた作品だった。題材に対するリサーチや、山場を作るための構成意識を深め更に上を目指したい。

小説フリー部門 特別賞

  • 夏に澄む少女P.N. 亜達ノコ あらすじ 高校生・友哉は実在しない人影“白昼夢”を錯覚することがあった。夏休み、田舎に帰った友哉は、それまで見るだけだった”白昼夢”に追いかけられる。それを助けてくれたのは一人の巫女。彼女との不思議な出会いから、ひと夏の冒険がはじまった。 講評 テキストを書く力が高い。情緒にあふれた雰囲気を伝えてくれている地の文と、キャラクターのかわいらしさを描く会話のバランスが見事。一方、物語の構成に関しては課題が残る。読む側を意識した物語の盛り上げ方を探っていってほしい。

小説フリー部門 最終候補作品

  • ラピスラズリP.N. 武州青藍 あらすじ 高校生・上杉六花は何度捨てても手元に戻ってくるラピスラズリの入った小瓶を押し付けられてしまう。その日から彼女は謎の少年の幻覚を見るようになり、その度にさまざまな不幸に見舞われることに。同級生の葉桐昴と共になんとか瓶を捨てようとするが――。 講評 主人公の少女が共感を誘うキャラクターではなく物語に入り込めなかった。少年の霊の存在が登場人物らに与える影響が実質的にはなく、ギミックとしても弱い印象を受ける。しかし登場人物の心情や場面の描写は丁寧に書かれており、投稿者の筆力の高さを感じた。
  • 魄霊蒐集官 鷺崎P.N. 江西哲嗣 あらすじ 茨城県のはずれ、そこではかつて、少女が頭部を持ち去られて殺害されるという事件が起こっていた。少女の霊が出るという噂話を聞きつけてやってきた若者たちは、謎の失踪をとげ、翌日少女たちと同じように頭部を持ち去られた遺体となって発見される。捜査は難航するが、総白髪に杖をついた女・鷺崎が現れ事件の様相は一変する。 講評 主人公・鷺崎の、記憶に残る人物描写が良い。魅力的なキャラクターメイキングの力を感じた。物語の後半にかけて、盛り上がりよりも事件を収束させることに意識が向き、キャラクター描写がおろそかになったのは残念。読者を惹きつけ、ページを繰らせるものは、魅力的なキャラクターにあることを意識して次作への課題としてほしい。
  • ライン・メイカーズP.N. 白笹那智 あらすじ 魔物と人間、それぞれの領域が「人界線」と呼ばれる山脈で分けられた世界。アルケミストのアベルは謎の少女騎士レナエルに脅され、“禁足地の魔獣”を追う調査団への参加を強いられる。しかし、それは世界のあり方を変える大事件の始まりにすぎなかった。 講評 魅力的な世界設定を練り上げられていたが、小さな山場作りの繰り返しに終始して物語全体で大きな盛り上がりを作れていないのは残念だった。読者により大きいカタルシスを与えられるよう、ストーリー全体に一本の道筋をつけることを意識してほしい。
  • World Wide Witchcraft Entertainment -WWWE-P.N. 雪村勝久 あらすじ 魔法と科学が共存する世界。陰陽師の家系の子・御門貫晴信は、高校で部活に入る必要に迫られ、魔法とプロレスを融合させた競技WWWEに目を付ける。友人で女性アレルギー持ち魔法使いの雅史、隣人で陰陽道本家の当主・怜と共にWWWE部を作ろうとするが…。 講評 魔法とプロレスを組み合わせた架空のスポーツというアイデアが魅力的だった。一方で、ストーリー後半での悪魔の登場など、メインアイデアから物語の焦点がズレていったのが残念だった。また、多数のキャラを動かす時は、それぞれのドラマを書き洩らさないよう注意を。

小説テーマ部門 最終候補作品

  • 初恋の実P.N. 悠木友貴 あらすじ 魔法使いが暮らす街・ポレロに住む子供たちは恋を覚えたときに流す涙と「初恋の実」の種を交換してもらい、それを大切に育てるしきたりがあった。ある日魔法使い見習いの少女・アイルが「初恋の実」を交換したことで、彼女を取り巻く関係は一変してしまう。 講評 涙というテーマを活かす「初恋の実」というアイディアはよかったが、登場人物たちの行動や発言、物語の展開に整合性がなく、読者を置いてきぼりにしてしまっている。独自の世界観は魅力的だと思うので、読み手の目を意識した作品作りを心がけてほしい。
  • ティアーズ・オブ・クラウン!P.N. りきまる あらすじ 芸人、シド・ザ・キッドは週に一度の孤児院のステージでつまらないギャグを連発し、子供たちに馬鹿にされる毎日。そんな中、心に傷を負った少女・ニコが孤児院にやって来る。シドはどうにかして彼女を笑わせられないかと苦心するが――。 講評 登場するキャラクターたちは、目新しさを感じる造形ではなかったが、魅力的に書かれていた。展開がご都合主義な為に読者がオチを予想してしまえるのは残念。冒頭の言葉選びやセリフの言い回しなどを駆使して印象に残る場面を描けているのは良かった。
  • グッドマンP.N. 新藤広釈 あらすじ 「グッドマン」と呼ばれる無人兵器が跋扈する荒廃した世界。日銭を稼ぐギャング団のスカーレット・キングのボスであるファルは、中央人類帝国より依頼を受け、謎の少女・キリンを追う。やがて彼らはグッドマンと世界の秘密に触れることになり――。 講評 ストーリーの展開や人物や場面の描写、世界観の設定などにも粗が多く、テーマとの関連性も薄かった。ページをめくる度に物語が進む展開の早さと、ストーリーを遠くまで投げる馬力は感じたので、ひとつひとつの場面をより丁寧に書くよう心がけてほしい。
  • 救済の神様P.N. 水城進 あらすじ 門原恵美は、毎日同じ空間に迷い込む夢を見る。それは名前のない少年と共に、彼を追い回す恐ろしい存在である「グルグル」から逃げまわるというものだった。恵美は夢の中で謎の女性・カラスと出会い、この世界の秘密、そしてグルグルの悲しい正体を知る。 講評 物語が何を課題としていて何を解決したのかが示されていないために、読者を選ぶ内容になってしまっている。グルグルの設定やカラスのキャラクターなど、作品の魅力になりうる要素は持っているので、それらを前に出す作品作りを心がけてほしい。
  • 死神だって死んでみたい―イケガミさんは自殺志願者― P.N. 浅田浅彦 あらすじ 死神のイケガミさんは自殺願望を持つが、不死であるために死ぬことができない。秘書のココロはイケガミさんが自殺を試みて失敗する度に後片付けをさせられ、それを同僚に愚痴る毎日。そんなある日、彼らは人間界で起こった無差別殺人事件の調査を命じられる。 講評 コミカルな導入部とキャラクター造詣は良かったが、中盤からの展開には唐突さが目立った。イケガミさんの過去や内面の掘り下げを丁寧に書くことで、彼を補佐するココロの魅力も伝わりやすくなったのではないかと思う。
  • その川のほとりP.N. 七桜銀魚 あらすじ 親より先に死んだ子供が集う、賽の河原。冥途の獄卒鬼タンニの仕事は賽の河原で石を積む子供の邪魔をすることである。だが、人一倍やさしく涙もろい彼には不向きな仕事で、愚痴をこぼす毎日。ある日、子供しか来れない河原に九十八歳の老人がやってきて…!? 講評 死後の世界を、現実世界の公務員のように描くという発想を評価。鬼などの各キャラクターも、感情移入しやすいように出来ており魅力的で、“涙”というテーマに対して正面から向き合っているのも好感度大。ただお話としては、“良い話”で終わっており、展開が読めてしまう。エンタメとしてどこか一部分でも「読者を驚かせる」「予想を上回る伏線や仕掛け」を組み込んで欲しかった。


今回もたくさんのご応募どうもありがとうございます。

応募総数353本のなかから、今回はテーマ部門より金賞1名、フリー部門からは銀賞、銅賞、特別賞の各1名とあわせて4名の方を賞に選出させていただきました。多くの才能とご縁ができることに、編集部一同喜びを感じております。受賞者の皆さん、おめでとうございます。授賞式でお会いしましょう。

今回目立ったのは、幾度となく私たちの小説賞にご応募いただいている常連さんたちが、確実なレベルアップをされて受賞の栄誉を勝ち得たことです。誰しもが最初から珠玉の作品を生み出せるわけではありません。試行錯誤と研鑽を経て、賞をつかむ人がほとんどです。賞を逃した投稿者の皆さんも、プロを目指すのであれば、作品を作り続けてください。上達のコツは、一度書き始めた物語は、必ず最後まで書き終えること。途中で止めることなく、自らの生み出したキャラクターと向き合い、語り終えた物語の数を重ねるほど、あなたの経験値が高まるはずです。がんばってください。

リニューアルした小説賞では、ホラーや恋愛など、ジャンルに特化した入口を増やしました。ジャンプ・ノベルはマンガと小説の狭間にある、両方のいいとこどりができる面白いレーベルと自負しています。マンガ好き、小説好き、そして物語を作るのが大好きなあなたのご応募を、編集部員一同お待ちしています。

編集長 島田久央




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