――小説を初めて書いたのはいつごろですか? きっかけと内容を合わせてお聞かせください
元々映画が好きで、大学で映画サークルに入ってから暇なときにノートに手書きで脚本を書いたりしていたのですが、意識して小説というものを書き始めたのは大学三年の頃だったと思います。就職活動から逃げるように毎日数ページずつ執筆していました。
作品のジャンルはミステリで、様々な恐怖症を抱えた患者たちが入院する病院で起こる連続殺人に高校生コンビが挑む、みたいなストーリーでした。
――自身に影響を与えた作品のタイトルと、好きだった点をあわせてお聞かせください
僕が本格的に読書を始めたのは大学時代からで、国内外のミステリ作品全般は特に影響を受けました。ですが一番影響を受けたのはミステリではなく、『図書館の魔女』という魔法の類が出てこないファンタジー小説です。
この作品はとにかく人物や建物の造形などの描写が一つ一つ丁寧かつ的確で、その表現力や豊富な語彙量に驚かされ、小説における文章力というものを思い知らされました。それでいて物語も壮大なスケールで描かれ、謎解きもありバトルもありユーモアもありで、最後まで全く飽きることなく読めました。文量もかなりあって、読破するのにそれなりに体力が必要になりましたが、読み終えた後は「この作品と出会えてよかった」と心の底から感動しました。
――プロデビューを志したのはいつ頃からですか? 最初からプロ志向だったのか、何かのきっかけがあったのか教えてください
デビューを目指したのは、最初の質問で答えたように、大学三年生の頃でした。
自分の人間性と社会が合うかどうか不安に感じ、部屋に篭って仕事をする小説家ならばあまり人と関わらなくても済むかな、と現実逃避みたいな発想で小説を書き始めました。確かに小説が好きという気持ちはありましたが、どちらかといえばやはり人付き合いを避けたかったというネガティブな動機の方が強かったと思います。なので今でも自分が社会人であるという実感が湧きません。
――なぜジャンプ小説新人賞に応募しようと思ったのかを教えてください
この賞に応募した理由はとても単純で、僕が昔からジャンプ漫画が大好きだったからです。子供の頃から少年ジャンプは毎週欠かさず買っていて、ここでデビューすればあわよくばジャンプ漫画と関わる機会に恵まれるかなと思いました。
それと、応募するなら所謂ライトノベルと呼ばれるジャンルにしようと決めていたのですが、ジャンプ小説新人賞ならば、より少年漫画に近い作風を受け入れてくれるのではないかと考えたからです。実際のところ、目で見せる漫画と字だけで読ませる小説は違っていて、自分に求められる作品というものはややイメージと異なってはいましたが。
――ジャンプ小説新人賞に応募して得られた経験などはありますか?
僕はこの賞に計三度応募していて、最初の作品は一次選考を通り、二作目は最終選考まで通り、そして三作目で受賞することができました。そうして応募回数を重ねていく内に、この賞が求めているものを段々と理解していったような気がします。初めは思いつくままに書きましたが、次はインパクトがありそうな設定やキャラを考えて、その評価を参考にしながら最後はキャラの特異性を重視した作品にしました。やはり目に付くようなキャラや企画が、受賞を目指す上では大事なんだと思います。
――応募作はどれぐらいの期間をかけて書かれたのでしょうか? また、応募するとき自信や手ごたえはあったのでしょうか?
大学の就活から逃げる為に書いたと答えましたが、一番最初に応募した作品はその期間の中で二番目に完成した作品でした。子供の遊びになぞらえて人を襲う怪物と戦うという、デスゲームみたいな感じでした。
その時はジャンプ小説新人賞の応募締め切りまで一ヶ月と少ししか無かったので、その期間内で無理やり完成させて、書き上がったその日の内に応募しました。急いで書いたので、かなり誤字脱字が多く、今でも審査してくれた方々に申し訳なく思っています。そんな出来でも奇跡的に一次審査だけは通って、とても嬉しかったのを覚えています。
その失敗を踏まえて、受賞した作品は構想含め二ヶ月ほどで初稿を書き上げてから、およそ一ヶ月くらい推敲を重ねて完成させました。しかし逆に執筆期間を長く取ったことで執筆中に作品に対する自信が削れていったので、正直応募した時には期待と不安が半々といった気分でした。
次回更新は11月14日予定!!
めでたく金賞受賞からデビュー後までをお聞きしました!
お楽しみに!!