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第2回 ジャンプ恋愛小説大賞 結果発表

  • 銀賞 賞金50万円 『週末のデートはスタジアムで』P.N.戸澤恵 あらすじ プロのサッカークラブ、アーリ世田谷でクラブスタッフとして働く元サポーターの二上は、ボランティアスタッフの優愛に想いを寄せていた。ある日の試合中、悪質なクレーマーが優愛にからんでいるという情報をつかみ急ぎかけつけるが…。美人だが口の悪いサポーターの亜里沙、クラブマスコットにガチ恋をしてしまっている高校生の翼、戦力外通告を受け家庭内に不和が広がる選手の幸人の恋愛がそれぞれ重なってゆく。 講評 群像劇を書ききるには高い構成力が必要となるが、各話ともにそれぞれ違う趣を持った(=立場や個性の異なった登場人物がリアリティをもち、丁寧に書き分けられている)作品となっており、飽きずに最後まで楽しく読むことができた。素直な文章や構成で迷いなく書かれていたのも好印象だったが、それゆえに展開がある程度予想がついてしまったのと、作品のテーマと恋愛部分を絡め切れていなかったところも目立ち惜しくも銀賞となった。

    読者審査員からのコメント抜粋表現力のある作家さんだなと思いました。一文一文、言い回しに無駄がなくて、質の高い作品だったと思います。様々な視点から書かれた群像劇は、一話一話リセットされて読みやすかったです。(中略)週末の良く晴れた昼下がりに読みたい作品。(20代・女性)
  • 読者賞 賞金10万円 『きみとぼくのトロイメライ』P.N.夏嶋クロエ あらすじ 主人公・シマは、人間の声だけがノイズに聴こえるという特殊な聴覚の持ち主。シマは人と関わるのを極力避け、四六時中ヘッドホンを装着して自分で作曲した“うた”のない音楽ばかりを聴いていた。高校卒業と同時にさびれた古いマンションで一人暮らしをはじめたシマ。太陽の磁場反転がニュースになったある日、隣の部屋から『人の声』が聞こえてくる。その声は、1984年から届いたある女性の声だった。壁と時間を越えた恋がはじまる。 講評 壁越しの、時空を越えた恋愛を描いた佳作。90年代に乙一先生が書いた作品を思い起こさせるような、切なさを予感させる展開。少し饒舌にすぎるがそれぞれの背景を感じさせるキャラクターたちと、要所にちりばめられたレトロな雰囲気の小物が描写力の高さを伺わせた。しかし一方、ラストにつれてご都合的に見える場面や展開が悪目立ちした。最後まで気を抜かずに読者に与える感情をコントロールしていくことが課題であった。

    読者審査員からのコメント抜粋 冒頭、なぜカギを拾ってくれた人が言葉を話せないのだろうと不思議に思っていると人の言葉がノイズに聞こえるという設定が明かされて、引き込まれた。そして時空を超えた隣人の声だけがききとれるという設定はロマンチックだし、姿はみえなくても恋に落ちるきっかけとして十分に感じた。(20代・女性)

最終候補作

  • 『これはもう、正義の味方になるしかない』P.N.仁志原駿介 あらすじ 高校生の沢村誠二は同じクラスの内海舞耶に片想いをしているが、過去のトラウマからいまいち接近することができない。そんな彼らの前に「宇宙から自転車で来た」と自称する島田春人が転校してくる。爽やかな春人に舞耶を奪われるのではと危機感を募らせる誠二。ところが日常は突如として一変する。町に映画を観に行った三人の前に巨大怪獣が出現したのだ。追って現れた謎の巨大ヒーローのおかげで事態は収束したものの、誠二と舞耶はその正体が春斗であると察して…!? 講評 タイトルの使い方が見事で、クライマックスでこの心情にいたるまでの誠二の変遷を丁寧に書けている。中心となる三人の会話も軽快で面白かった。他方で恋愛という点からみると、春斗を魅力的に書こうとするあまり、誠二と舞耶の関係性の掘り下げが少なくなっているのが惜しい。また、突拍子もない展開、描写が多いのは読んでいて楽しい反面、後半につれて何でもありになってくるので作中のリアリティラインは守ってほしい。

    読者審査員からのコメント抜粋 アニメ化か実写化してほしい! 勢いとフレッシュさもあり、設定の作り込みの丁寧さもあり、完成度が高いと思った。宇宙からやってきたイケメンヒーローにやきもきする脇役の主人公を応援したくなる。(20代・女性)
  • 『君はさよならよりも遠い場所』P.N.夏美 あらすじ 舞台は茨城県大洗。高校二年生の小沼祐介は、突然転校してきた美少女・登坂七海のことが気になっているが、まさか2人が付き合うことになるとは思っていなかった。きっかけは夜の水族館。夜勤をしている父親の元へ弁当を届けた祐介は、偶然、大水槽の中にいる七海を見つけてしまう。彼女は人魚に変身するわけではないが、ときどき海水に浸かりたくなる性質を持つ、半人魚(ハーフマーメード)だったのだ。 講評 丁寧な情景描写で積み立てて作られている物語だった。ファンタジックなモチーフを物語の導線としてうまく生かしている。この作品は最終候補の中でもっとも“恋愛”を直球で書こうとしていた。設定やキャラクターについてはもっと掘り下げが必要。なぜ七海が祐介を好きになるのか、というところは、明確な物語的演出が無く腑に落ちなかった。ご都合的な展開に見えてしまい、感情移入の妨げとなった。

    読者審査員からのコメント抜粋 最初の掴みがうまい。水の中で揺らめく少女と、それをたまたま夜の水族館で見つけた主人公…これが、面白くないわけがない、と思えるスタートでした。(20代・女性)
  • 『僕の右手と俺の左手』P.N.本田七人 あらすじ 妻と幸せな暮らしを送る春日陽向。しかしある日突然、妻の葉月が病に倒れ死んでしまった。悲しみに沈む陽向の元に現れたのは、“生神”と名乗る男。ハル、と名乗った彼は、陽向に”人を生き返らすことができる能力”を与えると言うのだが……。 講評 構成は面白い。説明無しで交互に2つの物語がザッピングしながら進んでいくように見えるが、終盤の展開を読者は驚きを持って迎えることになる。キャラクター描写についてはもっと読者を意識して造詣してほしい。妻・葉月の言動は、多くが不安定で独善的であり、なぜ主人公が彼女を好きになったのかわからなかった。

    読者審査員からのコメント抜粋 最初は二つのストーリーが群像劇のような感じで進むのかと思いきや、仰天。(中略)表現力の高さからアニメーションではなく、実写化してほしいとも感じました。(20代・女性)

編集部講評

  • JUMP j BOOKS編集部 編集長 千葉 “恋愛”というテーマを、真正面から書ききる。それは想像より難しいのかもしれない……。それが、今回強く思ったことです。その中でも入賞した2作品は“恋愛”を主軸に置くことに真摯に取り組んでいました。また、それぞれ1文(キャッチコピー程度の短文)で内容が伝えられるのも、強みです。それはそのまま、映像化など多面的な展開に向いていることにもなるからです。
    ジャンプ恋愛小説大賞は、恋愛小説の入り口として、ジャンプ各誌(少年ジャンプ+などアプリも含む)との連携を取りやすい賞ですが、その作品が1番輝ける場所に柔軟にエスコートできる賞だと自負しています。ぜひ、あなたが1番ステキだと思う恋愛を真正面から書ききってご応募ください。お待ちしています!
第3回ジャンプ恋愛小説大賞
(2020年3月31日締切)募集中!!
次なるデビューは君だ!!

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