――小説を初めて書いたのはいつごろですか? きっかけと内容を合わせてお聞かせください
たぶん、小学校の中学年のころに「この宝の地図をもとにお話を書いてみましょう」という授業があって、それで初めて書きました。内容は子供たちが冒険して宝を探すというものだったと思います。小説はもともと好きで読んでいましたが、特に書こうかなと思うこともなく中高生時代はゲームにはまっていたので、次に書いたのが受賞作の『そして龍太はニャーと鳴く』でした。
――ほぼ初めて書いた作品が受賞作だったということですが、なぜ受賞作を書こうと思ったのでしょうか?
当時自分のホームページを開設していて、そこでゲームや映画の感想をブログのような感じで書いていたんですよ。ただ、そこで書いていたものってノンフィクションばかりだったので、変り種としてフィクションのものも何か載せてみようかなという思いつきで書き始めたのが『そして龍太はニャーと鳴く』の原型でした。連載のような形で3回ぐらいにわけて掲載したんですけど...たぶんやりたいゲームが発売したとかだったと思うんですが...途中まで書いたところで放ったらかしになっていて。パソコンを買い換えるタイミングでデータの整理をしていたときに書きかけのこのお話を見つけて、途中のままじゃもったいないから完成させて賞へ送ってみようと思ったんです。
もともとウェブデザイナーを目指していたので、小説家になりたいという気持ちはあまりなかったです。小説はホームページのコンテンツのひとつという感覚でした。
――自身に影響を与えた作品のタイトルと、好きだった点をあわせてお聞かせください
子供のころに読んだ『ルドルフとイッパイアッテナ』という児童向けの作品がすごく好きでした。私は岐阜県出身なのですが、この作品って岐阜で飼われていた猫が長距離トラックに乗って東京に来てしまうという猫視点の物語なんですよ。だから地元の図書館でおすすめされていて、それを読んだのをよく覚えています。
猫の中にも世界があって、そこにドラマがあるんだという感覚はその本を読んで生まれたものなので、『そして龍太はニャーと鳴く』にも大きく影響を与えていると思います。
――『そして龍太はニャーと鳴く』やその後のシリーズでは霊を題材にして書かれていますが、何かそういった部分でも影響を受けていたものはあったのでしょうか?
日常と非日常が交わるお話が好きで、普通に自分が生活していて、こういう風に幽霊が関わってくると面白いかも、というのを昔からよく想像していたんです。だから幽霊とかを脅威として描くよりも、寄り添う友達みたいな存在として書きたいというのはありました。のちにノベライズを担当させていただくようになった『BLEACH』にもそういう部分があると思っていて、大好きな作品をノベライズできることになったのは嬉しかったです。
――小説賞に応募する以前、周囲の方に小説を読んでもらうことなどはありましたか?
なかったです。受賞した後に友達からどんな話を書いたのかと聞かれて見せたりはしました。「あれ(ホームページに載せていたもの)の続き書いたんだ!?」みたいな反応でしたね。他人の意見を参考にしないとかではなくて、自分にとっては作品の供養みたいな感じで小説賞に応募したので...せっかくだから誰かの目に触れてくれたらいいな、ぐらいの感覚でした。
原稿を送った理由が、週刊少年ジャンプがすごく好きというだけだったのですが、結果としてノベライズも担当させていただけるようになりましたし、この賞に応募して正解だったなと思っています。
――小説自体をほとんど書いてこなかったということですが、そこから受賞できるレベルの作品を書き上げることができた理由はどんなところにあると思いますか?
物語を書くということはなかったです。ただ、日常的にブログで文章を書いていたことが活きていたのかなとは思います。それと日記を小学校のころからずっとつけていて、今は箇条書き程度しか書いてないんですけど、昔は学校であったことも細かに書いていました。そういうところで自然とまとめる力や描写力は鍛えられていたのかもしれません。
あとは『ドラゴンクエストⅢ』でものすごくRPGにはまって、それぞれのキャラクターにストーリーやどんな人生がそれまでにあったのかなどを勝手に考えて、戦っているときもこういうふうに喋っているんじゃないかと想像しながらプレイしていたので、空想する力とかはそういう部分で養われたんじゃないかと思います。
次回更新は7月10日予定!!
大物漫画家に連続してイラストを描いてもらった経緯とは?
お楽しみに!!