――受賞の第一報を受けとったとき何をされていたのか、また当時の気持ちを教えてください。
受賞の連絡を頂いた時は、平日にも関わらず家で漫画を読み耽っているという、かなり怠惰な日々を送っていました。本当に僕は昔から駄目人間なのです。
前の質問で答えましたが、受賞した作品についてはあまり自信が無かったので、受賞の報せを頂いた時は正直、半信半疑でした。しかしその後お会いした編集の方から「キャラクターが良い」と言って頂いたのは素直に嬉しかったです。
――初めて編集部に足を踏み入れたときの気持ちはどんなものだったのでしょうか? ご自身の想像とは違ったりした部分などがあればお聞かせください。
初めて集英社を訪れた際は、編集部ではなく掃除の行き届いた会議室に通されたので「何かちゃんとした会社なんだな」なんてやたら上から目線な感想を抱いた覚えがあります。話をする前にも飲み物なんか頂いて大変恐縮な思いでした。何回か打ち合わせをする内に初めて編集部を訪れたのですが、そちらの方は雑多な資材が置かれて漫画やアニメのポスターなんかがこれでもかと壁に貼られていて、僕が想像していた通りの場所で少し安心しました。大学の部室みたいな生活感のある編集部というのが昔から僕が持っていたイメージだったので。
――初めて担当編集者と話をしたときどんな印象を持ちましたか? 編集者から受賞作にどういった評価をもらったのかも聞かせてください。
初めて担当編集者の方とお話しさせて頂いたときは、やはりエンタメ作品に対するシビアな考えを聞かされたことが印象的でした。僕はどちらかといえば自分の書きたいものを重視したいタイプだったのですが、徹底して「読者がどんな作品に対してお金を払うのか」という点を追求する姿勢に、プロ意識の高さを感じました。
受賞作に関しては、担当編集者の方には褒めてもらえましたが、受賞した時の編集長のコメントに「出版に耐えられる」といったやや含みのある評価がされていて、まだまだ自分には読者に「面白い」と言わせる力が足りないと反省もしました。
――受賞作でのデビューとなりましたが、受賞からデビューまではどのぐらい時間がかかったのでしょうか?また、改稿はどの程度行ったのでしょうか?
僕の作品は受賞の発表から出版まではおよそ八ヶ月くらいありました。授賞式があったのが発表の二ヶ月後くらいだったので、正確に言うと六ヶ月かもしれません。
応募した時は殆ど初校に近い状態だったのですが、受賞後に設定や物語の矛盾点、問題点を指摘され、それに合わせて大きく二度は改稿しました。元々かなりアバウトだった設定について重点的に詰めていき、キャラクターや大まかなストーリー展開はあまり大きな変化を加えないよう修正していきました。
――デビュー作の『罪人教室』はシリーズ作品となりましたが、シリーズ作品を作る上でのコツや心がけていたことはありましたか?
シリーズとは言ってもまだ二巻しか出ていないのですが、続編を作る上で悩んだのが、この作品をジャンルとしてどういった方向に持っていくかでした。一巻の冒頭で「日常もの」と書いたのですが、出版される本の値段などを考えると、普通の日常ものだとインパクトが足りないという問題が生じてしまったので。
なので当時の僕は何を思いついたのか、いっその事ジャンルを決めないで書こうと決めました。一巻がミステリ風ならば、二巻はバトル方面でいこうなんて無謀にも程がある発想です。そして三巻はホラーかデスゲームで、なんて考えてました。自分でもかなり無茶なアイデアと思っていて、二巻については酷評も覚悟の上ですが、今でも作品のレビューは怖くてまともに見られないでいます。
次回更新は11月21日予定!!
新作『憂国のモリアーティ “緋色”の研究』についてお聞きしました!
お楽しみに!!