ジャンプ小説新人賞2021 最終結果発表

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ジャンプ小説新人賞2021 最終結果発表

テーマ部門　家族

銀賞　賞金30万円＋楯＋賞状 『未来でメルヘンが待っている』 PN　宮本かれん あらすじ性同一性障害を抱える高校生の武は、体の成長を止めるための治療を受けるべく女装して援助交際で稼ごうとするが失敗。母の千夏の薦めで、夏休みの間、離島に住む元父の隆のもとで過ごすことに。武はアンナと名乗って島で開催される鎮魂祭に参加するが…。正解も解決もない、性と家族をめぐる鮮やかな青春小説。講評性に悩む主人公の心情と、それに向き合う家族の対応が繊細丁寧かつリアルに描かれた作品。主人公と家族の問題が二重進行しながら、トラブルと予想外の喜びを同時に起こして緩急を利かせ、演出や目配りも見事。二つのことが同時に起きる、ということが主人公の性と家族のあり方と重なり、テーマ性を高めている。
銅賞　賞金10万円＋楯+賞状 『幽霊屋敷のお嬢さん』 PN　郁島青典 あらすじ新聞記者のエヴァンは取材で訪れた幽霊屋敷で地縛霊のエグランタイン一家と彼らに育てられた人間の少女アンナに出会う。初めは幽霊に育てられたというアンナに戸惑うエヴァンだったが、次第に彼女が家族と暮らす手助けがしたいと思うようになり…!?講評やや強引な部分はあるものの、予想のつかない物語の展開に最後まで引き込まれた。多い登場人物を魅力的に描き分けられている。他方で舞台を外国にした効果が薄く、作品が表面的になっている。なぜ外国でなければならないのかを考えぬいてほしい。

次回作に期待！最終候補作！

『空子と鉄平』 PN　石崎恒人講評文章は荒削りではあるが台詞が上手く、空子と鉄平の会話が面白い。他方で二人の行動原理が見えないところも散見されるので、もっと掘り下げてほしい。
『オータムのドテカボチャ』 PN　竜ノ湖太郎講評現実的な問題にメルヘンチックなキャラクターを効果的に組み合わせられている。だが、主人公たちの問題解決への取り組み方が弱く、できることはもっとあるように思われた。
『生と紙と』 PN　綿貫ちか講評祖母と「D」との日記上の対話自体は面白く、二人のキャラも良い。しかし、周りの人間との関わりやエピソードがなく、ほとんど台詞による説明になっているのが惜しい。

テーマ部門　弱点or欠点のあるキャラ

銅賞　賞金10万円＋楯+賞状 『イマジン・シューター』 PN　休達人あらすじ 重度の中二病だった天河勇輝は、高校進学を機に生まれ変わろうとしていた。黒歴史の品々を捨て去った勇輝は、双子の兄から送られてきた荷物に手を伸ばす。出てきた中身は、謎の銃。ここから元“イタい中二病”勇輝は、大事件に巻きこまれて…⁉講評中二病という黒歴史が武器になる発想は面白かった。キャラ同士の掛け合いや、独特のセリフ回しなど光る部分も多くあった。だが設定の突拍子の無さや、テーマを上手く物語に落とし込めたか、など物足りない面も。構成力を磨いて再挑戦してほしい。
銅賞　賞金10万円＋楯+賞状 『平川優介、マニウケル』 PN　月並きらあらすじ人に騙されやすく記憶障害も抱える平川優介は、催眠術師の夢咲カイラの元を訪れる。カイラによると優介は異常に催眠にかかりやすい体質であることが判明。しかも解術できない強力な催眠がかけられていた。そこへ催眠術師たちが乗り込んできて…講評催眠術にかけられた主人公を視点役に据えて、嘘と真実を操りながら真相を明かしていくアプローチが面白かった。キャラクターも魅力的。ディテールとリアリティにもっと注意を払えば、催眠的な演出や展開に読者をよりうまく引き込めたはずだ。

次作で金賞を！最終候補作！

『僕が顔を隠すわけ』 PN　雨水秀水 講評主人公がとてつもないイケメンという設定とその発展のさせ方が面白かったが、ヒロインに出会ってからの展開がご都合主義に見えてしまった。
『触れられない』 PN　淋代麻講評応援したくなる好感度の高い主人公である反面、ヒロインの魅力についてももっと書いてほしかった。主人公に弱点ができるきっかけをギャグにしてしまったのは残念。

編集部講評

総評　千葉編集長　今回もたくさんのご応募ありがとうございました！　
『テーマに沿った短編』という厳しい制約の中で、何を捨てて何を選んだのか。それらを重視し、選考しました。
設定をシンプルにして説明を省いたのか。会話を減らしてテンポを良くしたのか。ドラマチックだが装飾過多な表現をやめたのか。
担当編集がついて改善・修正できる事はいくつかありますが、直せないものの１つがこの『取捨選択のセンス』です。短編はもちろん長編でも、伝えたいことの芯を見失わないために、取捨選択をより意識的にしてみて下さい。
次回も皆さんの力作をお待ちしています！