絶賛作品募集中の『ジャンプホラー小説大賞』。その記念企画として、ホラーを愛する作家の方々に、連続インタビューを行います。プロが語る、ホラーとの出会い、作品を書く上での秘訣やテクニック、心得など……受賞を目指す皆さん、ぜひ先生方の教えを、作品執筆の助けにしてください。
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これはもう間違いなく円谷プロの特撮テレビシリーズ『ウルトラQ』です。ホラーとSF、そしてファンタジーが渾然一体となった恐くて不思議な物語の数々を小学校低学年で見たことが、私のフィクションに対する傾向を決定づけました。
ホラーは文体、と人には説明しているのですが、「何を描くか」よりも「どう描くか」が重要なジャンルだと思っています。恐怖は雰囲気や気配に宿ります。ホラーでありがちなプロット――雨の夜道で車が故障して電話を借りに一軒家に入る、とか、ホラーで使われる小道具――暗い夜道、墓場、殺人鬼、蛇や黒猫、等と言うものを出してきても、それだけで恐怖を作り出せるわけではありません。読者の心をゆさぶるためには如何に描くのか。その腕を磨くのにホラーはもってこいです。何しろホラーの評価は「恐いか恐くないか」なので、判定がすぐにでてしまいますから。あっ、恐くないホラージャンルもあるよね、という部分には今のところ目を瞑っていてください。
恐いものってなんだろう、っていつも考えています。深夜に乳母車を押してくる女性とすれ違うのって何となく恐いよね、とか、いつも通っている歯医者の先生が、小学生の時一番嫌っていた同級生だったことを思い出すのって恐くないかな、とか。
恐怖を考えるとき、その判断の尺度は己しかありません。自分の中に手を突っ込んで、自分の中の恐怖を引き出してくる作業が、ホラーでは必ず必要になります。自分の中の暗部を探り、怖ろしくて嫌で見たくもないあれこれの中から、それを掴み出してくる作業を、怖がらず嫌がらず真正面から続けてください。
それって本当はどんな小説を書くときでも必要な作業だと思います。ですがホラーは特にその結果がはっきりと小説に反映されます。頑張って自分の中身をさらけ出してください。