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第3回 ジャンプ恋愛小説大賞 結果発表
- 銀賞 賞金50万円+読者賞 賞金10万円 『豆橋さんはまめにガチ』P.N.三矢本まうい あらすじ 大手企業勤務の若手エース・唯我由衣は、オーバーワークにより休職を余儀なくされ、復帰すると子会社の喫茶店「ソワレ」に飛ばされてしまう。さらに店長の豆橋は、超イケメンの好青年と思いきや、バリスタの腕で他者を人間か否か判断するとんでもない人物で…… 講評 豆橋の強烈なキャラだけでなく、起伏に富んだ展開で飽きさせずに最後まで読ませてくれた。由衣と豆橋にふりかかる幾多のトラブルを解決することで深まっていく二人の関係性が、丁寧に描かれているため、二人の恋愛を応援したいと自然に思わせてくれる作品だった。
- 銀賞 賞金50万円 『リップノイズが聞こえる距離で』P.N. 雪村勝久 あらすじ ソーシャルゲームのシナリオライター・雛形十輝は、自身の書きたい内容と要求されるシナリオのギャップに悩んでいた。ある日、キャラボイス収録の立ち会いのため向かったスタジオで、若手人気声優・桜尚人と出会う。尚人は十輝の熱狂的なファンを名乗り……!? 講評 十輝の芯である創作を肯定してくれる尚人との出会いで心を掴み、やがて十輝の物語が昔の尚人を救ったことが示される構成が恋愛と巧くリンクしていた。主人公の同僚・明音も、尚人のファンでありながら十輝の恋を応援し見守ろうとする距離感が適切で好印象。
- 銅賞 賞金30万円 『鯨の歌』P.N. 泉いつか あらすじ 高橋はるかは人に触れると気持ちが悪くなる体質のために学校に馴染めずにいた。ある時はるかは校舎裏の海から聞こえてきた歌声に惹かれる。意を決して歌声の主を探しに行くと、海の近くの神社から歌は聞こえていた。そこにいたのは同じクラスの伊奈勇人で……!? 講評 感情や情景の描写力があり、恋をすることでの主人公の成長をしっかり描けている好感度の高い作品。伊奈くんのキャラもよかった。ただ、後半で一気にファンタジーになってしまうのは強引にみえる。また、伊奈くんが実は鯨であるという設定ももっと活かしてほしかった。
- 特別賞 賞金10万円 『終わる世界の終わらない失恋』P.N. 電気泳動 あらすじ時任一道は23歳の大学院生。中学の同級生・疋田佳子への失恋を引きずる彼は唯一の友人であるAIのアイと引きこもり生活を送っていた。だが、彼の未来予測プログラム『箱庭』が、一か月以内に人類は滅ぶと予言する。世界が終わる前に佳子に連絡すると決めた一道だが……!?講評 世界の終焉がツチノコの発見など独自のエピソードの集積で描かれていて新鮮だった。主人公とアイの掛け合いも軽快で楽しく、物語に意外性もあってよかった。しかし、AIの正体である佳子の目的が回りくどく、マッチポンプではないかという意見もあり、評価が分かれた作品。
最終候補作品
- 『彼女の手を握るまで』P.N. 藤咲准平 あらすじ ツッパリ高校生の邦忠は、マッチングアプリを通じて初デートに挑むもあえなく失恋してしまう。新学期、クラスでいじめの現場を目撃するが、いじめられていたのはアプリで出会った少女・マユミだった。デート時にツッパリ姿ではなかった邦忠の正体に、マユミは気づかず…… 講評 キャラクターの設定・配置の仕方、構成などはベタでありながらも、読みやすくきれいにまとまっていた。今後は演出や物語の展開にも力をいれて作品づくりをしてほしい。邦忠がモテない理由に関しては自業自得な面もあるので、感情移入しづらかったのも残念だった。
- 『ミミズク土偶の夏』P.N. 仁志原駿介 あらすじ ゲーム好きの大学生・浅倉タツミは、友人の誘いで夏休みの期間中、縄文時代の遺跡を発掘するアルバイトを始める。縄文オタクの学生・浦部萌歌に作業を教わりつつ、どこかゲーム感覚で仕事をこなすタツミ。そんなある日、彼はとてつもない遺物を掘り出した……!! 講評 遺跡発掘という珍しい題材についてしっかり調べられている。青春コメディとして楽しめる反面、大学生同士の恋愛としては少し幼く、物足りないところもある。恋の嬉しさや辛さなどの感情や萌歌との関係性の推移などもっと掘り下げられるとよかった。
- 『オンユアマーク』P.N. 椿ゆず あらすじ 某漫画の登場人物と同じ名前の少女―赤木晴子―は、先輩の守が好きだ。勇気を出して告白したが、彼は同性愛者であった。そして守には好きな人がいるという。名前は桐島圭吾。陸上部のエース。しかし、桐島にもまた好きな人がいて……。 講評 入り組んだ人間関係だが、シンプルな恋愛感情を丁寧に拾って描写されている。ストレスなく読むことができた。とはいえ、構成には難があり、視点変更が有効に働かないところがあったり、話を進めるためだけに登場するように見受けられるキャラクターもいた。
- 『私が豚になるまでの4ステップ』P.N. 真田五季 あらすじ デザイン課の女性課長、中原一人(29)。残業四徹目を終えた彼女は会員制高級レストランで、交際中の高見警視(49)に婚約指輪を渡しプロポーズするが断られる。そのとき、バイクでドアを蹴破り、白井という男が現れる。「職業は動物」という白井に、一人は「堕落する方法」を学ぶことに…。講評 共感しづらいキャラクターの複雑な感情を、「堕落するためのステップ」という手段と予想もつかない展開で興味深く描いており、作者の才能と力量を感じる。だが、過去の設定が多いあまり、肝心の主人公の恋愛模様に焦点を当てきれておらず、恋愛小説としての魅力が薄かった。
編集部講評
- JUMP j BOOKS編集部 編集長 千葉 “恋愛”を描く時、“恋愛”している主要キャラクターたちだけを描写し共感を求めるのには限界があります。今回の選考で強く感じたのは、『自分ではどうにもならない感情に振り回され、どう行動したら正解なのかもわからずとても不安な状態(=恋愛状態)』にある主要キャラクターたちの支えとなる人物の描写で差がついたな、ということでした。その描写によって、主要キャラクターたちに、応援や肩入れしたくなるようなリアルさが与えられ、作品世界に没頭できるようになります。
また、新型コロナウィルスの流行により、常識や価値観がひっくり返ってしまった今だからこそ、変わらない普遍的なもの、人を愛することや大切に思うことを描くことの意味を感じました。
どんな社会になっても、世界から“恋愛”がなくなることはありません。
真正面から取り組んだ作品を、お待ちしています!
第4回ジャンプ恋愛小説大賞
(2021年3月31日締切)募集中!!
次なるデビューは君だ!!
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