◎編集長 島田久央からのコメント
『投稿者のあなたへ』
1993年、あなたは何をしていましたか?
今をさかのぼること25年とちょっと前、JUMP j BOOKSは週刊少年ジャンプの小説増刊企画として産声をあげました。小説賞が設立され、第1回の受賞者には定金伸治先生、村山由佳先生らが選ばれています。その後も乙一先生、小川一水先生、ほかにも数多くの作家さんたちがこの賞からデビューされ、エンタテインメント界で活躍されています。
四半世紀のあいだ、幾度かのリニューアルをしながら、この小説賞は進んできました。いつの時代であっても、ともに面白さを追求する新しい才能と出会うためです。今回のリニューアルでは、実際の出版を見据えて応募作品のページ数を規定し直しています。また小説フリー部門金賞の賞金は200万円に増額としました。
2018年、漫画雑誌から生まれた小説レーベルJUMP j BOOKSは、25周年を迎えます。漫画と小説の重なり合う面白さは、漫画から小説となるノベライズ、小説から漫画になるコミカライズと、表現のジャンルを超えて広がってゆきます。そして、アニメや実写にも道は開けてゆきます。それは国内にとどまらず、世界中へとつながってゆくのです。ぜひ、この面白さをともに創り、共有したいと思っています。
新しい時代をともに迎えるであろう投稿者のあなたへ。
新しい小説賞へ、ご応募お待ちしております。
エンタメ小説の大人気ジャンル「ミステリ」。「ミステリ」というと、ハードルが高いかも?と思うかもしれませんが、どんなストーリーでもなんらかの「謎」や「不思議」や「神秘的な現象」を内包し、それらをラストで解決していれば、立派な「ミステリ」です。キャラクターを強めに立ててもよし、舞台設定に凝ってもよし。「ミステリ」は実は自由度の高いテーマですし、起承転結を付けやすく、短編向きのテーマでもあると思います。ちなみに私の好きな短編ミステリはJ・ディーヴァー作品です❤
ほとんどの小説を読み進めていく上で、読者は「想像すること」を要求されることがあります。ただ、その「想像する」という行為の中身によって、小説の面白さは段違いになります。内容に不自然なことが多すぎて読者に「想像を強いる」もの。そして、読み進めていると先を「想像したくなる」もの。もちろん後者のほうが面白い作品であり、作品の世界に引き込めていると思います。「ミステリ」というテーマで、沢山の人に「想像したくなる」作品の可能性を創造してみてください。
リニューアルする新人賞、どんな作品と出会えるのか今からわくわくです!! 応募者の皆さんに一つあるとすれば、『この話の何が面白いのか』自身ではっきり理解できるくらい推敲して、ということです。一つの物語が積むことができる面白さは、実はそんなに多くないようです。登場人物、設定、構成、全てを見直しあなたの考える『面白さ』がはっきり読者に伝わると確信できるまで磨いてみてください。あなたの物語はきっと『面白い』はずです。だから、読み手にそれを最後まで伝えきってください。応募待ってますねー!!
テーマ部門、短編でお題が「ミステリ」となると、「実は主人公が黒幕だった、系の叙述トリック一発ブラックなエンド」の作品が多数届くだろうと予想しています。これはテーマ部門に常に一定数届くタイプで、余程の企みがなければ編集部員を驚かせることは困難でしょう。むしろ、トリックや仕掛けを暴く中でキャラのどんな心理を描けるか、読者の心情をどう揺さぶれるか、の方に挑戦して欲しいです。湊かなえ『告白』の第一話はもともと短編推理小説賞の受賞作で、ここだけでも見事な構成の傑作です。ぜひご一読を。
真実はいつもひとつ! されども「ミステリ」は無限大! 大がかりなトリックから、日常のちょっとした不思議まで、世の中には「ミステリ」につながるヒントは、たくさん転がっています。それをいかにして、自分の作品のアイデアにつなげられるかが大切だと思います。いろんなモノに触れてください。みなさんの応募作、楽しみにお待ちしております。じっちゃんとばっちゃんの名にかけて!!
「説明」と「描写」の違いは何でしょう? 端的に言うと、説明は、作者が正解を〈書いてしまうこと〉。描写は、読者に〈読ませること〉です。すなわち、読者が正解を探したくなるように書くことです。例えば、恐怖に直面したとき、その心の動きを「怖い」と書くのが説明、どんな行動を取るのかを書くのが描写です。説明で済ませていいところもあります。ですが、主人公が正解を探そうとする姿を書くのが物語であり、しかも小説は言葉だけで出来ているのですから、ぜひ〈読ませる描写〉を意識して、言葉を磨きましょう。描写にこだわった作品、お待ちしています。
僕が新人賞に応募してくださる皆様に期待することは、「登場人物の心に共感させてくれること」です。“ミステリ”なら、謎を仕掛けた人がいるとして。なぜその人は謎を仕掛けたのだろうという心情部分を、大事にしてほしいです。きっとそこに共感出来るかどうかが、読者の感情を揺さぶるポイントだと僕は思うので。藤原の感情を揺さぶりまくって、3日くらい会社行きたくなくなるような原稿、お待ちしています。
今回のテーマは「ミステリ」ですが、分量からすると短編一本ほどの内容に相当するかと思います。ミステリを書こうとすると書かれる情報が必然的に多くなり、文章が説明的になりがちです。ただ書きたい内容だけを書いたのでは構成がグチャグチャになり作品の魅力は一気に失われるでしょう。読み手を意識し、時には情報を取捨選択してください。アイディアを手放すことを怖く感じるかもしれませんが、思い切った断捨離ができるかがプロへの大きな一歩となります。