――6月4日に『銀魂 帰ってきた3年Z組銀八先生もっとリターンズ 冷血硬派高杉くん』が発売となりました。『銀八先生』は元々コミックスのスピンアウト作品ですが、どのような経緯からこの作品をノベライズすることになったのでしょうか?
『銀魂』ってギャグパートもあるじゃないですか。だから、ノベライズを担当する作家も、お笑い寄りのほうがいいとなったんじゃないでしょうか、僕の想像ですが(笑)正式に僕で決まる前に、一度、空知先生サイドに、僕が担当した新喜劇の録画を観てもらったと記憶してます。どんなお笑いを作ってる人なのか、ってところは気になるでしょうからね。
『銀魂』本編じゃなくて、オマケ漫画の銀八先生をノベライズしたのは、本編じゃできない学園ものをやってくださいっていう原作サイドからのご提案だったと思います。そのほうがノベライズチームも自由にできるでしょうからってことで。結果、僕もすごくやりやすかったです。何でもアリというよりは、学園もの、という縛りがあるほうがネタも考えやすいので。
――『銀八先生』は既刊8冊が累計260万部超えの、小説としては異例のスーパーヒットシリーズとなりました。ノベライズがこれだけヒットした理由がどんなところにあると考えますか?
これはもう、『銀魂』自体が人気だったから、というのがまずあります。ノベライズの一巻が出るタイミングでアニメもスタートしましたし、『銀魂』がジャンプの看板作品に成長していくのにあわせて、ノベライズの新作も出していたので、部数も順調に伸びていきました。それから、JUMP j BOOKSって、『銀魂』のノベライズを出し始める時期に、ノベライズ本の判型をコミックスと同じ大きさにしたんですよね。 原作のファンが手に取りやすかったんじゃないでしょうか。あとは、僕自身が『銀魂』のキャラクターを使ったギャグやらボケやらを楽しんで書いていましたし、「笑いました、面白かったです」っていう感想のお葉書もチラチラいただきましたので、そこら辺も微力ながら貢献できていたら嬉しいです。
――5年ぶりの待望の新刊は好評を博した『冷血硬派高杉くん』の新作となりますが、どのようなところが見所となっているのでしょうか?
見所は......全部です。としか言えないです(笑)内容を簡単に言うと、高杉たちが、万事屋ならぬ「万事部」というクラブを作って、銀魂高校で人助けをする話です。
当然ながら高杉くんは出ずっぱりだし、高杉一派もそうだし、風紀委員(真選組)も出るし、新八、神楽、桂とか、いつもの3Zメンバーも出るし、さらには既刊本ではあまり出番のなかったキャラクターや初登場のキャラクターもいますし、なんにせよ、お口に合えば幸いです。僕も楽しんで書きました。ヘトヘトになりましたけどね。芸人さんの単独ライブの前って、こんな感じなんだろうな、て思いながら書いてました。ボケ数をたくさんそろえないといけないから。
――『銀八先生』のシリーズを通して印象深かった思い出などがあればお聞かせください
やっぱり、オマケ漫画で空知先生にいじってもらえたことですね。ずーっと一点を見つめている僕の著者近影をつっこまれましたし、「大崎は、この銀八シリーズでガッポリ印税をもらってる! 銀八リターンズじゃない、大崎マネーリターンズだ!(笑)」とか、おいしくいじってもらえて嬉しかったです。空知先生って、担当編集さんのいじり方が面白いんで、いつも感心してるんです。一度しかお会いしてませんし、その時の記憶ももはやセピア色ですが、お体に気をつけて、これからも突っ走ってほしいです。
あとは、冷血硬派高杉くんが、アニメにチラっと登場したことも「おー」と思いました。小説版発信のネタが、アニメにも、少しとはいえ波及したので驚いたのを覚えています。
――ノベライズ作品を手がけるにあたり、どんなところに注意して執筆にあたりますか?
これは、失敗してるところもあるんですが、最低限キャラクターの口調は原作通りにしなきゃいけないと思っています。特徴的な語尾や、定番のフレーズがなくても、セリフだけで話者がわかるのが理想だと思っています。あとはキャラ同士の掛け合いの部分ですかね。ノリというか空気感というか、「あー、本編でもありそう!」と思ってもらえるようなセリフの応酬は入れるよう意識しています。この状況で近藤勲がこう言ったら、沖田総悟はこうカブせてくるよな、読者もそれを待ってるよな、と思ったら、そこはちゃんと押さえておこうと思ってます。
――徹底的にその作品を研究し、世界に入り込むということが、ノベライズをするにあたり必要なことかと思いますが、そういった研究などからご自身の創作活動に影響があったりするのでしょうか?
ノベライズを書く時は、原作のコミックスを全巻、四回か五回通読するようにしています。三回目くらいからはメモもとって。『銀魂』以外だと、『NARUTO-ナルト-』と『ONE PIECE』も一冊ずつやりましたけど、こういう看板作品は巻数も多いですから、メモも結構な量になります。なかなか大変な作業ではあるんですが、ただ、これってよく考えたら「名作」「成功作」と呼ばれる作品を繰り返し味わって分析してることでもあるんですよね。人物の造型、出し入れ、プロットの組み方等々。ノベライズ執筆の準備をしながら、同時に創作講座も受講してるような感覚です。だから、大変ではあるんですが、お得なことしてるなあ、という感覚はあります。
――ノベライズに携わることでのやりがいはどんなところにありますか?
『銀魂』に関して言うと、本編でもありそうなキャラ同士の掛け合いを書きながら、そこに別のキャラも乱入させて、本編ではあまり見ないカラミを書いているときは楽しいですね。近藤勲がボケて、土方十四郎がつっこんで、沖田総悟がボケて、土方がまたつっこんで......ここまでだと本編でも定番ですけど、そこにプラスアルファで別のキャラがボケる。で、それに土方じゃなく新八がつっこんでカオス度がアップしたりすると書いているほうもノってきます。ただ、ボケの波状攻撃とかカオスっぷりは、連載が続くうえで本編でもエスカレートしていきましたから、僕もそれに負けないよう、追いつけるようにとは思ってました。
次回更新は6月26日予定!!
今後の目標として、小説や脚本以外でやってみたいこととは…!?
お楽しみに!!