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レーベル創設から25周年を記念してJUMP j BOOKS小説賞出身の先生方へのインタビュー を掲載!!受賞当時の思い出や、あの名作がどのように生まれたのかなど、普段は聞くことのできない先生方の貴重なお話が満載ですよ♪

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小川一水
(おがわ・いっすい)

著者略歴
『リトルスター』で第3回少年ジャンプ小説・ノンフィクション大賞佳作、『まずは一報ポプラパレスより』で第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞(ともに河出智紀名義)。以降、小川一水名義で『第六大陸』、『天冥の標』シリーズ(ともに早川書房)など多数の著書を執筆し、4度星雲賞を受賞するなど日本を代表するSF作家として活躍している。
第3回 08.21更新 デビュー作『まずは一報ポプラパレスより』出版後から最新作『天冥の標』まで!
環境の変化や作風の変遷は? 作品世界の作り方にも迫ります!

――『まずは一報ポプラパレス』の出版後、出版前に比べて大きな変化はありましたか?


 作家になる運命が定まった、と感じるようになりました。なりましたんですが、良き影響があったとは言い難く、大学を本格的にサボるようになりました。電気工学科にいたんですが、電気工学の要である数学が壊滅的にダメで、単位を取れずに休学、そして中退というルートへ進んでしまいました。このころのことは思い返すたびに不思議になります。一人暮らしをしており、建築のバイトでお金を稼いでいたので日々を凌ぐことはできたんですが、毎日執筆に没頭していたわけでもありません。おおむね友達と遊んでいました。これでなんで先行きやっていけると思ったんでしょう。あんぽんたんですね。

――『まずは一報ポプラパレスより』受賞時、ジャンプに掲載されたプロフィールに、「肉体労働のアルバイトをしながら一日3冊の読書をこなし小説を書く毎日」とあります。専業作家になられたのはいつ頃のことでしょうか? また、一日3冊の読書というのはどんなジャンルの本を読まれていたのでしょうか?


 専業作家の定義にもよりますが、小説のお金だけで暮らせるようになったのはやや後で、確か早川書房で第六大陸を出したころです。つまり二十八歳ごろですか。それまでは建築のバイトをやめて、レジ打ち、引っ越し手伝い、ドラッグストアの棚卸、パン工場でちまきをまきまきする等、いろいろやって凌ぎました。この期間に成り行きで結婚したり子供が生まれたりしてますが、特に何の展望もなくやってました。妻ももちろん働いており、今振り返るとよくこんな適当な男についてきてくれたなと思います。
 一日三冊の読書というのは、おそらく格好づけの嘘だったと思います。さすがにそこまでたくさん読んではいません。しかしネタに詰まる都度図書館に行って、技術関係の開発譚や成功譚や宇宙の本をごっそり抱えて来て、読みふけったりしてましたね。

――ヤングアダルト向けレーベルで作品を発表するにあたり、キャラクターづくりで特に意識していた部分はありますか? また、ご自身の作品の中で特に思い入れの強いキャラクターを教えてください。


 読者の方はご存知だと思うんですが、私はキャラクターを特に際立てるほうではありません。プロットが先に立ちます。プロットを立て、それを進めていくのに適当な人材はなんであるかという形で、キャラを置きます。
 ひとつ常に気にしているというか、悩んでいることは、男女の配分です。スレイヤーズもARIELもヴェイスの盲点も、少女たちが主人公でした。それらが好きな私は古い言葉で言うと男らしくないところが強く、筋肉ムキムキの男性主人公が書けません。肉体的に弱いところのある女性をまず置いて、それを強くしていくという方向性が馴染みます。後に男も書き始めましたが、「男の姿をした、強くなった女性」だと捉えている傾向があります。
 根底には人はすべて一つの同種のアイデンティティであり、それが男や女や大人や子供として表出している、という認識があるような気がします。裸の弱い魂が、与えられた肉体や能力や社会的地位とどう折り合って生きているのかを、キャラクターたちに投影しているのだと思います。

――小川先生の作品では、作品ごとに異なる、世界観設定の深さも大きな魅力になっています。現代の日本と違う世界や社会を創造するにあたって、どのような着想や手順で構築していくのか教えてください。


 ひとつ前にまずプロットを立てると書きましたが、まずその源となるさまざまな技術運用――ロケット打ち上げだとか、郵便配達だとか、地質調査だとか、海洋開発だとか、感染症対策だとかのことです――を、現実世界から取材してくることが多いです。これには図書館の技術書のところを歩いて、面白そうな題材を拾ってくるのがよいです――と、十年前なら言うところなんですが、今もうネットで膨大な題材が日々流れてきますね。これがかえって煙幕になって、題材選びが難しくなっているところはあると思います。
 ここは逆に失敗譚を話しましょう。iPS細胞です。山中教授のあの大発見に刺激されて、私もiPS細胞を書こうとしたことがあるんですが、さまざまにひねくり回しても物語になりませんでした。あれはSFでいうクローンものにかかわる要素技術の一つで、iPS細胞で可能なことはクローンが可能とする大きな変革の、一部分でしかないんです。たとえていえば、iPS細胞で話を書くのは、とてもきれいなブローチを見つけたからといって、そのブローチを生かすための豪奢なドレスを仕立てるようなものです。もともとドレスを仕立てる手腕がなければできませんし、ドレス仕立てのほうが物語として大きくてブローチを従えてしまいます。
 見つけた題材が、書きたい話に見合ったものなのかどうかを、作家は考えなければなりませんが、これは何度も試して失敗するしかありません。私も現在進行形で苦労しています。

――二〇〇三年の『第六大陸』以降、SFに強い出版社である早川書房での作品発表が多くなっていますが、意識して作風を変えた部分はありますか? また、読者層の変化などは感じましたか?


 早川書房とのおつきあいは、二〇〇一年に種子島でH-2Aロケットの取材をした際のレポートを載せていただいたことに始まり、そこから宇宙ものを書かせてもらうという形で進んできました。けれども早川で出した「復活の地」は、異世界で関東大震災のような災害を起こすというもので、必ずしもハードSFではありません。SFが書きたいときには好きなだけ書かせてもらえるけど、それ以外も出してもらえる出版社という感じでしょうか。私の読者はもちろんSFが好きな人が多いんですが、それ以外の物語部分でも楽しんでもらえているように思います。

――二〇〇九年からは、全十部予定、既刊十四冊という大長編である『天冥の標』をご執筆されています。大ボリュームの作品を執筆される中で、これまでになかった経験、予想していなかった部分などありましたら教えてください。


 ジャンプ方面ではご存じない方も多いでしょうから補足しますと、天冥の標というのは西暦二八〇三年の遠い惑星に築かれた、植民地メニー・メニー・シープという場所で始まる話です。小さな町に異形の怪物が現れ、未知の感染症が蔓延し、強権的な領主が民衆を抑えつけ、人々が反抗に立ち上がります。そこから話はさまざまな時代の様々な人々へと広がっていきます。スターウォーズみたいな宇宙船や、ブラックジャックみたいな日本人のヤサグレ医師や、エロ漫画みたいなセックス都市や、不思議なヒツジが出てきます。
 私はこの話を棚が十段ある大きな本棚のようなつもりで始めました。各段に何を入れるかは大まかに決めてありましたが、細かな点はその場その場で作っていきました。すべての棚の中身は最後の十段目で結びつく予定であり、その十段目がほぼ予測通りガラクタであふれてごちゃごちゃになったので、今がんばってきれいに収めようとしています。
 予測しなかったのはこの話に九年かかったことで、その間に私は四十代になってしまいました。技量は上がっていますが体力は落ちています。結局のところ、小説を仕上げるのは体力です。これから小説を書く人は、もっとも大事なところに全力を突っこめるよう、体力の配分をよく考えてください。

次回更新は8月28日予定!!
他では聞けない、超貴重な「創作の秘訣」とは!?
お楽しみに!!

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