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ジャンプ小説新人賞'2018 最終結果発表


  • 小説テーマ部門金賞 賞金50万円 『恋愛変』P.N.如月新一 あらすじ 容姿端麗・成績優秀の宇佐美百合はモテるのだが、恋愛にまるで興味がない。とある理由で将来を心配した教師の九条から文芸部の水森は、宇佐美と共に恋愛相談を受け付けることを命じられる。しかし恋愛相談のはずが、ある時奇妙な依頼が舞い込んでくる。 講評 主人公が動機、ヒロインがトリックの解決を担うという役割が明確かつ、ライトミステリとしての面白さもしっかりあった。さらに話の中で『地獄変』のモチーフを活かしつつ限られた枚数で矛盾なくまとめており、キャラ・ストーリー・展開ともに文句なしの完成度だった。
  • 小説テーマ部門銀賞 賞金30万円 『彼女は謎をつくりたがる』P.N.真紀涼介あらすじ 高校一年生の小塚永太と時川真理乃は幼馴染だが、真理乃には「謎を作りたがる」という変わった趣味がある。ある時、不良生徒が入り浸る書道部の部室にいたずらがあり、部員が室内に入れない状態が発生。現場は密室となっていたが、永太は真理乃の悪い癖が出たと思い…。講評 ヒロインの「謎を作りたがる」という設定が強く目を引いた。また主人公とのやり取りも微笑ましく、爽やかな青春ミステリとして後味の良い作品であった。ミステリ要素もこの分量にあうようにうまくまとまっていたが、欲を言えばラストにもう少し意外性がほしいところ。
  • 小説フリー部門銅賞 賞金30万円『ゲームショップ ポーン&クイーンズ』P.N.雪村勝久あらすじ ゲームオタクである権一は、ゲーム仲間の老人・寅二から、ゲームショップ「ポーン&クイーンズ」の店番を任される。ともに店番をするのは、寅二の孫である梨矩・はじめ・十楽の三姉妹。幼少期は権一と楽しくゲームをしていた姉妹だが、今ではそれぞれが悩みを抱えていて……。 講評 ヒロインたちの苦悩を、ゲームという娯楽を通じて主人公が解消していく、というコンセプトが魅力的。三姉妹と主人公がゲームをプレイしているシーンの生き生きとした描写は臨場感にあふれ、ゲームに詳しくない読み手にも楽しさが伝わる。後半の展開をもっと盛り上げる工夫を。
  • 小説フリー部門特別賞 賞金10万円『明け方のブルイヤール』P.N. 碧月 杏あらすじ山奥にある別荘地。何年も空き屋になっている『ブルイヤール』という名前の屋敷がある。中学生・朝香は、その家に引っ越してきた少女・菜々子と出会う。2人はすぐ仲良くなり一緒に遊ぶようになった。異変は、菜々子の家で見つけた万年筆を手にしたことから始まった。 講評 繊細な女性キャラクターの心情描写、目に浮かぶような山に住む人々の情景描写は応募作の中でも群を抜く。課題は万人に伝わるエンターテイメント性ある企画、『ベタ』を書けるかどうか。今後の伸びしろに大きく期待をして特別賞とした。書くことと読むことを続けてほしい。

次作に期待!! 最終候補作

小説フリー部門

  • 『喫茶アリスの大正怪談』P.N.三本矢まういあらすじ 大正9年、帝都。まだ世間がかろうじてあやかしを覚えていた時代。丸の内の片隅に建つ純喫茶「アリス」は、裏であやかしに関する事件の解決を請け負っていた。帝都最後の陰陽師・茜は、「退治」ではなくあやかしとの「対話」によって事件に向き合っていく。 講評各篇でキーアイテム的に登場する料理の描写が見事だった。「泣かせ」のドラマを見せるという作品コンセプトを守ろうとしている点は評価したいが、1話と2話の印象がほぼ同じになってしまったこと、茜のキャラを深く掘れなかったことなどがもったいなかった。
  • 『シツレイ』P.N.四ノ宮雅弥あらすじ高校の入学式から原因不明の体調不良が続く伊月。その原因が自分の守護霊が失われた状態「失霊」のせいだと、クラスメイトの霊能力者・志恩から告げられる。伊月は彼女に代理の霊をつけてもらったお礼に、霊能力者の仕事を手伝いつつ守護霊失踪の理由を探っていくことになる。講評人間には誰しも守護霊がついており、それが失われる「失霊」という現象はアイディアとして面白かった。しかし、展開の組み立て方が甘く、キャラの掘り下げが不十分だったため、後半は失速気味になってしまった。アイディアを活かしきれていなかったのが残念。
  • 『金魚姫』 P.N.ニルあらすじ 鎖国が解かれ、貿易が活発になり始めた日本。宿屋で働く信介のもとに、ある日奇妙な二人の旅人が訪れる。観善と涼夜と名乗った彼らは喋る日本人形、金魚姫とともに、この町で起こる奇妙な悪戯騒動を収めにきたらしいが、そこには異形のものが関わっていると告げる。講評 おどろおどろしいシーンの描写のうまさや、個性的な3人のやり取りに作者のセンスを感じた。歴史ものとして書いている以上は時代考証をしっかりする必要があるが、そういった部分の調査は甘く、作品全体のディテールを作り出す作業にも注力してもらいたい。
  • 小説テーマ部門

  • 『死に証人 灯台下暗し事件』P.N. 理あらすじ 幽霊が見える特殊清掃員、御子神大和はアパートで起きた殺人事件の現場の清掃中に殺害された女子大生、七海と出会う。七海からの頼みで、七海を殺害した犯人を捕まえることを大和は約束した。後日、現場に戻った二人は七海の部屋の前で立ち尽くす男と出会う。講評特殊清掃員と幽霊の女の子のコンビは面白く、凄惨な清掃現場の描写にも筆力を感じた。一方で特殊清掃員という珍しい職業の「面白み」や幽霊の設定部分については触れられていないところも多く、設定・キャラクター・ストーリーがうまくかみあっていないと感じた。
  • 『殺してくれるよ』P.N. 眞村六郎あらすじ 公立中学校の放課後の教室で刺殺体が発見され、遺体の隣には浅井省吾が包丁を持ち、返り血を浴びた状態で立っていた。警察が到着するまで、担任の若松浩二が浅井から話を聞くも浅井は余裕の態度で「なぜ人を殺してはいけないんだ」と哲学的な抗弁を述べ始める。講評語り手が犯人というオチは扱いが難しいが、賛否はあったもののそこからのまさかのひっくり返しがあり、思わずだまされたと感じる内容だった。中盤以降は長尺で二人きりの会話が続き、場面転換がなかったため間延びしてしまっており、集中力がそがれるシーンもあった。 
  • 『嘘つきは本当のはじまり』P.N. 一ノ瀬ゆうきあらすじ スクールカウンセラーで『他人の心が読める』超能力者の速水の元に『嘘月』という渾名で敬遠されていた葉月舞香が訪れる。超能力を使って問題を解決することに後ろめたさを覚えながらも、葉月に超能力を駆使して悩みを引き出そうとするもなぜか葉月の心が読めず……。講評ヒロインの心が読めない理由は、読者が納得できるように練られた設定だと感じた。ただし、そこに重点を置きすぎたのか、その展開のためにストーリーやキャラが動かされていたように感じることも。作品全体として楽しめるような工夫がもっとほしい。

編集部講評

  • JUMP j BOOKS編集部 編集長 千葉 今回はテーマ部門で金賞・銀賞、フリー部門で銅賞・特別賞と4人の方々を選出させていただきました。『ミステリ』というテーマは枚数の制限もあり、なかなか手強かったかと思います。受賞した2作品は“謎”のサイズもキャラクター配置もムダなくまとまっていて、読後感が良いことが評価されました。フリー部門銅賞受賞作は、引き込まれるような迫力あるゲームプレイ描写が圧巻でした。特別賞受賞作は、中学生女子の心情描写のリアルさが突出していました。どちらもその人しか書けない“強み”が存分に生かされた作品だったと思います。
    編集部で開催している賞は、現在3つあります。ホラー賞、恋愛賞ではカバーできないジャンルで発揮される才能を探しています。ご応募、お待ちしています!
ジャンプ小説新人賞'2018
一次選考~最終候補作発表
ジャンプ小説新人賞'2019
(2019年10月31日締切)募集中!

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