――『かぐや様は告らせたい 小説版 ~秀知院学園七不思議~』が9月19日に発売となりました。どのような経緯でこの作品を執筆することになったのでしょうか?
僕はとにかく『かぐや様は告らせたい(以下、かぐや様)』の大ファンでしたから、頑張って企画書を書きました。
担当編集からは授賞式の日に「次に会うとき、よければ何本かオリジナル作品のアイデアを持ってきてください。ホラーとかだったらいいなあ」と言われていたのですが、それを無視して勝手に『かぐや様』のノベライズ企画書を持っていきました。
残念ながらその企画は没になったのですが、次にまた『かぐや様』のアイデアがあれば持ってきていいよと担当編集が言ってくれたのです。
それで彼と色々と相談しながら、『かぐや様』のアイデアを二~三十本ほど出して、最終的にGOサインを出していただきました。
――本作が羊山先生にとってはデビュー作となりました。原作も人気急上昇中の作品ですが、どのような気持ちで執筆をされていましたか?
恐れ多くも大好きな作品にかかわらせていただくわけですから、とにかく原作の雰囲気を壊さないようにしようと思っていました。
『かぐや様』は非常にキャラクターや舞台設定が丁寧に作り込まれている作品なので、なるべくその設定をいかした演出などを多く組み込もうと考えました。漫画本編を深く読み込んでいる人がにやりと出来るような小ネタをたくさん仕込みたいな、と。
小説が完成し、赤坂先生に見ていただく際は非常に緊張しました。先生には週刊連載中のお忙しいなか、非常に細かく読んでいただき様々なアドバイスをいただきました。
しかもその際に赤坂先生は「これこれをこうしてください」とかは絶対におっしゃらないんですよ。「この部分はこうしてくれると嬉しいなあ」とか「このシーンは面白いので、もっと読みたいです! ページ数を増やすことはできますか?」という風に、非常に気遣ってくださるんですね。本当に赤坂先生のお人柄だと思います。
それと「このシーンのかぐやはアホモードにしませんか?」というようなアドバイスがあったのですが、その横に頭から花が生えたかぐやの絵が添えてあるんですよ......! それを見たときはめちゃくちゃテンションが上がりました。
――本作の見所を教えてください
やはり白銀とかぐやの頭脳戦ですね。本作は連作短編集となっているのですが、第1話では漫画本編のようないつもの雰囲気の頭脳戦、第2話ではちょっと趣向を変えた二人の頭脳戦を書くようにと、色々工夫しました。
それと僕は石上が好きで、つい彼を格好よく書こうとしてしまったのですが、赤坂先生から「もっと石上は酷い目に遭わせましょうよ!」みたいなアドバイスをたくさんいただきまして......(笑)
おかげで赤坂先生ご公認のもと、石上をたくさん不幸に出来ました!
――ノベライズ作品を手がけるにあたり、どんなところに注意して執筆にあたりましたか?
『かぐや様』は、ナレーションが非常に重要な役割を担っているのが特徴のひとつだと思っています。
ノベライズするにあたり、地の文とナレーション、そして台詞がうまく調和するように自分なりに研究しました。まずは『かぐや様』に描いてある文字は擬音を含め、すべて抽出し、テキスト化しました。それを何度も音読したり、ノートに書き写したりして『かぐや様』らしいリズム感を自分の中にインプットしようとしたのです。絵と文字のバランスも自分のものにしようとして、漫画本編をネームのように簡略化してノートに書き付けたりもしました。
また小説本文にも『かぐや様』の漫画本編にあるナレーションなどを可能な限りそのまま使おうと試みました。企画の初期段階では、漫画本編で使われたとあるナレーションの一節が非常に重要な役割を担う演出を仕込んでいたので、それを強化するためです。その演出は企画が進むに連れて残念ながらカットされてしまいましたが、最終稿でもその名残で漫画本編のナレーションが様々な場所で使用されています。かぐや様ファンは探してみてください。
――徹底的にその作品を研究し、世界に入り込むということが、ノベライズをするにあたり必要なことかと思いますが、そういった研究などからご自身の創作活動に影響があったりするのでしょうか?
『かぐや様』はおもしろさの土台が非常にしっかりしている作品だと思います。ある程度のお約束があって、それを守っていればちゃんとおもしろい作品に仕上がるシステムがきちんと構築してあるのです。
このシステムを設計できたという一点だけでも、赤坂先生が非凡な才能の持ち主であることは疑うべくもありませんが、さらに先生はあえてそのシステムを崩す話を定期的に描かれています。「次はこうくるだろう」という読者の予想を外すフェイントをしかけるわけですね。さらにこの外し方が非常に秀逸で、ノベライズ担当として作品研究をしなければならない身としては何度も頭を抱えました。
だって柏木さんの彼氏に対してトイレットペーパーを構える石上(コミックス5巻、第48話)とか、どうやったらその発想に至るのかさっぱりわからないじゃないですか! キューバリファカチンモ(コミックス6巻、59話)ってなんなんですか!?
......本当に『かぐや様』は素晴らしい作品です。僕にとっては教科書と言えるような作品なので、影響を受けているどころの話ではありません。赤坂先生は僕にとって創作活動のお師匠さまのような人です。
――ノベライズに携わることでのやりがいはどんなところにありますか?
やはり大好きな作品にかかわれるという点が最も大きいです。
本作の執筆にあたり、赤坂先生から原作にまだ登場していない設定をたくさん教えていただきました。打ち合わせの際、あまりにも衝撃的な設定を聞いて、担当編集と二人で「マジですか!?」と大声を上げてしまう場面もあったほどです。
いや本当に『かぐや様』についての裏話などを聞けて、かなり役得というか、ファン冥利につきます。
さらに、そんな数々の秘められた設定のうち、いくつかを本作で使用していいと許可をいただきました。たとえば伊井野の小さい部分についてとか......詳しくは、本作をお読みください!
そんな風に、おそらく本作で初登場となる設定も多々ありますので、かぐや様ファンにとって必読の一冊になると信じています。
次回更新は9月26日予定!!
小説を書くうえで大切なことはすごくシンプルで…
お楽しみに!!
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