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第7回ジャンプホラー小説大賞結果発表!!

銀賞 賞金50万円
  • 『今週の死亡者を発表します』P.N.電気泳動
  • あらすじ田舎の高校に通う細見冬彦は、ある日「呪いの予告サイト」の噂を聞く。そのサイトには毎週呪いで死ぬ対象が掲載されるという。しかも、呪いの対象は「日本に住む」や「十五歳以上」など範囲で指定されるのだ。初めはただのいたずらだと思っていた冬彦だが、次第に呪いの指定範囲が自分に近づいてきて……!?
  • 講評呪いのスケールが大きくなるのではなく、逆に範囲が狭くなっていくというアイデアと、そこから抜け出そうとする主人公の行動がうまく展開できている。呪いの発動場面の描写力も高い。他方で黒幕が早い段階で予想でき、後半に主人公と対峙した際には、説明台詞中心の駆け足での決着になっているのは惜しい。

銅賞 賞金30万円
  • 『過去の小説』P.N.壁伸一
  • あらすじ市役所員の省吾は、学生時代に書いた未完の小説『蝿島事件』が、SNSを中心に若者の間でカルト的な人気を博していることを知る。小説のファンは作品に批判的な者を襲撃するなど危険な行動を取っており、警告にきた少女・絵理子は省吾にそれを諌めるよう求めるも、自称作者のMや熱狂的な信者Xも現れて…。
  • 講評昨今のSNS文化をうまく取り入れて「ただ昔に書いただけの小説」が、思いもよらぬ形で肥大化し、混乱を招いていく様がリアリティをもって描かれていた。しかし、省吾の考え方に一貫性がなかったり、ピンチに対しても感情を露わにしないなど、特に人物面の描写では作品への没入を阻害する要素が目立った。

特別賞 賞金10万円
  • 『蜘蛛の子』P.N.雨坂羊
  • あらすじ大学生・甲斐田寛は、故郷の村に帰省した際、幼馴染の北沢沙耶と再会する。沙耶は大きなお腹を抱え、両眼を包帯で覆われた姿で、家の奥に閉じ込められていた。沙耶は雇われた屋敷の主人と関係を持った挙句に殺害してしまったのだと噂され、村人たちから迫害されていた。寛は沙耶を助け出そうと試みるが…。
  • 講評ヒロインを含め、各登場人物の抱える強迫観念が絡み合って起きる惨劇は、あくまで現実に立脚しながらもイメージ豊かでおぞましく、リアルかつインパクトのある恐怖を生んでいた。ページオーバーの原稿を無理に圧縮した印象があり、改行や段落分けが極度に少なく読みにくい文章が散見されるのが残念だった。


次作に期待‼ 最終候補作
  • 『ゾンビVS.引きこもり』 P.N.春雨蛙
  • あらすじ周囲に笑われながらもゾンビの出現に備えていた高校生・黒沢は、突如発生したゾンビパンデミックに対し、対ゾンビ要塞と化した自宅に悠然と立て篭もり、活き活きとゾンビを始末しながら生の実感を得る日々を過ごしていた。しかしある日、担任教師とクラスメイトたちが避難してきたことでその生活は一変する。
  • 講評対ゾンビ戦略を過剰に練り上げていて、自宅への避難者たちを迷惑がる偏狭な引きこもり少年をコミカルに描きつつ、彼が教師や同級生に絆されていく成長物語としても優れていた。誰もがキャラが立っていてライトノベルとして合格点だが、ホラー賞としてはシーン単位でもいいのでもっと「怖さ」が欲しかった。


  • 『魔王の卵』 P.N.荒衛門
  • あらすじ七陽の屋敷に勤務するマリヤは、屋敷内で大扉とその前に設置された祭壇を見つける。マリヤは扉越しに、祭壇の女神の息子を名乗る声を聞く。ある日マリヤが聞かされることになったのは、幼い頃にカルト信者の両親によって生贄とされてから死者の思念が見えるようになった少年・ヨシヤの人生の物語だった…。
  • 講評短編連作形式の序盤は勧善懲悪&成仏系の共感しやすいエピソードで間口を広くしておき、徐々に闇の深い話が増え、怪異の規模も巨大になり大枠の物語に繋がっていく……という構成は、応募作の中でトップクラスだった。後半が詰め込み過ぎな点や、凝ろうとしている文章が粗く読みにくい点がネックになった。


  • 『犬の家』 P.N.泉いつか
  • あらすじ帰省した大学生・和秋とその妹・雪乃は、兄である和史が離婚して連絡を絶っていることを心配していた。和史宅へ様子を見に行った雪乃は行方不明になり、和秋と母は和史に事情を聞きに行くが、家はゴミ屋敷になっており、和史は正気を失っていた。時を同じくして和秋は、首の無い犬の幻を見るようになり…。
  • 講評惨殺された犬の幻影や、呪いによって理性を失った兄などを描写する、グロテスクで凄味のある文章に読みごたえがあったほか、妹があっという間に兄に殺される序盤のスピーディーな展開も目を引いた。家族の話でありどうしても小規模にまとまってしまうのと、ラストが駆け足になっているところがもったいない。


  • 『視えない俺の便利屋日記』 P.N.粒子
  • あらすじ便利屋勤務の二階と藤田は、依頼を受け中学校に訪れる。霊を視て祓える二階と、霊が全く見えず霊からの干渉もほぼ受けない藤田は心霊案件限定でコンビを組んでいる。学校内には無数の怪談が広まっており、二人の探索でも霊が大量に見つかる。生徒たちとの怪談話の最中に怪物が現れ、藤田はそれを祓うが…。
  • 講評文章は読みやすく、展開は二転三転して読者を飽きさせない。霊が嘘をつけない設定や名前を忘れる呪いなどギミックに富み、学校内に溢れる怪異の描き方にも独創性を感じられる。バディものでありながら主人公二人の凸凹感や関係性の美味しさに乏しく、どちらの台詞か分かりにくい箇所が散見されたのが残念。


編集部講評
  • ホラー賞宣伝隊長・ミニキャッパー周平
  • ●総評
     現代的な面白さのある新鮮な作品が評価された回でした。銀賞受賞作は、犠牲者が前もって告知される設定から都市伝説を連想させつつも、名前が直接予告されず手掛かりのみが示されるという独自の仕掛けで、死を回避し得るかどうかのゲーム的な興趣を生んでいます。銅賞受賞作は、ネットに発表した作品が予期せぬ反響を招く展開で、炎上が頻発する現代ならではの恐怖を描いています。一方で、今回は、小さく纏まってしまう作品も多く、応募作を広い読者に届けようという野心が薄いようにも見えました。また、題名の弱い作品が目立ちました。自作のコンセプトとどこが面白いのかを理解し、読み進めたくなるような「引き」を意識できれば、題名も魅力的になるはずです。


◆ジャンプホラー小説大賞受賞作家、活躍中!!
  • 第6回金賞受賞作『ヴァーチャル霊能者K』11月19日発売!
    作:西馬舜人
◆第2回受賞者が熱筆!『チェンソーマン バディ・ストーリーズ』11月4日発売!
  • 原作:藤本タツキ 小説:菱川さかく

    チェンソーマン バディ・ストーリーズ
◆歴代受賞者、多数登場!カバーは『約束のネバーランド』出水ぽすか!
  • 『5分で読める恐怖のラストの物語』絶賛発売中!
    ジャンプノベル編集部・編

    5分で読める恐怖のラストの物語
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