――6月4日に『約束のネバーランド~ノーマンからの手紙~』が発売となりました。原作は「このマンガがすごい!2018オトコ編 第1位」に選ばれた話題性の高い作品ですが、最初に依頼を受けたときにプレッシャーなどはありましたか?
お話をいただいた当初はかなり及び腰になっていました。作品自体はすごく面白いなとは思いながら読んでいたんですけど、緻密な構成で組み上げられた、ミステリ、サスペンスの要素があるストーリーは私には絶対に再現不可能なんじゃないだろうかという不安が強くあって...担当することへのハードルはすごく高かったですね。
――執筆に踏み切ったきっかけなどはあったのでしょうか?
担当編集の方から、本編がサスペンス要素強めの展開で進んでいく中で、そのときにキャラクターがどんなことを考えていたのかとか、主に心情面の部分で読者の方がもっと知りたい! と思う所があるはずだから、そこに焦点を当てて書いてみないかとアドバイスをいただいたんです。
白井先生や週刊少年ジャンプの担当編集の方にもその方向性で企画を提案してくださるとのことだったので、私にもできるかなと思ってチャレンジしてみることにしました。
本編では描かれなかったサイドストーリーをノベライズするのがJUMP j BOOKSの強みでもあるし、これまでの経験を活かして書くことができるなら、と思えたのが大きかったですね。
――かなりプレッシャーも感じられていたとのことですが、執筆を終えられてどんなお気持ちでしょうか?
原作の白井先生から「よかったです」と言っていただけたので、それだけで満足しています(笑)。白井先生からは書いたものへ細かくアドバイスや感想などまでいただけ、本当に嬉しかったです! お忙しい中で申し訳ないくらいでした。
――『約束のネバーランド~ノーマンからの手紙~』の見所をお聞かせください。
出荷を控えたノーマンは想像を絶する状況におかれているはずなので、その心理面や葛藤とか、彼がみんなにどれだけ愛され、みんなのこともどれだけ愛しているのかといった部分を掘り下げて書くことができたらなと思ったので、そこに注目していただければ嬉しいです。
小説版を読んでいただいた後に漫画を読み直していただけたら、ハウス編はより楽しく読んでいただくことができるんじゃないかなとも思います。「実はこんなことがあって、だから今はこうなっている」という新しい視点で見ていただければ。
――ノベライズ作品を多数手がけられていますが、どんなところに注意して執筆にあたりますか?
原作を壊さないように、小さい出来事でも取りこぼしのないようにすごく注意します。 『約束のネバーランド』ではコミックスのすみずみにまでいろいろな情報が含まれているので、重要だと思う箇所にふせんを貼っていったのですが、結果的にほぼ全ページにふせんを貼ってしまうことになってしまいました(笑)。ただ、そうでもしないと「誰がどこで何をしていたか」とか、「このコマの回想はどこにあるか」、などがわからなくなるほど複雑で、設定の整理が大変でしたね。
でも、ノベライズをやるうえではそれぐらいに作品を読み込んだり、理解しようとしたりする必要はあると思います。
――手がけられてきたノベライズ作品はどれも原作の雰囲気が異なる作品ですが、書き分けはどのように意識していますか?
できるだけ読みやすくシンプルにそれぞれの漫画の世界に浸れるような文体というのを特に意識しています。後は、漫画の雰囲気を出せるように、それぞれの漫画の絵を文章にしたらどんな表現になるかなということを想像して書くことが多いですね。
ただ、その書き方をしているときに、自分では全然気づかなかったのですが、『きょうは会社休みます。』のノベライズを執筆していたときに、顔の描写がすごく多くなってしまって、漫画を思い浮かべて書きすぎてしまうのも難しいなと思ったことがあります。
ノベライズの文章を書いているときにはコマ割りされている漫画の絵を思い浮かべながら描いているんですけど、誰かの視点で書かれている小説とは違った書き方になってしまうんですよね。
――徹底的にその作品を研究し、世界に入り込むということが、ノベライズをするにあたり必要なことだとおっしゃっていましたが、そういった研究などからご自身の創作活動に影響があったりするのでしょうか?
キャラクター作りの幅や理解が広がったなというのが一番大きいですね。オリジナル作品を考えるときは、どうしても自分が書きやすいキャラクターとか同じようなキャラクターがたくさん出てきて、ノベライズの場合は自分では思いつかないキャラクターの気持ちを想像して書いたりする必要性があるので、色んなタイプのキャラクターの研究になります。
後は、客観的な視点で物語を見られるようになったことでしょうか。元々作品を好きなファンの方がいて、その人たちにとってどういうふうに書けば面白いと思ってもらえるのか、などを意識して書くのは自分の作品作りに繋がっていると思います。
――ノベライズに携わることでのやりがいはどんなところにありますか?
原作の先生から自分の書いた作品に反応をいただけるのは、一人のファンとしてこんなに光栄なことはないと思います。言葉を交わせるだけでも信じられない気持ちです。普通では体験できないことがたくさん経験できました。
ただ、その分プレッシャーがものすごくあって、自分の作品を誰かに書いてもらうって普通すごく抵抗があるはずだと思うんですよ。だから、しっかり作品を理解して納得していただけるものを書かなくちゃ、というのはいつも念頭に置いています。
次回更新は6月27日予定!!
受賞がゴールじゃない! 熱い応援メッセージをお届けします!
お楽しみに!!