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第1回結果発表 第2回結果発表 第3回結果発表 第4回結果発表 第5回募集要項

第4回結果発表

最終結果発表 最終候補作 総評 2次選考結果 ここまでの総評

金賞 書籍化!!+賞金100万円
  • 『マーチング・ウィズ・ゾンビ―ズ』 P.N.折輝真透
  • あらすじ 大学生の藤堂は、文芸部の松尾先輩、モデルでイケメンの白石、元ラグビー部の水口と一緒にゾンビを見に行った先で襲われ、ウィルスに感染してしまう。「ゾンビの会」という自助グループに入った藤堂は、足を切断した少女・星宮と出会い、どちらかがステージ5のゾンビになったら殺す約束をする。悲劇的な事件を経験した藤堂は自分もステージ5が近いのを知り、その過程で女子大生の江波と知り合い、四人と最後の思い出づくりに奔走。だがすべてが空回りし、皆がバラバラになってしまう。藤堂は四人にあるメッセージを込めて小説に記す…。
  • 講評 「主人公が自我を失っていくなかで、友達に居場所を取り戻してもらうために、自分を犠牲にして書いた小説」というコンセプトと、それを表現可能にする小説のテクニックが非常に優れていた。主人公の語りによって、過去・現在・未来の時間的な距離をコントロールすることで、死にゆく者が死に向き合う恐ろしさ、せつなさが、素晴らしく表現された青春小説だった。本作の構成、ストーリー、描かれる感情は、小説や物語の特性を熟知していなければ表現不可能である。一般の人にも読んでほしい、ユーモラスで広く普遍性に富んだ、小説の面白さを再確認できる小説だった。

特別賞 賞金10万円
  • 『おともだち係』 P.N.雪村勝久
  • あらすじ 女子高生の紗奈は、ある日幼馴染の正樹から「おともだち係」という怪談話を聞く。紗奈はそれ以降、家の壁に貼り付く人影やベランダから覗く首、球体人形のような子供など、様々な怪奇に遭遇する。やがて身の回りの人間が怪異に「なり替わられる」現象によって追い詰められていき、友人や家族にも疑いの目を向けるようになる。
  • 講評 主人公の「おともだち」になろうと近づき、邪魔になる者=主人公の周囲の人間を殺していくモンスターという発想が優れていた。その接近を様々なアプローチや見せ方で描き、「怖くて驚きのある」シーンを多く作ることにも成功していた。終盤の友人への態度など、主人公の感情に共感しにくい部分があるのがもったいなかった。

特別賞 賞金10万円
  • 『夢幻抱擁 ~This Rotten World~』 P.N.雨宿火澄
  • あらすじ 高校生の道久は、ある日突然、周囲の世界が、不気味な市松人形と害虫に満ちた悪夢の空間にしか見えなくなってしまった。道久は絶望の中、PC越しに出会った「情報生命体」を名乗る少女・アーシャに救われる。アーシャの存在のみを希望に日々を生きる道久だったが、彼の家族や友人たちは、アーシャの手で無残に殺されていた。
  • 講評 主人公の周囲の激変した世界の描写もインパクトが大きかったが、何よりも、饒舌で人を惹きつける一方で、倫理観を踏み躙り超常的な力で殺戮を繰り返していくアーシャのモンスターとしての存在感、恐ろしさが圧倒的だった。メタ的な結末は、驚きよりは唐突感が勝って、主人公の存在が希薄になってしまうところが残念だった。


次作に期待!! 最終候補作
  • 『我が子を恨み、殺すより――。』 P.N.真田五季
  • あらすじ 中学生の加々良は、暴力でクラスを支配していたが、ある日、いじめていた相手である相馬が自殺する。責任を追及され、窮地に追い込まれた加々良は、相馬が死の直前に会っていた少女・泉が真犯人であると断定し、その証拠を集めようとする。しかし、相馬が口にしていた『怒りの慈母』なる呪いに沿う形で級友が不審死し……。
  • 講評 一歩間違えばどん底に落とされてしまうスクールカーストの描写がリアルであり、イヤミス的に主人公が追い詰められていく展開をぐいぐい読ませる筆力があった。学校の人間関係にスポットを当てた展開と「母親」というモチーフにズレがあったこと、真相部分でホラーとしての怖さを半減させる箇所があることで評価が分かれた。


  • 『※ただし、美人に限る。』 P.N.織星伊吹
  • あらすじ 顔の美しさを何よりも重要だと考える少年・タツヒロの前に現れた絶世の美少女、氷柱雪カナタ。しかしタツヒロは告白もできないまま大人になり、彼女の結婚式に招かれるのだが、突然小学生時代へタイムリープしてしまう。子供時代とは違い、氷柱雪と結婚する未来を夢見て行動を起こすも、同時に奇妙な事件が起こり始め… 。
  • 講評 ストーリーの目的が明確かつ、本編も簡潔な文章で書かれており、序盤から物語に引き込む力が大変高かった。しかし、タイムリープできた理由が謎のままだったり、専門的な用語などの調査が足りておらず、後半はその粗い部分が気になり物語への集中がそがれてしまったので、細部にまでこだわった作品作りを意識してもらいたい。


  • 『ロザリンド』 P.N.栗谷美嘉
  • あらすじ 貴族であるホフマン・シュタイフの屋敷で使用人として働くエマは、同じ使用人であるアンジェリカや、メイド長のマリアから敵視されていた。エマは、親友でありホフマンの娘であるロザリンドとともに、マリアの殺害を計画するが、その実行中にアンジェリカとホフマンを殺してしまう。更に、目を離した隙に死体が消失し……。
  • 講評 残虐シーンの描写に筆力を感じる。読者を驚かせよう、読者の予想を裏切ろうという企みに満ちた作品であり、その仕掛けは成功していた。反面、多くの登場人物が「どんでん返しを機能させるための装置」または「犠牲者役」になっている感があり、キャラの厚みを感じづらい部分もあった。人間を書く技術を更に磨いてほしい。


編集部講評
  • ホラー賞宣伝隊長・ミニキャッパー周平
  • ●総評
     初の金賞受賞作が、恐怖以上に青春小説としての味わいを主眼においた作品となったことは意外でしたが、リアルでグロテスクなゾンビ化を表現できる描写力の高さも相まって、「読者の感情を強く揺さぶる」という点でエンタメとして図抜けていたことは間違いなく、スムーズに金賞受賞が決まりました。

     『おともだち係』は怪異の特性と恐怖シーンの描写、『夢幻抱擁 ~This Rotten World~』はモンスターのキャラクター力が評価され、特別賞の受賞となりました。特別賞2作については課題も見受けられますが、それぞれの持つ武器に、将来性を見込んでの評価です。

     第3回の受賞作がミステリ的な内容を含む2本だったためか、今回の応募作には、ミステリ的な後半を意識したものも少なくありませんでしたが、「『謎解き』『真相』を作ろう」と苦心するあまり、キャラが記号化したり、筋書きが複雑化しすぎたり、ドラマ性や怖さが削がれたり、といったものも見受けられました。プロットにミステリ的な捻りを加えることは作品のクオリティを高めうる一方、御しきれなければ逆効果をもたらします。ミステリ性に限ったことではなく、要素を足し引きする際には、「自分がいま書いている作品をより面白くすることに繋がるかどうか」を何より優先的に考えて下さい。

     3次選考までの講評で書いたとおり、ジャンプホラー小説大賞は、40字×32行で118枚以内という分量の規定であり、「単行本で言えば250ページを切る分量」です。

     『マーチング・ウィズ・ゾンビーズ』は、このページ数の物語としては登場人物の多い作品でしたが、「現代日本が舞台だが、病気としての『ゾンビ化』が存在し、不治の難病として扱われている」という「現実から少ししか違わない世界」を舞台にしていることで、少ない説明で説得力を生み、群像劇をじっくり描くことができていました。

     応募作の中には、ページ配分を誤ったためか、駆け足で終わっている作品も少なくありません。恐怖であれ感動であれ、読者に強い印象を与えるためには、結末を疎かにするのは得策ではありません。『マーチング・ウィズ・ゾンビーズ』は、クライマックスの盛り上げやラストの一行まで、きちんと着地点を決めて書かれていたであろう作りになっており、心を打つ終盤が作れていました。応募者の方は、ぜひ「40字×32行で118枚以内でできることは何か」とともに、「クライマックスをどう盛り上げ読者を楽しませるか」と「ラストをどう締めて読者にどんな余韻を感じさせるか」も忘れずに、作品執筆に挑んでみて下さい。

     11月中に、「ジャンプホラー小説大賞の傾向と対策」と称して、第1回から第4回までの審査を経ての、賞の傾向分析を掲載したいと思います。 応募者の方はぜひ受賞へ向けた執筆のためのご参考にしてください。
最終候補作品
  • おともだち係 P.N. 雪村勝久
  • ※ただし、美人に限る。 P.N. 織星伊吹
  • マーチング・ウィズ・ゾンビーズ P.N. 折輝真透
  • 夢幻抱擁 ~This Rotten World~ P.N. 雨宿火澄
  • ロザリンド P.N. 栗谷美嘉
  • 我が子を恨み、殺すより——。 P.N. 真田五季 


2次選考通過作品
  • あなたのお母さんです P.N. 東雲あきら
  • アナトプラの声 P.N. 巻爪正一
  • ある朝目を覚ますと、 P.N. 虫の人
  • 一命のマコト P.N. 哲
  • オカルト娘と怪奇譚 P.N. 黒唯アイリ
  • おそなえごっこ P.N. 森内ゆい
  • おともだち係 P.N. 雪村勝久
  • 顔剥ぎ少女の伝説 P.N. 川井佐太郎
  • カタリ ―誰が彼を食べたのか?― P.N. 朝倉土鋳
  • 彼女の体 P.N. ゆくなが
  • 痒い! P.N. 伊藤ミツモト
  • キマイラに捧ぐ P.N. 春戸稲郎
  • くまちゃんのごはん P.N. 小川了
  • 幻覚の森 P.N. 篠田悠
  • 山村の憑窩 P.N. 別府崇史
  • G  P.N. たつや
  • スタンポンの穴 P.N. 柿ノ木コジロー
  • ※ただし、美人に限る。 P.N. 織星伊吹
  • 誰でもできる「呪いビデオ」の作り方 P.N. 大海尋介
  • 伝染する神 P.N. 池窪浩一
  • ドリイ P.N. 猫文字隼人
  • トリフィド時代が来る前に P.N. 水城進
  • 春は光に恋をする P.N. 松川鈍
  • 化け猫が見てた P.N. 今岡英二
  • ヒトブクロ P.N. 萩野真
  • 不気味の谷のほたるさん P.N. 白木レン
  • マーチング・ウィズ・ゾンビーズ P.N. 折輝真透
  • みすかんぶ P.N. 渡辺宇太郎
  • みなさんおはこんばんちは。ホラーゲーム実況の時間だよ。 P.N. 因幡雄介
  • 夢幻抱擁 ~This Rotten World~ P.N. 雨宿火澄
  • メイティングキラー P.N. しち
  • RAILRUN P.N. 秋原タク
  • ロザリンド P.N. 栗谷美嘉
  • 我が子を恨み、殺すより——。 P.N. 真田五季 


編集部講評(3次選考までを終えて) 
  • ホラー賞宣伝隊長・ミニキャッパー周平
  • ●この「長さ」で書けることへの意識を   ジャンプホラー小説大賞のページ上限は、40字×32行で118枚というものです。これは、ざっと計算して単行本の書籍で250ページを切る長さ、ということになります。 
     選考途中で落ちてしまった作品の中には、この分量的な制約を意識できていないものが散見されました。 
     たとえば、異世界や遠未来を舞台にした作品では、世界設定や大量の造語を説明することにページをかけすぎてしまい、キャラクターや怪異の魅力、ドラマを描くためのページが足りていない、そういった点で惜しかった作品がしばしば見受けられました。 
     キャラクター数が多すぎて巧く物語を回せていない、あるいは、大きなスケールの物語を描こうとしているのにページの都合上主人公の周辺しか描かれていない、などで落選となった作品もあります。 
     プロットを考えて書き始める前に、「この物語は40字×32行で118枚以内におさめて面白く書ききることができるものなのか」をまず検討し、それをクリアできるようなプロットや書き方を選択するように心がければ、より受賞に近付きます。 

    ●「短い」作品について   ジャンプホラー小説大賞はページ数の下限を設けていません。これは、短編でも優れた作品であれば賞を与え、デビューに繋げてもらいたいという考えによるものです。
     ただし、書籍を出版するに当たっては、どうしても本一冊の分量が必要になります。それはつまり、受賞後、本一冊分に届くよう、受賞作の他にも新たに短編や中編を書いて頂くことになる、ということです。それゆえに、筆力・構成力・文章力・キャラもしくは怪異の魅力など、長編以上に「完成度」の高い才能を求めることになります。 
     今回、最終候補に残念ながら短編サイズの作品は残りませんでしたが、つまり二次選考通過に名前があった方のうちで、短編を書かれていた方々は、「その分量の応募作の中では」最も優れた作品だった、ということです。そういった方々はぜひ次回、更にクオリティを上げた短編で挑んで頂く以外にも、連作短編や長編を書いて応募して頂くという選択肢もご検討下さい。 

     最終選考結果発表時にも、改めて全体の総評を掲載いたします。 

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