――『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所 魔法律家たちの休日』が8月3日に発売となりましたが、矢島先生自身も『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』のファンだということで、この作品の執筆依頼を担当編集から最初に受けたとき、どのような感想をもたれましたか?
ものすごく驚きました。続編が出るということはもちろん、アニメ化の話もその時が初めて耳にしたもので、まず「やったー!! 大好きなムヒョロジの続編が読める!! しかも、アニメまで......!!! ひゃっほー!!」という一ファンとしての歓びが――その後、「ええ!? 私が!? い、いいんですか!? 本当に!?」とうろたえました。ただ、大好きな作品のお話をいただけてうれしい反面、かなりのプレッシャーもありました。
――JUMP j BOOKSから『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』の小説版が刊行されるのは、約10年ぶりとなります。ファン待望の作品にもなったと思いますが、執筆を終えられた今はご自身で手がけられた作品に対してどんな気持ちを抱いていますか?
お話をいただいた時から、ムヒョやロージーたちの空白の数年間を彩る「楽しさ」や「やさしさ」そして「切なさ」の詰まった宝箱のような本を書きたいと思ってきたので、少しでもその理想に近づけただろうかと、ドキドキしています。それから......うーん、書き終えて作品に対してどんな気持ちか、なんですよね――やっぱり「ありがとう」です。ムヒョロジの世界が十年ぶりに戻って来てくれて、ムヒョがロージーが、ヨイチが、ビコが、エンチューが、ゴリョーが、エビスが、ナナちゃんが、今井さんが、毒島さんが、リオ先生が――みんなが相変わらずやさしくて、あたたかくて――それを書かせていただいて、ありがとうございます、という気持ちです。わかりにくくてすみません......でも、本当に「ありがとうございます」なんです。
――『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所 魔法律家たちの休日』の見所を教えてください。
ずばり、ムヒョとロージーの女装シーンが、西先生のイラストで読めるという個所でしょうか! しょっぱなの『潜入捜査』というお話なんですが、まず、担当さんにネタ出しをした際、「これは絶対、ムリですよねえ......女装だし」「でも、出すだけ出してみましょう!」「はい!! 夢を捨てずに!」という感じで、出すだけなら的な雰囲気で提出し、思いがけずOKをいただきました。というわけで、全寮制の女子高に、お下げ&セーラー服姿で潜入する可哀想(!)な二人を、是非、ご覧ください!! ヨイチも出てきますよ! 因みに、タイトルを『ムヒョ子とロジ子』にしようとしたところ、良識ある担当さんにさわやかにスルーされました(笑)いつもありがとうございます。。。助かります。
――ノベライズ作品を多数手がけられていますが、どんなところに注意して執筆にあたりますか?
絶対にその作品を壊さない、出しゃばらない、あくまで黒子に徹しながらも、あふれる愛情を持って執筆するようにしています。作品は著者にとって我が子も同じですから、大切にお預かりする気持ちです。それは、読者の方々にとっても同じなので、先生を読者の方をがっかりさせないよう、いつも心がけております。――あとは、読みやすさですね。一通りの執筆が終わった後で、必ず声に出して読むようにしています。すんなり読めないところは、問題があるとして、時間が許す限り、納得がいくまで直します。夜中にやるとボソボソボソボソ不気味なので、出来る限り昼間にやるようにしています。昼間でも十分気持ち悪いですが......。
――徹底的にその作品を研究し、世界に入り込むということが、ノベライズをするにあたり必要なことかと思いますが、そういった研究などからご自身の創作活動に影響があったりするのでしょうか?
うーん、私はオリジナルを書く時と、ノベライズを書く時では入り方がかなり違うので......。(オリジナルの場合は、その世界の一部――木でも土でも、食べ物でも、音でもなんでも――に触れて、初めてその作品を書き上げられるまで、モチベーションを高められるのですが、ノベライズの場合は、その作品世界を俯瞰しながら、目を瞑っても原作のあらゆる場面が音付きで浮かんでくるようになって、初めてお話を作れるんです)直接というわけではないですが、ノベライズをやらせていただくことで、魅力的なキャラクターや世界観というものに直で触れ、しみじみ考えさせられます。その度に身につまされるわけですが、とても勉強になります。
――漫画のノベライズだけでなく、劇場版アニメのノベライズも手がけられていますが、執筆にあたって違う部分や大変だったところなどはありましたか?
劇場版アニメのノベライズの場合、脚本と絵コンテを時間差でいただきました。なので、イメージとしては、脚本ベースで先に書き出していて、そこに絵コンテがきて、細部を合わせていくという感じでした。しかも、脚本にあるシーンで時間の都合上、泣く泣くカットされているものや小ネタなど、出来る限り拾いたいと思ってしまい、結果、ページが嵩み、最後の最後で量を減らすのに四苦八苦しました。もちろん、大変なだけでなくうれしいことも沢山ありましたし、沢山の方と一緒に作業しているような感覚が、すごく新鮮で、楽しかったです。
――ノベライズに携わることでのやりがいはどんなところにありますか?
大好きな作品にノベライズという形で携われるということは、本当にすごいことだと思います。ただ、なにぶん、作品への愛情や想い入れが強すぎて、何を書いても何を思いついても満足できず、こうじゃない、ああじゃないと頭を抱え続ける日々――でも、それすらもうれしくてたまらないという、一種、異常な多幸感に包まれながらお仕事ができるということでしょうか。辛さすらも喜びという......。そう書くと、何やらマゾっぽいですが(笑)そして、何より、原作者の先生に「よかったよ」と言っていただけたり、読者の方々に「面白かった」と言っていただけた時の感動――大げさでなく、『生きててよかった......!!』という感じです。まさしく感無量です。
次回更新は8月29日予定!!
生活の中に潜む小説を書くためのコツとは!?
お楽しみに!!