絶賛作品募集中の『ジャンプホラー小説大賞』。その記念企画として、ホラーを愛する作家の方々に、連続インタビューを行います。プロが語る、ホラーとの出会い、作品を書く上での秘訣やテクニック、心得など……受賞を目指す皆さん、ぜひ先生方の教えを、作品執筆の助けにしてください。
作家一覧
幼い頃は、明治生まれの祖母にしょっちゅう怖い話をせがんでいました。
そのせいで、物心ついた頃から超自然的な現象に興味がありました。有名な「飴買い幽霊」は実話として聞きましたし、祖母は河童の存在を信じていました。
創作としてのホラーとの出逢いは、楳図かずおさんの「猫目小僧」が最初です。シリーズのなかでも六歳のときに読んだ「みにくい悪魔」は衝撃的で、そういう年齢で読むべきではないと、いまだに思っています。
小説では小学校低学年の頃、ポーの「黒ねこ」(少年少女世界恐怖小説シリーズ 朝日ソノラマ)を読んで戦慄しました。自分でも小説を書いてみたいと思ったきっかけは、遠藤周作さんの「怪奇小説集」(講談社文庫)です。怪談実話を小説に盛りこんだ嚆矢というべき名作で、四十年以上も前に読んで以来、何度となく読みかえしています。
リアリティとモチーフです。
ひと口にホラーといっても、さまざまなパターンがありますが、読者を怖がらせたいのなら真に迫った描写と臨場感が必要です。超自然的な現象や残虐な場面は、得てして荒唐無稽になりがちですから、いかにリアリティを持たせられるかが問われます。
完全な創作であっても「これは、ほんとうにあったことではないのか」と読者に思わせるのが、すぐれたホラーです。かの近松門左衛門いうところの「虚実皮膜」で、芸の神髄は虚構と現実のあわいにあります。
虚構とは絵空事ですから想像力がもたらしますが、現実のほうは、それに即した事実に材をとる。したがって、自分がよく知っている事柄をモチーフにすることが多いです。未知の事柄を書くときは、資料を読みこんだり取材をしたり、それを知る努力をするしかない。
ホラーに限らず、地に足が着いた小説は、作者が熟知したモチーフから生まれます。
ホラーを書く場合、まず自分が「怖い」ことを考えます。
いまの自分にとって、ほんとうに怖いものはなんなのか。自分にとって切実な恐怖であれば、共感してくれる読者もいるはずです。あとは、それをどう小説に落としこむかです。
アイデアとは新たな情報の組み合せですから、描きたい恐怖をさまざまな情報と組み合せて、ストーリーを構築する。その過程にノウハウはありません。ひたすら考え続けて取捨選択を続け、ようやく浮かんだアイデアをさらに絞りこみます。
けれども、いざ文章にしてみると冴えない場合も多く、最初からやりなおすことも珍しくありません。浅学のうえに発想が貧困ゆえ、ストーリーが夢にでてくるほど考えこむのが常です。
作家である前に、読者としての自分を考えてみてください。
ひとに読ませるものを書くためには、ひとよりも多く読むしかありません。
最低でも自分が書きたい系統の小説は、徹底的に読みましょう。自分では斬新な発想だと思っていても、すでに使い古されたアイデアだったというのは新人にありがちです。
はじめは好きな作家の模倣から入っていいのですが、似たような作風では商業的な成功はむずかしい。オリジナリティは自分ならではの考えと、より多くの引出しから生まれます。
小説だけでなくノンフィクションから学術書まで、手あたりしだいの乱読が自分の引出しを増やします。引出しとは情報であり、アイデアの素材です。引出しを増やすあいだに自分ならではの考えがまとまって、書きたいものが見えてくるかもしれません。
書きたいものが見つかったら、自分で締切を作りましょう。締切がないと延び延びになるばかりで、その小説の出来不出来もわかりません。自分で作った締切を守ることで、いま立っている場所がわかり、筆力と自信がついてきます。
作家はデビューすればゴールではなく、そこからが勝負です。長い闘いですが、あきらめずにがんばってください!