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第1回結果発表 第2回結果発表 第3回結果発表 第4回募集要項 編集部からのコメント

ミニキャッパー周平の応募者へのメッセージ。
ー第2回に応募された方、第3回の応募を目指す方へー


こんばんは、ミニキャッパー周平です。第2回ジャンプホラー小説大賞には、多くの方に関心を持っていただだいた結果、第1回以上に個性溢れる作品が多数集まりました。おかげさまで、最終候補作から書籍化2本を選出することができました。渾身の作品を応募してくださった皆様に、深く感謝致します。

 また、ご期待にこたえ、11月中には、第3回のジャンプホラー小説大賞募集開始の告知をさせていただきます。もうしばらくお待ち下さい。

 さて、第3回の募集を告知する前に、受賞を目指す皆さんの力になれればと思い、僭越ではありますが、選考にかかわった人間として、作品執筆へのアドバイスを述べさせていただきます。
 光る部分がありながら、惜しくも最終候補まで残らなかった作品は、おおむね、

①「飛びぬけたアイデアがある一方で、そのアイデアがうまく見せられていない」
②「構成や小説技術がしっかりしているものの、『新しさ』の面でもう一歩」


 このどちらかでした。

 まず、①について。これは「アイデアを活かしきれていない」ということです。

 たとえば、「手を握るだけで人を殺す能力」というアイデアを思いついたとします。
 では、その能力を持っているのは、どんな人物であればいいのか?

 主人公なのか、主人公の家族なのか、敵キャラなのか、探偵なのか、犯罪者なのか、学生なのか、教師なのか、科学者なのか、占い師なのか、子どもなのか、老人なのか、絶世の美少女なのか、絶世の美少年なのか、醜い容姿の持ち主なのか。
 様々なパターンが考えられますし、どんなキャラを選ぶかによって、物語のプロットは大きく変わるでしょう。邪悪な人間であれば能力を用いて連続殺人を行うかもしれませんし、アイドルだったとしたら、手を握るだけで相手が死ぬ能力には、むしろ苦しめられるかもしれません。アイデアをどういうキャラクターに結びつけるか、という選択はかくも重大です。

 そして、その異常な能力を、善意のために使うのか、悪意のために使うのか、数回しか使わないのか、何十回も使うのか、知能を活かして使うのか、ついうっかり使うのか、などなど、使い方ひとつで作品のテイストは変わっていきます。

 また、物語の舞台も、学校なのか、家庭内なのか、病院なのか、刑務所なのか、職場なのか、孤島なのか、大都市なのか、現在なのか、江戸時代なのか、未来世界なのか、様々に考えられます。身近な舞台を選べば、リアリティがあるぶんスケールが小さくなるかもしれませんし、変わった舞台を選べば、驚きがあるかわりにメインアイデアがぼやけるかもしれません。

 こうして、たったひとつのアイデアに対しても、無数にストーリーの可能性は分岐していきますが、その選択のひとつひとつが、物語の面白さを左右します。

 たとえば『DEATH NOTE』という作品は、「名前を書くと人が死ぬノート」というアイデアのみが優れているのではなく、キャラクターのエキセントリックな魅力を上乗せし、ノートを使って巧みな戦術を次々と展開させたことが、物語を極上のエンターテイメントたらしめたのです。

 アイデアがもつ可能性をさまざまに検討して、「読者を楽しませるために最良のプロット」を選び抜いて執筆することが、あなたの作品をより素晴らしいものにするでしょう。

 ②についてです。「新しさ」が無い、と言われても、どうすれば「新しさ」などという抽象的なものが手に入るのか、と思われる方もいらっしゃるでしょう。

 方法は幾つか考えられますが、今回は3つをご提案します。

 1つ目は、「異なる2つのものを組み合わせる」という手法です。
「バトル・ロワイヤル」は、一気に「デスゲームもの」というジャンルを一般化させてしまう革新的な作品でしたが、一方で、ゼロからジャンルを創造するほどの発想がなくても、組み合わせによって新鮮な作品を作ることは十分可能です。たとえば、同じデスゲームのジャンルに限っても、デスゲームと「魔法少女」や「アイドル」を掛け合わせた作品などが生まれています。
 また、Jブックスのホラーでいえば「ヤンデレ」と「怪談」のハイブリッドである『怪談彼女』が好評を博しています。「ゾンビ」に「教師」を合わせてみたら?「赤ん坊」に「超能力」を合わせてみたら? 「グルメ」に「クトゥルー」を合わせてみたら?「吸血鬼」に「金融業」を合わせてみたら?「竹取物語」に「エイリアン」を合わせてみたら?
そんな掛け算の思考実験を繰り返すことが、新しいキャラやシチュエーションを生み出すきっかけになるでしょう。

 2つ目は、現代のテクノロジーに着目したり、社会に溢れている不安などをすくいあげることで、新奇性を生む、というものです。
 たとえば、呪いのビデオテープを通じてやってくる怪異「貞子」は、ビデオテープがメディアとして一般的だった時代にこそ生まれ得たキャラクターでした。また、90年代には、世紀末ムードを反映した終末的ホラー作品も多数、発表されました。携帯電話の普及、オンラインゲームの流行、SNSの発達、災害による不安、さまざまな社会の変化の中で、時代の趨勢に敏感な作家は、「その時代でしか生まれ得ない恐怖」を創ってきたのです。
 2016年に生きるあなただからこそ、90年代や00年代の書き手には思いもよらなかった怪異や恐怖が描けるはずです。

 3つ目は、あなた自身の専門知識や趣味をうまくエンターテイメントに落とし込む、というものです。
 ミステリ界に先端医療の知識をもちこんだ作家、ライトノベルにミリタリー知識で挑んだ作家、ホラー小説界に生物科学知識を活かした作品でデビューした作家などなど、ジャンルに新風を吹かせ、ベストセラーを生んだ作家は数知れません。
 あなたが、職業や趣味や生まれ育った環境などから得たもので、普通の人はあまりもっていない知識の味付けが、「ホラー」というジャンルと出会ったとき、今までにない化学反応が起こるかもしれません。もちろん、ただの薀蓄披露で終わらせず、面白く読んでもらうための工夫も大事です。

 上記①、②を、応募者の中で、受賞への手がかりを掴みたいという方々には、ぜひ、ご参考にしていただければと思います。

 最後にもう1つだけ。

 ホラー作品に限らず、多くの物語は後半にクライマックス、見せ場が存在します。応募者は、そこをいかに面白くするか、盛り上げるかについて、全力を注ぐことでしょう。
 しかし、その一方で、渾身のクライマックスに『たどり着いてもらう』ことも重要だということを、忘れないで欲しいのです。
 現代では、マンガやゲーム、SNSなど、小説以外にも、人を夢中にさせるエンターテイメントが溢れています。「最後まで読めば面白い」という小説があったとしても、読者は、最初の十ページ程度を読んで、第1章を読んで、半分程度を読んで、そのどこかで「つまらない」と感じてしまったら、途中で読むのをやめ、他の楽しみに移ってしまうかもしれません。

 先を見届けたくなってしまうような魅力あるキャラクターを登場させる、物語中に何度も「山場」を作れるようなプロットを構築する、視点や時系列を工夫してストーリーを語る、事態を徐々にエスカレーションさせていく、何らかのタイムリミットを設定する、スタイリッシュな会話や描写で惹きつける、などなど、さまざまな手練手管で、「読み手を逃がさないよう、楽しませ続ける」ことを実現させてください。

 あなたの、全力の作品をお待ちしています!

「ジャンプホラー小説大賞」宣伝隊長を命ぜられた
ミニキャッパー周平が、闇雲にホラー作品を紹介していきます。

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