――小説を初めて書いたのはいつごろですか? きっかけと内容を合わせてお聞かせください
中学生の頃くらいからだと思います。それまではずっと漫画を描いていたのですが、自分の絵心のなさに気づき始めたため、小説のほうに移行しました。そうしたら今度は、文章力のなさに気づいてパニックになったのですが、そんなことを言っていたら何もできなくなってしまうので、とにかく何か書いてみることにしたんです。
内容は、ゲームの「サモンナイト」や「ドラゴンクエスト」などの二次創作、オリジナルではハイファンタジーや学園オカルトものを書いていました。文章力をつけるための練習的な意味もあったのですが、創作することは楽しかったので、毎日何かを書くようにしていました。
――自身に影響を与えた作品のタイトルと、好きだった点をあわせてお聞かせください
たくさんありますが、特に強く影響を受けた作品となると、神坂一先生の『スレイヤーズ』シリーズです。自分の文章力のなさと活字への苦手意識をなんとかするため、助けを求めるようにこの大ヒット作品を手に取ったのですが、面白すぎて読むのが止められなくなってしまいました。ストーリー構成やファンタジーな世界観の作り方、キャラ同士の掛け合いなど、とにかくいろいろなところを、勝手ながらお手本にさせてもらっています。
あとは秋田禎信先生の『魔術士オーフェン』シリーズにも多大な影響を受けました。本編となる『はぐれ旅』のほうも好きですが、コメディ色の強い『無謀編』が好きで、ギャグの入れ方などはこの作品から学ばせてもらったのだと思います。
その他では、少し後の話となるのですが、鏡貴也先生の『伝説の勇者の伝説』も愛読していました。この作品もコメディ色強い『とりあえず伝説の勇者の伝説』のほうも好きでした。ミルクというキャラがとにかくかわいくて、今にして思えば、彼女を通して「萌え」というものを学んだんだと思います。同先生の『武官弁護士エル・ウィン』シリーズも大好きでした。
......というか、僕ら世代のラノベ書きなんて、みんな大なり小なりこのお三方の影響を受けていますよね。月並みですいません。
あと作品ではなく人ですが、お笑い芸人さんは昔から大好きです。ダウンタウンさんや千原ジュニアさん、小藪千豊さんやケンドーコバヤシさんなど、いろいろな方のファンなので、少なからず影響を受けていると思います。
――プロデビューを志したのはいつ頃からですか? 最初からプロ志向だったのか、何かのきっかけがあったのか教えてください
最初からプロ志向ではありませんでした。というのも、中学卒業後はあまり小説を書かなくなってしまったからです。意識的にやめたわけではないのですが、部活やバイトが忙しくなり、空いた時間もほかの楽しいことに目が行ってしまったので、いつの間にか書くことも読むこともほとんどしなくなっていました。また機会があったら書きたいとは思っていましたが、それは趣味としてであり、プロとして書けるなんて思っていませんでした。
ですが社会に出てから数年が経ち、小説の投稿サイトなるものがあると知って、趣味としてまた書いてみることにしました。相変わらず活字は苦手だったのですが、やはり創作することが楽しかったので、投稿することが習慣として定着していったんです。そんな生活が数年続いて、腕試しのためにジャンプ小説新人賞のキャラクター小説部門に応募し、それが一次選考を通過したあたりで、ようやく「プロになれるかも!」と意識し始めました。ですので、この賞がいろいろな意味でのきっかけとなりました。本当にありがとうございます。
――小説賞に応募する以前、周囲の方に小説を読んでもらうことなどはありましたか? あった場合は他人に読んでもらうことの影響を教えてください
小説投稿サイトを利用していたので、比較的大勢の方に読んでもらっていたと思います。いや、言うほどブクマも閲覧数も延びなかったのですが......。
それはともかく。誰かに見てもらうのは恥ずかしかったですが、やはり感想をもらえるのは嬉しいし、繰り返し推敲をするということを覚えるきっかけとなりました。また「せっかく読んでもらっているのだから、なるべく面白く書こう」というサービス精神らしきものが芽生え始めたのも、サイトを利用し始めたあたりからだったと思います。小中学生のころも友達に見てもらっていましたが、その時は第三者の目線なんて気にせず、ただ書きたいことを書きなぐっていただけでしたから。
受賞作は刊行後、友人などに読んでもらえました。「主人公がジョニーっぽくて面白かったよ!」とか「やっぱ主人公って作者に似るんだね」などと言ってもらえました。
この作品の主人公、ド変態のクズ野郎なのですが......。
――デビューするまでJUMP j BOOKS以外の新人賞には投稿されていましたか? 投稿されていた場合はその経験から得られたことを教えてください
本当にありがたいことに、新人賞に投稿したのはジャンプ小説新人賞が初めてで、それが運よく賞をいただいてデビューする運びとなりました。ですので、ほかの新人賞に投稿したことはありません。
ですが、デビュー作を投稿してから受賞の知らせを受けるまでの間、次のジャンプ小説新人賞のテーマ部門への応募作品は書き上げました。その作品は評価してもらう機会がなかったのですが、デビュー作よりもスムーズに書き上げられたように感じました。その応募作が短編だったから、ということもあるのでしょうが、デビュー作を書いた時よりもスケジュール管理がうまくいき、文字表現や句読点の位置などにも気を遣う余裕ができたんです。このインタビュー特集でほかの先生も仰っているように、投稿作品を書き上げることで、いろいろな技術のブラッシュアップにつながったのだと思います。
......たぶん。
――先生が応募されたのはジャンプ小説新人賞のキャラクター小説部門という、漫画家の先生に描いていただいたキャラクターのイラストを元に、小説を書いて応募するという部門でした。なぜ、この部門に応募しようと思ったのでしょうか?
情けない話なのですが、僕には企画力というものがないんです(笑)。二次創作はずっとやってきたことなので少しだけできるのですが、0から1を生み出す作業がどうにも苦手で......。ですので、テーマイラストという「お題」があるこの賞に応募させていただきました。
また、岩本直輝先生の著書である『magico』の大ファンだということも大きな理由のひとつです。大好きな先生の描いたイラストをもとにお話しが作れるなんて、二次創作をやっている人間にとっては夢のような話です。むしろやらない理由がない! くらいの勢いで飛びついたのを覚えています。
......それはそうと、あの、ちゃんと、企画力を付けるように頑張ります......(小声)。
――お題となった岩本直輝先生のイラストからどのようにして受賞作『ローリング・コンバット!〜落ちこぼれ自衛官、異世界の中心で不純な愛を叫ぶ〜』のアイディアが生まれたのでしょうか?
最初のほうはとにかく、世界観を想像することに終始しました。「ファンタジーな世界っぽいけど銃とか車とかの近代的なものもある」→「そういうのが魔法で作れたら面白そう」→「でもファンタジー世界に銃や車の知識はないだろうから、誰かがそういうのを持ち込まないといけない」→「......異世界転生ものにしよう! それなら書いたことあるし、できるはず!」といった具合で、お話の舞台と設定は割とあっさり決まりました。
苦労したのはキャラです。僕はゲスいキャラを書くのが好きなのですが、先述のように岩本先生の大ファンなので、先生の描いたキャラを悪く書くことに抵抗を感じたんです。ですが全然いいアイディアが浮かばず、ドツボに嵌りました。考えてみれば当たり前です。憧れとしているものといきなり同じことをしようとしたって、できるわけがない。積み上げてきたものが違うのだから、その時の自分の持っているもので勝負するしかない、と、どこかのタイミングで割り切り、ゲスいキャラを使ってみることにしたんです。その開き直りがどうにかうまくいって、不格好ながらもデビュー作を書き上げることができました。
――応募作はどれぐらいの期間をかけて書かれたのでしょうか? また、応募するとき自信や手ごたえはあったのでしょうか?
締め切りが12月31日だったのですが、10月に職場で必要な資格取得の試験があったため、それが終わってから書き始め、12月20日くらいに書き終わりました。それから30日まではひたすら推敲をして、31日に郵便局の本局に持っていきました。だから2か月くらいで書き上げたのだと思います。
自信や手ごたえは全くなかったです。投稿そのものが初めてだったので、「これはちゃんと小説として成り立っているのだろうか?」という不安しかありませんでした。ただ、書き上げることができて、無事送付できたことに安心はしていました。その日の夜は、いっちょまえに少し高いお酒を飲んだ覚えあります。
次回更新は9月11日予定!!
受賞の知らせはオムツ交換の間に…?
お楽しみに!!