 今年の最終候補作は改めて「いまこの時代に小説とは何か、何が出来るのか、ライトノベルと普通の小説とはどこが違うのか」等といったさまざまなことを考えさせられるものが多く、刺激的でした。
「逃亡船」神谷さん、13歳という年齢にしては文章もしっかりしています。ただ小説を書くのは、どんな天才でも13歳では無理です。それは社会と人間を知らないからで、いい小説は作者が社会と人間を知れば知るほど熟成します。いまこれだけ書けるなら焦ってデビューせずに、あと最低5年は待つことです、そのほうが傷つかずにもすむしいい小説も書けるでしょう。
「幸の日記」つたないですが素直でウケそうな要素も含んでいます。これは16歳。メロドラマを真正面から書いて好感はもてますがこれもやはり所詮16歳です。この世にそう多くの天才はおらず神谷さんも一月さんもその種の天才ではない。見よう見まねで優れたものを書いても続きません、まずは焦らず大人になりましょう。沢山本を読み、沢山経験をつみ沢山の人と会って。それが結局は一番早道なのです。
「鏡色の瞳」この5作の中では私は最高点をつけました。ただ2つのストーリーが混乱していて感動をそぎます。あと長すぎる、ムダが多すぎる、書きたい焦点がぼやけている。ピンポイントでストーリーを絞り込むため、もうちょっと短編の書き方を覚えましょう。この話は100枚あれば十分です。残りの50枚が冗長さを作っています。だが感覚はなかなかシャープで買えました。
森野さんの作品はゴシック・ロマンスですが、こういう作品はもっと色気がなくてはいけない。ボーイズラブにまでする必要はありませんが、登場人物が平板で、いわば「絵の下手な人が無理して好きなゴスロリを描いている」みたいな印象です。こういうものほど地力が大きく必要とされてきます。もうちょっともっともらしさと説得力と教養を身につけ、登場人物に色気がにじむようでありたい。まずは文章力と構成力をもっとつけるよう「文章の筋トレ」をおすすめします。
激論?の対象となった「ロマンチック・エゴイズム」思わず「撲殺天使ドクロちゃん」を連想したくらい無茶苦茶ですが、「結局この方向はこの賞のとるところではない」という結論になりました。が、もっとうまければ(爆)そんな選考委員の気持は吹き飛ばせたでしょう。こういうものもまた、普通以上に地力があってぶちかますのでなくては読んでいるほうが辛い。矢島さんにもひたすら筋トレが必要ですね。全体に「眼高手低」、意欲が先走って基礎力のない人が目立ちます。意外と小説は「文章の筋トレ」が必要なものです。沢山本を読み、文章を書き、勉強しないと結局小説にボロが出ます。促成栽培はないと思って下さい。まずはもっと本を読むことです。 |