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レーベル創設から25周年を記念してJUMP j BOOKS小説賞出身の先生方へのインタビュー を掲載!!受賞当時の思い出や、あの名作がどのように生まれたのかなど、普段は聞くことのできない先生方の貴重なお話が満載ですよ♪

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鳥谷綾斗
(とや・あやと)

著者略歴
第3回ジャンプホラー小説大賞銀賞受賞。
同賞受賞作『花は二度死に、名を失う』を改題・改稿したのちに『散りゆく花の名を呼んで、』として刊行。 他に、小説投稿サイト・エブリスタに投稿した『糸渡りの教室』が二万作の短編の中から選ばれ、『5分後に禁断のラスト 5分シリーズ』(河出書房新社)に収録されている。
第1回 04.11更新 まずはここから! ホラーを書き始めるきっかけはなんだったのか!? そして応募の決め手は「ジャンプ×ホラー」だった!?

――小説を初めて書いたのはいつごろですか? きっかけと内容を合わせてお聞かせください


 小学5年生の時、家にワープロがあったので、なんとなく書いてみたのが最初です。内容は学園ミステリーで、高校生の仲良しグループが校内で起きた殺人事件を解決する話でした。当時愛読していた赤川次郎先生の物真似っぽい感じです。
 ただ最後まで書いていないので、ちゃんと完結させたのだと、中学1年生の夏休みの自由課題です。自分が通う中学校が舞台のミステリーで、小っ恥ずかしいのですが、クラスメイト全員を作中に登場させました。台詞も一人にひとつずつあって、さすがに被害者は架空でしたが、完全に悪ノリの内輪ウケでしたね。
 原稿用紙ではなくノートを使っていて、高校時代は授業中にこっそり書いたりしてました。

――自身に影響を与えた作品のタイトルと、好きだった点をあわせてお聞かせください


 原体験は『アンパンマン』と、90年代の漫画とアニメとドラマです。
 『アンパンマン』は、「他者(ひと)を救うには自らを犠牲にするくらいの覚悟が必要」という考えの素地になっています。アンパンマンさんは「ジャムおじさんからもらったパンを配る」でもいいはずなのに、そうせずに自分の顔を分けて人を助ける。自己犠牲を賛美するわけではないのですが、強い覚悟があり、それを当たり前だと心から思い、さらっとやってのける。本物のヒーローだと尊敬しています。
 90年代作品は、『幽☆遊☆白書』、『地獄先生ぬ?べ?』、『金田一少年の事件簿』、『美少女戦士セーラームーン』、『ゴーストハント』、『古畑任三郎』シリーズ、など。ちなみに受賞作で出てくるサイコメトリー能力は、『サイコメトラーEIJI』で知りました。
 作家さんは、ミステリーだと綾辻行人先生、有栖川有栖先生、東野圭吾先生。 ホラーだと貴志祐介先生です。フェアと驚きの両立、「生きて死ぬひとの姿」を描くことを知りました。特に貴志先生のすごい所は、作品の中に出てくる情報量の多さです。この情報が、ありえないはずの話なんだけど本当にありそうと思わせてくれる説得力を生み出しているんです。『クリムゾンの迷宮』という作品では、いわゆる今流行りのデスゲームものを題材にしているんですが、生物学に対する膨大な情報量がありながら、それがうまくストーリーに落とし込まれていて、作品にディテールが与えられています。同ジャンルのものであってもそういうところで違いを感じられたりしますね。

 成人してからは仮面ライダーなど特撮の影響が大きいです。平成初期の『龍騎』と『555』は観てたのですが、『鎧武』から本腰を入れて視聴しはじめました。特撮......というか子ども向けにハマらなかったら、今より捻くれた作品を作る人間になっていたと思います。 そういうところでジャンプの影響も強く受けていて「仲間を大切にする」とか「弱いものを守る」とか、当たり前のことではあるのですけど、子供にみせても恥ずかしくないようなことが書いてある作品を作りたいという気持ちがあります。

©冨樫義博 1990-1994年
©真倉翔・岡野剛/集英社
画像注:影響を受けた週刊少年ジャンプの漫画

――プロデビューを志したのはいつ頃からですか? 最初からプロ志向だったのか、何かのきっかけがあったのか教えてください


 趣味として細々と書いてましたが、本格的に志したのは2015年です。就職活動や人間関係がうまくいかなくて自暴自棄になり、起死回生をかけて「好きなことを思いっきりやってみよう」と思いつきました。
「自分の好きなことって何だろう」と考えた時に「あ、小説書くことか」となって、長らく頭の片隅に放置していたネタのタネを育てました。
 ダラダラしないように目標と〆切を設定して、好きな作家さんが審査員をしている日本ホラー小説大賞に応募を決めました。いざ取りかかってみたら、もう楽しくて楽しくて。一気に夢中になりました。
 同じ頃、エブリスタという小説投稿サイトに登録して、初参加した小さなコンテストで短篇が入賞しました。「これはいける!」と手応えを感じ、「もっと面白いものが書けるようになりたい」と一念発起して、紆余曲折あって今に至ります。 この辺の感覚は少年漫画の「もっと強くなりたい」に近いです。

――小説賞に応募する以前、周囲の方に小説を読んでもらうことなどはありましたか?
 あった場合は他人に読んでもらうことの影響を教えてください


 受賞作の『散りゆく花の名を呼んで、』は応募前に友人に読んでもらいました。
 人に見せるという前提があるので、客観的な目線を持てた気がします。「ここは伝わりにくいか?」「どうやったらもっと分かりやすくなるだろう。こちらの意図が伝わるだろうか?」と考えるようになりました。
 友人の意見で参考になったのは、「恋愛の部分がとってつけたような感じがする」と言われたことでした。本人の自覚の有無に関わらず、好意はきちんと示さなきゃ伝わらないんだな、なるほどと納得しました。
 投稿サイトでの読者さんが増えたのも大きいです。イイネの役割を果たすスターやレビューをもらえたりするのは、本当に嬉しいです。「もっと楽しんでもらいたい」という気持ちに繋がりました。

――デビューするまでJUMP j BOOKS以外の新人賞には応募されていましたか?  応募されていた場合はその経験から得られたことを教えてください。


 各社で募集している新人賞に短篇メインで応募しながら、エブリスタ主催の投稿イベントにも参加していました。佳作以上に選ばれると選評がつくので、とても参考になったのと、「読んでもらっている!」という実感がモチベーションに繋がりました。
 新人賞への応募は、傾向を知るために受賞作をチェックしました。普段はあまり手を伸ばさないタイプの作品も読めて楽しかったです。
 創作投稿生活を送るうちに、〆切に何が何でも間に合わせる気力と体力がついた気がします。ですが、効率よく作品を生み出すためにも、スケジュール管理や時間の使い方をもう少しなんとかしたいところです。

――なぜジャンプホラー小説大賞に応募しようと思ったのかを教えてください。ホラーに対するこだわりなどがあればあわせて教えてください。


 90年代のジャンプで育ったのと、ホラーが好きだからです。「『好き×好き=すごく好き』でここからデビューできたら最高だな!」という至極単純な理由です。
 元々家族がホラー好きということもあって、子供の頃は父が借りてきた『13日の金曜日』を家族で見ていたり、小学生のときに学校の図書室に『学校の怪談』が置いてあったりと、ホラーが身近にあったことがホラー好きになるきっかけだった気がします。
 ホラーに対するこだわりは、受賞作の中でホラー映画研究部の部員たちが話したとおり、手軽な悲劇演出が苦手です。小さな子どもが犠牲になるのも投げっぱなしエンドも控えたいです。
 また、ニコニコ動画のホラー百物語にハマった時期のおかげで、同時に大勢が体験を共有できる映像に限っては、どんなB級でもツッコミが行き交って楽しいことを知りました。それがホラー映画研究部の下地になってます。

――投稿サイトへ作品を投稿することと、公募の賞へ作品を応募することでは、どのようなところに違いがありましたか?


 まずは縦書きと横書きの違いが大きかったですね。Webでは読みやすさ重視を考えて改行を入れたり、文章をぶつぎりにしたり、表現はフランクなものでもいいのかなという感じがしました。例えば「ショックを受けた」という文章を「ガビーン!!」などと表現してもいいわけです。そういう意味での自由度の高さはあったかもしれません。
 公募の方は傾向を調べて勉強してみたり、その賞に合うような文章表現を考えて書いていました。書き分けはかなり意識していましたね。ただ、忙しくなるとそんなことは考えられず、「とにかく出せー!!」って感じになってしまいましたが(笑)

――受賞作『散りゆく花の名を呼んで、』を書いていた当時の話を聞かせてください。応募作はどれぐらいの期間をかけて書かれたのでしょうか? また、応募するとき自信や手ごたえはあったのでしょうか?


 三年前に一度同じ設定の作品を書いていたのですが、最初に書いた時はゼロの状態から二週間ほどで仕上げました。
 大まかな序破急を決めて、見切り発車で書き出しました。必要な資料を集めて、教育実習について調べて、キャラクターのスケジュールを作って、それに合わせて起きるイベントを決めて......全部執筆しながらでした。ラストスパートに入ると「朝と昼に手書きで下書きをして、夜中にパソコンで清書する」というかなりバタバタした状態でした。二度としたくないです。
 去年、応募用に一から書き直した時は余裕があって、友人に見てもらいながら一ヶ月半くらい推敲に当てました。
 自信や手応えは考えず、とにかく必死で、「これでどうだぁ!!」という挑戦状を叩きつける気持ちで送信をクリックしました。 締切日の23時58分ぐらいのギリギリの応募になってしまったのですが(笑)

――応募に際してこれはやっといてよかったな、またはこれは不安に思わなくてもよかったなという部分があれば教えてください。


 推敲です。一ヶ月半かけて、縦書きで印刷して赤ペンを入れたり、〆切が近づくと出先でもできるように小分けしてiPhoneのメモ帳でぽちぽち直したり、毎日ではなかったのですが、他の作品と並行して手を入れていました。
 あと、郵送かWeb応募かで散々迷いました。ギリギリまで推敲したくてWeb応募にしましたが、選考の有利・不利にはまったく関係なかったようです。
 内容については、自殺の要素と、「学校+いじめ+呪い」の要素がホラーとしてはありがちすぎて埋もれるのではと懸念しました。のちに「公募ガイド」に掲載されたジャンプホラー小説大賞さんのコメントで、「この三つの組み合わせは茨道」とあり、やっぱりそうだったのかとヒヤッとしました。

次回更新は4月18日予定!!
ジャンプに掲載された受賞者発表の記事を見て思わず…
お楽しみに!!

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