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第5回結果発表
銀賞+賞金50万円
- 『お前を殺してでも、幸せになりたかったから。』P.N 雨宿火澄
- あらすじ いじめに遭い不慮の死を遂げた入月出希留は、三年後に学校の地縛霊として復活した。出希留は復讐も叶わず学校をさまよううちに、女子生徒に乱暴した男子生徒を呪殺してしまう。それに気づいたのは転入生の少女・楢花。彼女の正体は、悪霊を喰らう不死身の化物で、霊である出希留を捕食しようとする。
- 講評 霊を主人公に据えながら、様々なシチュエーションの工夫で主人公と読者を恐怖させる話が作れていた。グロ・バイオレンス描写に迫力がありつつ、それがただの悪趣味にならず、主人公を襲う霊能力者の邪悪なキャラを際立たせるのに繋がっている。ヒロインのキャラが強く、バディ物のラノベとしても達者。
特別賞 賞金10万円
- 『死人の花嫁』 P.N.黒井ひよこ
- あらすじ 婚約者を連れ十年ぶりに帰郷した早苗。彼女がかつて振った幼馴染・翔太は死亡していたが、早苗を翔太の冥婚の相手にしようと目論む翔太の母・優子は、早苗へ攻撃を始める。
- 講評 構成・文章とも危なげなくまとまっている。冥婚という題材の他、優子の初登場場面など、細部の演出も魅力的。周囲の人間を巻き込むなど、もっと派手な展開も書いて欲しい 。
特別賞 賞金10万円
- 『オビナ様』 P.N.霧野つくば
- あらすじ牧山佑紀は引っ越し先の鬼無里村で人形供養の神社に訪れた際、等身大の市松人形に襲われた。やがて佑紀の体に大量の瘤が生じる。村人は「オビナ様の呪い」だと怯えるが…。
- 講評 安定した筆力と構成力を持ち、呪いの由来にまつわるドラマもよく練られていた。良質のジュブナイルに仕上がっているが、終盤でもう一波乱あれば更にホラー性が高まるはず。
最終候補作
- 『Heavy Links』 P.N.雪村勝久
- あらすじ 高校生の蔵石蓮は、少女を殺害する夢に悩まされていた。ある日、彼が友人に誘われて見た映画に主演していた新人女優は、彼が夢の中で殺し続けている少女に瓜二つだった…。
- 講評主人公に殺されようとするヒロインを据えた、キャラ性の強いボーイミーツガールとして丁寧に作られている。終盤、主人公の力以外で解決する部分が大きかったのがもったいない。
- 『イツキ』 P.N.岩沢泉
- あらすじ 女子高生・加藤めぐみはクラスの人気者である神田亜衣加の機嫌を損い、スクールカーストの下位に落とされる。そんな折、めぐみは「首を吊って死ね」と言う縊鬼・イツキと出会う。
- 講評 高校生の人間関係の機微がリアルに切り取られていた。終盤のサプライズも効いている。導入に対して、イツキのキャラや主人公との関係が弱かったことが物足りない部分だった。
- 『3LDK ~女子高生とストーカーの密室劇~』 P.N.鈴木純一
- あらすじ マンションに一人暮らしをしている倉科愛香は、自宅内で親友の死体を発見する。更に着ぐるみ姿の不審者が侵入を試みていることに気づき、部屋から脱出しようとするが…。
- 講評3LDK舞台で正体不明の殺人犯に対する籠城戦、という目を引くシチュエーションで長編を描き切ったことは好評価。キャラの好感度や基礎的な文章の力を更に磨いて欲しい。
- 『よく似た部屋』 P.N.真田五季
- あらすじ 謎の男に誘拐された少女・飯名絵里は、同じ境遇にある少女たちと共に閉鎖環境で生活していた。ある日、少女の一人が脱出口を掘っていたことが発覚し、絵理は選択を迫られる。
- 講評極限状況における少女たちの葛藤と対立を描いていて感情移入しやすかった第一部の展開に比べ、第二部以降はキャラ数の多さやスケールの大きさなど入り込みにくい内容だった。
編集部講評
- ホラー賞宣伝隊長・ミニキャッパー周平
- ●総評
金賞受賞作の出た前回に比べて、大人しい作品の多かった印象です。特別賞の二作は、基本的な小説技術は出版されていて不思議のないレベルでしたが、企画と事件が小さくまとまっていることが弱点でした。一方で、銀賞受賞作は、主人公が悪霊であるという斬新さと、主人公を追いつめる敵キャラが生み出す過激な残虐・恐怖シーンの描写力、それらを青春ドラマに落とし込んだ手腕が評価されました。エログロを安易に描くだけでは多くの読者を獲得できませんが、物語的必然で納得させて、ドラマで引き込める技術があれば、企画や内容の過激さは、読者を掴む強い武器になるでしょう。
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