――作品を書く上でどういったことに気を付けていますか? 自分のなかで大切にしていること、読者にどのような気持ちになってもらいたいと考えていますか?
独り善がりにならないことですかね。読んでくれた方に、少しでも何かを残したいです。やさしい気持ちでも切ない気持ちでも、恐怖でも笑いでもホントなんでもいいので。近年、本が読まれなくなっていると聞いて淋しい思いでいっぱいですが、本に救われたことのある人って、決して、少なくないと思うんです。誰かの頭の中で生み出された世界やそこに住むキャラクターたちが、別の誰かに読まれることによって命を持つ。時に、生きる希望や癒しになる。それって、すごいことだと思うし、自分もそんなお話を書きたいと常々、思っています。発売日がうれしくて、その日を心待ちにするとか、嫌なことがあっても、辛いことがあってもそこまで頑張ろうという気持ちになれる――そんな本を書きたくて、いつももがいています。
――創作をしているなかで原稿に行き詰まることもあるかと思います。そんなときはどのように気分転換をしていますか?
散歩です。とにかくぶらぶらと歩くのが好きなので。家でパソコンと睨めっこしてても、何も出てこないのに、散歩の途中で立ち寄ったコンビニでおかしの棚を眺めている時や、初めて入ったお店で洋服を見ている時に、ふっと、思いついたりすることがあります。それでもダメな時は、一度、頭をリセットする為に寝ます。十時間くらい寝ます。寝て起きると、かなりの頻度で良い案が浮かびます。――そのどちらもダメな場合は、夜、ふらっとバスに乗ります。行き先は色々なんですが、薄暗いバスに揺られながらネオンに彩られた街を見ていると、ものすごく心細いような、それでいてひどく満たされているような気分になり、妙案がわくことがあるので。というか、普通に楽しいので、オススメですよ。
――これがなくては仕事にならない! というものはありますか? 普段の執筆環境について教えてください
うーん......基本、腰痛持ちなので、座り心地の良い椅子は最重要ですね。第1回でお話させていただいた某少女小説家の先生も、授賞式で先輩の先生方から『とにかく高くて座りやすい椅子を買え』『賞金を全部つぎ込むぐらいで丁度よい』とかなり真顔で言われたそうですし、椅子は外せないです。それから、実は、自分が無音でないと小説が書けないということが、数年前にわかりまして――。それまでは好きな音楽をガンガンかけながら書くことが多かったのですが、いい音楽を聴いてると、それだけで気分が高揚してしまうというか......何やら自分がものすごい壮大なお話を書いているような錯覚に陥ってしまうようなんですよ。はい。なんとも情けない話なんですが。実際、音楽をかけて書いたものは、大抵、書き直しの嵐で......。その(私だけが陥る)トラップに気づいてからは、執筆中は無音で、それから出来るだけ日中に――プロットや細部の練り直しなどの作業は、夜、お風呂に浸かりながら、浴室に音楽をガンガンにかけて行っています。なので、浴室用のスピーカーと携帯は執筆期間中の必須アイテムです。
――小説を書く際に、小説を読むこと以外で役にたったことがあれば教えてください。
これまでの貯金でしょうか......いえ、お金ではなく。いや、お金ももちろん、ものすごく大事なんですが――月並みですけど、人としゃべったこととか、色々な場所に行ったこととか。欲しかったものとか、美味しかった食べ物とか。すごく大事だと思います。私自身、人生経験というほど様々な体験をしているわけではないので、偉そうなことは言えないのですが......。他人と違うような壮大な体験とか感動的な事柄ではなくて、意外に、ものすごくどうでもいいようなバカバカしいことが役に立ったりします。あとは、人間観察。一人で出かける時なんかは、失礼にならないように、周囲を観察するようにしています。
――今後どのような作品に挑戦したいか、また構想中の作品などあれば教えてください。
実は、無類のクローズドサークル好きで......。貴志祐介先生の『クリムゾンの迷宮』とか東野圭吾先生の『パラドックス13』とか、土橋真二郎先生の『殺戮ゲームの館』とか米澤穂信先生の『インシテミル』とか藤ダリオ先生の『出口なし』とか、矢野龍王先生の『極限推理コロシアム』とか、洋書ではスーザン・コリンズ先生の『ハンガー・ゲーム』とか。とにかく、極限状態で繰り広げられるやりとりの怖面白さが好き過ぎて、是非とも自分でも書きたいんですが、なまじ、自分でも引くぐらい好きなジャンルだけに、なかなか難しくて......。でも、腕を磨いて、いつかは挑戦したいです......!
――これからJUMPjBOOKSの小説賞に応募される方に応援メッセージをお願いします!
おそらく、受賞してからの方が、辛いことも苦しいこともいっぱいあると思います。私自身、悔しくて、悔しくて道端で号泣したこともあります。大人なのに。――でも、息が止まるほどにうれしい瞬間があります。涙が出るくらい幸せな瞬間があります。それはきっと、小説が大好きで、それをお仕事に出来たから得られるものなのだと思っています。なので、みなさんも書いて書いて、書きまくってください......!
一度ダメでもあきらめず、「しつっこい!」と言われるまで書き続けてください。そして、いつか一緒に小説談義に花を咲かせましょう。
矢島先生ありがとうございました!!